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【新城マガジン】楽しみながら自然とつながりが生まれる新しい空間-千年共店

川崎市武蔵新城に2024年9月に誕生した「千年共店」。35年間社員寮として使われていた建物が、リノベーションを経て新しい価値を持つ場として生まれ変わりました。そのコンセプトは「共に“働く”を楽しもう」。3階にはシェアアトリエ、2階にはシェアサロン、1階にはシェア棚と地域へのDOORとしてのカフェが設けられています。地域住民やクリエイター、そして訪問者が混ざり合い、新しいつながりや価値を生み出す空間です。
今回は、千年共店の設計と運営を手がける廣瀬さんにお話を伺いました。


自己紹介をお願いします

千年共店の廣瀬です。私は25年以上にわたり建築の仕事に携わってきました。デザインの仕事は大好きでしたが、あるときから「場所の熟し方」に興味を持つようになり、知人の不動産企画やコンサルティングの仕事を手伝いながら、古い建物の再活用、その後の場所の作り方を考えるようになりました。

経済的にも成立させながら、次の時代に繋ぐこと。例えば、プロジェクトパートナーであるコカイキカクと共同運営している「シモノゲ共作所」「TORQUE WORKS」は、シェア型のアトリエ・オフィスですが、個々の作業場を集めることで不動産の収支バランスを安定させ、さらに個々の活動を応援できるコンテンツになっています。

時間を経て、互いに刺激を与え合うコミュニティが緩やかに形成され、良い空気感が醸されていると感じます。オーナー会社であるフジケン株式会社がこの建物の再活用を考えたときに、私の今までの取り組みを理解してくださり、任せてくださいました。それで千年共店は生まれたんです。

自然な形でつながりが生まれる場所-千年共店

千年共店のコンセプトは何でしょうか?

千年共店のコンセプトは「共に”働く”を楽しもう」です。この建物は3階建てで、それぞれの階が異なる役割を持っています。3階はシェアアトリエ、2階はシェアサロン、1階は小さな商いができるシェア棚と、その活動を伝えるDOORとしてのカフェです。個々が独立しながらも緩やかにつながる場所になっています。ここで集まり、作り、働くことを楽しみながら、自然な形でつながりが生まれることを目指しています。

1階:「誰かさんのこだわり」を届けるカフェ&シェア棚

1階のテーマは何ですか?

千年共店1階のテーマは「誰かさんのこだわり」です。これは、特定の地域やジャンルに縛られることなく、「良いもの」を厳選し、それを訪れる人々に届けるという考え方です。

商品を手がけた作り手や生産者たちの情熱やストーリーが詰まった商品を集めて、カフェという身近な場でその価値を伝えています。訪れた人々が「こんな素敵なものがあるんだ」と感じられるような体験を提供することが、1階カフェになります。

カフェのテーマが生まれたきっかけについて

私自身が以前から行っていたマルシェの企画や開催が大きなヒントになっています。マルシェでは、いろいろな生産者や店舗の方々と関わり、その商品を見て「こんなものがあるんだ」「これは面白い」という新しい発見がありました。私自身が感じたその驚きや楽しさを、もっと多くの人に共有したいと思ったんです。

その過程で感じたのは、「良いもの」は地域に限らず、全国各地に存在するということです。特定の地域や分野に縛られず、「これだ」と思う商品やストーリーを厳選して提供することで、訪れる人々に新たな発見を楽しんでもらいたいという思いがありました。

そして、カフェでは、ただ商品を提供するだけの場所ではありません。「誰かさんのこだわり」というテーマを通じて、人と人、人と物が自然につながる場でありたいと思っています。訪れるたびに新しい発見があるような空間を目指し、常に良いものを選び続けることが、このテーマの本質だと考えています。

“こだわり”のあるカフェメニューはありますか?

地元の大行列ができるパン屋さんの商品に、おはぎ専門店から仕入れた特別な小豆を組み合わせた「あんバタートースト」は、その象徴的な例だと思います。また、訪れる人が気軽に立ち寄れる空間となるように、提携している店舗の商品であれば1ドリンク注文でカフェスペースへ持ち込んで楽しむことができる仕組みを取り入れています。

物販の販売の“こだわり”について

物販販売エリアは2つの種類に分かれています。1つはシェア棚として、1区画をレンタルして自分のこだわりの商品を展示・販売できるスペースと、もう1つは私がセレクトした商品を並べる平机のスペースがあります。

特に平机のスペースの商品のセレクトにはとても気を遣っています。単に販売されるだけでなく、作り手のストーリーや背景が伝わるよう工夫されています。訪れるたびに異なるラインナップが並ぶことで、新しい発見を提供できるように定期的に入れかを行っています。
また、シェア棚の作り手にとっては自身の作品を広める発表の場となっています。

2階・3階:創作と専門性を支えるシェア店舗

シェアアトリエとシェアサロンの魅力は何ですか?

3階にはシェアアトリエがあります。クリエイターが創作活動に集中できる環境を提供しています。最大の特徴は、音や素材の使用が自由であること。金属加工やヤスリ作業、絵の具の使用など、一般的な賃貸スペースでは難しい作業がここでは可能です。また、全部屋に窓があるので、自然光を使って作業も行えるようになっています。

2階にはシェアサロンがあります。リラクゼーションやネイルサロンなど、専門性の高い事業を展開できるスペースです。静かで落ち着いた完全個室が提供され、光熱費も込みで利用できるため、事業を始める方々が安心して利用できる環境となっています。

シェア店舗を作った理由は何ですか?

この建物は、もともと社員寮として広い空間と余白を持つ建物でした。この特性を活かし、シェア店舗として活用することで、多様な人々が気軽に利用できる場所に生まれ変わると思ったからです。さらに、「シモノゲ共作所」での経験から、利用者同士が作業を見たり話したりする中で自然とコミュニティが形成される価値を実感し、この仕組みを千年共店にも取り入れたら、共に”働く”を楽しめる建物になるのではないかと思ったからです。

千年共店が目指す未来

廣瀬さんが考える理想のつながりとは?

千年共店が目指すのは、みんなのやりたいことを自由にできる場所であり、楽しみながら自然とつながりが生まれる場所です。無理に『一緒にやりましょう』とつなげるのでもなく、好きな人たちだけで閉じた関係を作るのでもなく、それぞれがやりたいことを追求しながら、結果的にゆるやかにつながる形が理想だと思っています。
たとえば、1階のカフェでは商品をきっかけに訪問者同士の会話が生まれたり、2階・3階では利用者が作業の合間に互いの活動を共有してくれたら良いなと思います。このような自然なつながりが、千年共店全体の魅力を引き立ててくれると思います。

今後の展望について教えてください

まだ、この建物をオープンさせて数ヶ月ですが、私は、この千年共店が一人では生み出せない価値や色合いを持つ場所になると信じています。2階・3階のシェアスペースが埋まっていくことで、様々なプロフェッショナルが集まり、ここでしか出せない色が生まれてくると思っています。

プロフェッショナルたちが互いに様々な距離感を保ちながらも自然とつながる空間。そして、働くことを楽しむ。また、1階のカフェスペースでは地域の人たちが訪れてくれる。

この場所が、訪れる人にとって楽しみながら自然とつながりが生まれる場所になれるようにしていきたいです。

【店舗情報】千年共店について

【営業時間】 
・営業時間 10:00〜18:00
・定休日 不定休
【住所】〒213-0021 神奈川県川崎市高津区千年新町26-9
【詳しくはこちら】ホームページ

カメラマン:Sugiyama Takanobu
ライター:Sugiyama Takanobu
X:@Sugi _048

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