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華厳の滝登山口から出発-皆野アルプスを行く破風山ハイキング⑧

駐車場には2種類のトイレ。コンクリ造りと観光トイレと記された木造トイレ。たぁは前者、のんは後者へ。コンクリトイレはぼっとんで観光トイレは下にずっと水が流れている。お隣さん同士なのにこうも違うものなのね。

たぁはスティックを取り出し、二人ともハイキングマップアプリMAPS3D PROをスタートさせる。コースは事前に設定済み。このアプリがあるおかげで山間での安心感が数倍違う。特に初めてのコースにおいてはお勧めのアプリケーションである。

川沿いの車道をしばし下ると森へと繋がる橋があり、向かいの電柱には“華厳の滝登山口、皆野アルプスコース如金峰コース、破風山→”とある。

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よしっここで間違いない、10時53分、ハイキング開始。

橋と言えどもちょいと細工した板をそのまま倒したようなもの。安全だとわかっていても一人サイズで狭い板に身を任せることにのんは軽く動揺する。なんせジャングルジムの上からの下を見ただけで心臓バクバクの高所恐怖症だから。瞑想を通じ、治そうと思えば治せる恐怖症であるもののなぜだか治そうという気にならない。

“これくらいは持っていてもいいかな”

そんな思いで人生の連れ合いとして放っておいている。動揺を鎮めるために先の森へと気を集中させ、橋の中央まで来た。すると欲張り癖がつい顔を出し、左右を見ては写真をパチリ。川の上に立つ人が見られる特権景色を楽しむ。恐怖症から放たれるゾクゾク感が戻ってきたところでいそいそとゴールを目指す。のんがちゃんと向こう岸についたのを確認し、たぁもゆっくり橋を渡る。

入り口には登山者数調査用の数取器が置いてある。のんは自分の分を押し、ちょっとした特別感を味わう。ついついたぁの分も押したくなるけど楽しみはちゃんと分け合いっこ。

「たぁもこれ押しな。」

「うん。」

数取器の裏にある看板をみれば熊注意のマーク。

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「また鈴買うの忘れた。」

熊注意看板を見るたびに、次こそは鈴を購入と思っている。しかし一般に販売している熊ベルではなく、のんは山の守り神様から譲っていただける優しく響き渡る音の鈴を探している。以前、中禅寺湖、日光二荒山神社 中宮祠に訪れた際に購入をと検討していたのに紅葉の美しさに魅せられすっかり忘れてしまい、それ以降気に入る鈴の音に出会えず今日に至る。

「大丈夫。僕のスプレーがあるから。でもとりあえず。」

たぁの胸脇には購入したばかりの熊スプレーが装着され、ちょっぴり自慢気だ。彼は財布から小銭を取り出し、リュックのポーチに入れてみる。のんも真似してズボンポケットに小銭は入れてみたものの、共にうまいこと音は鳴らず残念な結果。

 道路から森を見た際、小さな建物があることに気づいていた。案内図には昭和30年代後半まで利用されていた石灰焼壺跡とある。中に入れず外から眺めるだけだがものしっかりと保存され私たちにこの土地の知識を伝えてくれる。秩父八景の看板もそうだが、ちょっとした情報が現在と過去を結び付けてくれている。


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