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家族と一緒にネパール旅行-13

ランチを食べた後はジープで国立公園保護区サファリへ。
今まではミーア家族とアニルさん夫婦だけで行動していましたが、ジープはある程度の大きさがあるせいか、他に4人ほどと一緒に乗り込み、保護区へと入ります。

助手席に一人、そしてジープの後ろにベンチが設置されていてみんなで腰掛けるのですが、なぜだか全員が座れない。グループの中で一番小柄な私はできるだけ場所を作ろうと体をねじらせて荷物の上に半分乗ってスペースを作ろうと必死です。

「そんなに寄らなくていいよ」

「だってアニルさん立っているよ」

「彼らが二人で一人分の金額で乗っているから、ジープが狭いんだよ」

たぁに曰く、彼らは乗り込む前にガイドと話をしていてその話が漏れ聞こえしたようです。

国の財政に違いがあるし、生活支出も安い分、収入も大きく異なる中、アニルさん家族が裕福な家庭だとしても同じ金額を出すのは大変だったのかもしれません。もしかしたらそれが原因でナガルコットの時は帰ったとも考えられるし。

まぁ、私が詰めることでぎゅうぎゅう詰めでもみんなが座れるなら、そのほうが気が楽です。


サファリルートはこんな感じ。

いかにもテレビなどで放映される国立公園のイメージそのもの。

「動物が逃げないように静かにしてね」

カヌーの時と同じことを言われていました。
アニルさんは私たちに「うるさい」とばかり注意されたせいか、他の人たちも一緒に乗車していたせいか、静かにしていましたが、他のグループと一緒になれたことにウキウキしたママはずっとしゃべりっぱなし。

それじゃ、アニルさんのこと何も言えないでしょ。


公園内はいくつかの区域に分かれていて、入り口ごとに銃を構えた兵士がいます。この公園はネパールとインドにまたがっていますし、密猟を防ぐという意味合いを兼ねてのことだと思いますが、やっぱりリアル銃を見ると緊張が走ります。
ちなみに区域入口周辺は写真撮影不可でもありました。

決まったサファリコースが設けられているのでしょう。車は停車し、私たちは降ろされ、木でできた橋を渡ります。その先にワニ繁殖センターがありました。

ワニも密猟他、その美しい革を求めて乱獲され数が多く減ってしまったので今では保護して育て、大きくなったら公園内に放ち、野生復帰させるそうです。

手のひらサイズのベイビーサイズから大サイズまで区画ごとに分けられてたくさんのかわいいからワイルドな表情まで楽しめます。

天敵のいない施設内で彼らはゆったりのんびり優雅に暮らしています。食物連鎖では上位にいるワニですが、自然界へと放たれれば、平和の意味がこことは異なることでしょう。


ジープに乗り込むと、お母さんは言いました。

「今度は私が助手席に座るわ」

それまで助手席に座っていたのは、お母さんがひっきりなしに話していた男性のガールフレンドでした。助手席と荷台のベンチでは話をすることができないので、彼女は正面に広がる優雅な大自然を見られたものの、みんなの会話に参加するチャンスはありませんでした。

「ママはアニルさんのこと言えないよ」

つい我慢していた言葉がママの耳へと届き、彼女なりに反省した結果だったのでしょう。助手席に座っていた彼女は嬉しそうに、ママはちょっと申し訳なさそうに席を交換しました。

運転手さんは話をすることはありません。静かな車内、朝からずっと行動していたこともあり、ベンチから見たママの体は斜めになり、ぐっすりと休憩していることがわかりました。


「ジープサファリでは鳥や猿の他にサイやトラ、ヒョウなどにも会えるチャンスがあるよ」

説明の時には様々な名前が出てきましたが、実際に見られたのは猿と鳥だけ。もっと奥まで行けばそのチャンスは高くなるようですが、事前の期待が高かったせいで若干落胆したのは私だけではありません。


気が付けば日は暮れはじめ、草木にがオレンジ色に染まり始めています。

「動物、あんまり見られなかったね」

「あそこに鶏がいるよ」

象サファリの時にやっと見られた野生動物が鶏で、とりあえず写真に収めたたぁを「鶏撮ってどうするの?」と言って、笑い転げた私。だからそれに合わせた冗談を彼が言ったのだと思いました。

「いないでしょ」

「いや、いるよ」

「あそこだよ」

「ほら、見て」

私たちの話を聞いていたほかのメンバーやガイドが指をさして教えます。

「えっ、本当なの?」

「うん」

恥ずかしいわ。


入口へと戻ってくるとサファリアドベンチャーをしていたほかのグループと一緒になりました
聞こえてきた話によると彼らが見られたのも猿と鳥だけだったようです。

「どんな動物見られた?私たちはサイがみられたのよ」

昼寝から起きてすっかり元気になったママは、ちょっと不機嫌そうな顔をした男性に声をかけました。

「そうかい。それなら僕たちはヒョウやトラを見たよ」

それだけ言って、彼はさらに顔をしかめて去っていきました。

多分、彼はそれらを見られていないでしょう。ただ余計な自慢を聞かされてそれを真実だと捉えれずに、さらに気持ちをさらに損ねてしまったのだと思うと、傍から見ていてちょっとかわいそうだと思いました。

ラッキーはあえて口にせずに、自分のなかで噛み締めるのが一番です。



※2010年11月18-12月4日にたぁ両親とともに訪れたネパール旅行記です。



これまでのお話



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