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準備不足と不注意-皆野アルプスを行く破風山ハイキング⑩

 落葉樹と杉のコラボ風景から道を挟み左に落葉樹、右に杉とグループ分けされた景色に変化。のんはこの景色が好きだ。

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なんともいえない心の揺さぶりを感じる。

右脳と左脳で違うものを見ているような、共存の中にありながらもグループごとの共同体を目にしたような。相反を視覚から取り入れたのんは整理がきかない思いに、言葉を失くすも特別な世界にいる優越感を覚える。

傾斜の強い坂道が続き息が上がり始める。前に進むことに気を取られ、つい周辺の景色を見る余裕を忘れ、森に住まう魅力的な小さな個性たちを見逃しがちになってしまうこともしばしば。

そういえばたぁの声を久しく聞いていないなぁ。

後ろを振り返るも姿が見えず、立ち止まる。先日、森での楽しみを増やそうと植物とキノコの名前を調べられるアプリをダウンロードしてみた。暇つぶしに使ってみようと開くも、ネットが使えない森の中ではどうやら力を発揮できないようだ。軽く落胆。ならば現在地でも確認してみようかな?ハイキング前にスタートさせたマップアプリを開いてみる。

あれっ?おかしいな。

コースはちゃんと表示されているのに現在地がわからない。するとたぁの姿が見えてきた。

「早く歩いて見えない場所に行っちゃだめ。熊スプレー持ってるの僕だけだよ。」

「あっ、ごめん。ねぇ、私のナビ動いていない。」

たぁは私のアプリを確認した後、自分のアプリを開いてみる。二人とも利用しているのはMaps3D PRO。するとたぁのアプリはちゃんと現在地を示している。

「WIFIが繋がる場所でアプリ起動した?」

「してない。しなきゃダメなの?」

このアプリ、WIFIなしで動くはずなんだけど。

「だめだよ。近郊で一度起動しないと。」

聞けばたぁは駅に到着後、行っていたらしい。知らなかったのんは再びガックシ。初めての利用だったのに。ハイキング詳細情報はたぁのアプリ記録に頼るしかないな。たぁ隊長ありがとうございます。

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昨日の雨の影響かコース上の岩の間から流れるチョロチョロ水。よく転ぶのんの警戒レベルが上がる。

“気を付けて私、なんといっても急な斜面の細い道。滑ったら見事に落下。こんな場所で膝でも打って身動きできなくなったらたまったもんじゃないよ。”

そんなこと起きるはずないと人は思うかもしれないが、これがネガティブにして前進する者の宿命であり大切な頭の整理なのだ。決して難しいと思われる場所ではないが念には念をで慎重に渡り切る。

すると・・・

「うわぁ。」

響いたのは隊長の声だ。のんが気を付けて渡った場所で滑ったご様子。

「気を付けてよ。そんな声が聞こえると焦るんだけど。」

「気を付けているよ。」

「でも、僕なら渡れるって軽く思ったでしょ。」

どうやらのんの言葉はまとを得ていたようで返事はない。

よく転ぶのんに対し隊長の尻もち姿を見るのは稀。万が一たぁが滑ったらと想像し、背筋をぞっと凍らせる。豊かな想像力は世界を広げ、広げすぎて闇へも簡単に落としてしまう。


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