目指して超えろっ、破風山-皆野アルプスを行く破風山ハイキング⑯
細い尾根道に軽い恐怖を味わいながらも自然に囲まれた幸せに浸っていた。するとポジティブはポジティブを呼び、道が徐々に太く歩きやすい道へと変わる。さらに緑ばかりの森の中に点々と白い花が現れる。
「わぁ。まるで側道でランナーを応援している人たちやぁ。」
「きれいだね。」
多分、たぁは彦摩呂さんをご存じないのであろう、軽く流される。
すると人の声が聞こえてきた。久々の人に興味と警戒心が入り混じる。13時8分、札立峠に到着。ベンチに座っていた二名のおじさまたちと目が合い、ご挨拶。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
挨拶の後、一人がすぐにのんに近寄ってきた。シャイに見えたおじさま方だがよく話す、よく話す。彼らも久々の相方以外の人に軽くテンションが上がっているのだろう。
聞けば秩父札所33番から訪れ、既に20㎞は歩いたとのこと。「きつい、きつい」と言いながら笑顔を浮かべている。しかし二人は自分たちが来た道を思い、その言葉に嘘はないはずと解釈する。
熊ベルの音が近づいてきて、老夫婦カップルが止まることなく挨拶をして通り過ぎていく。ここはちょっとした交流場所だね。
「どこに向かっているの?」
「破風山目指しています。」
「それじゃぁ後少しだよ。」
数分の会話、このくらいがちょうどよい。人の気に飲まれるのは都会だけで十分だ。別れのあいさつをして先へと進むことにしよう。
札立峠で如金峰コースは終了し、関東ふれあいの道へと名が変わる。
看板には破風山まで500mとある。平地の500mと言えばあと少しだが、山での500mはそう近くない。もう500m来たかな?と思っても標識で確認するとまだ200mしか歩いていないことを知り、愕然とすることは度々。
今までの険しさ続きの道とは異なり、上りではあるものの凹凸ない道は歩きやすく白いお花もたくさん咲き誇り元気を与えてくれる。1つの大きなに根から6本ほどの太めの幹へと分かれ成長を伸ばしている木がある。なんて団結力なのかしら。太くて立派な木とは違う力強さがそこにはある。
杉と落葉樹のマッチングトレイルとなり傾斜も激しくなった。登りの中に下りもあって徐々に標高を上げていく。
「上るなら上り続けてちょーだいよ。」
昔はよくごねいていたのん。
「山にいるのに不思議なこという」
たぁに何度もたしなめられ、最近は口にすることは減ったものの、思いはそう簡単に消えない。文句を抱いてはたまに口から漏らしつつも休むことなく進むのがのんスタイル。ゴールした時の爽快感と達成感を目指して進むのみ。
道は狭くなり木の根が入り混じる。木の根は足を取られる要因にもなるが、ストッパーの役目を果たし前進を補助してくれる。傾斜はきつくなり小石散らばる滑りやすい道。
木陰から青空が見え始め、13時24分、標高626.5m破風山到着。山頂の祠にご挨拶をし、秩父の山と町の景色を眺める。
「ふぅ、やっと来たね。気持ちがいい。」
「うん、天気も良くて良かった。」
ここでコースの半分ほど来たことになる。13時半近くなりお腹もすいた。二人とも破風山でのランチをと思い歩き続けたけど、ベンチもない狭い山頂は昼食場には不向き。のんはマップを広げ、今後のコースを確認する。
「先に休憩舎があるみたい。そこでランチにする?」
「うーんっ、わかった。」
最終目標にたどり着くまでにはまずはポイントごとに小さな目標を作るのが一番だ。