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家族と一緒にネパール旅行-04

観光客がごったがえすタメル地区にはたくさんのお店が並び、人込みをかき分けながら進んでいくと目的のカレー店がありました。

あぁ、なんだか周りのお店とは違う。

入り口からしてお洒落で、いかにも外国人向け。

私は「郷に入っては郷に従え」主義で、レストランも地元の人が行くような道に面して、プラスチックのテーブルと椅子が並んでいるような店が好き。
そういうお店でも地元民と外国人用とではメニューが異なり、支払うお金にも差が生まれますが、”いかにも“系のお店はなんだかソーシャルレベルを(無理やり)上げられているような落ち着かない気持ちにされた上に、地元民が絶対寄り付かない(現地では)は高額な金額を請求されます。

だけど今回は私とたぁの二人旅ではないし、初日のお祝いの夜でもあるから顔に思いが表れて、若干の小言を言ったとしても、今更、お店を移動すると文句を垂れれば、全体の雰囲気が悪くなることを理解して、中へと入ります。


店内は色とりどりの布で装飾されちょっぴりアラビアンチック、半個室の席にはやはり外国人の皆様方だけ。混みあっていたにも関わらず、幸い4人席に座ることができました。

カレー好きのたぁは本場のネパールカレーが食べられると上機嫌。そして両親と一緒のせいか、ちょっと子供に戻ったような無邪気な顔をしてメニューを広げます。

「チキンマサラカレー」

メニューを見る必要がなかったんじゃない?

多分、その品があるかどうか確認したかったんだろうな。いつもと同じメニューを選択。
私は(確か)サグパニール、ほうれん草とチーズのカレー。両親も(もう忘れてしまいましたが)一品ずつカレーを選びナンを注文。

パン食に慣れていない私は、カレーをナンと一緒に食べるとみるみるお腹で膨らんでしまい、1/3程度しか食べていないのにお腹いっぱいになるという悲しい性。

「食べるの大好き」だからそれを避けるために今日もライスを選択です。


カレーを待っている間にたぁ両親が笑顔でなんだかソワソワ。お母さんか小突くお父さんのポケットから二つのボックスが出てきました。

えっ、プレゼントですかっ!!

こういう時、気が利かずに何も持っていない自分が嫌になる・・・・・・。

互いに渡された箱を開けてみるとなんと中央に色鮮やかなオパールが装飾された指輪。
ニュージーランドはオーストラリアのお隣。オーストラリアの鉱物として有名なのはオパール。
以前、オーストラリアの鉱物フェアに一緒に行った後も彼らが何度か似たようなフェアに足を運んでいたのは知っていました。そこで見つけた素敵な石を使ってお父さんが作ってくれたんです。

その優しさと配慮に心がいっぱい。

まずはたぁが指にはめます。

おっ、ジャストサイズ。

だけど彼は苦笑い。

「指にものをはめるのが苦手」

あららっ、本音が口から洩れちゃった。

実は私も一緒。結婚指は超シンプルなものを選び、それでも慣れるまで互いに時間がかかりました。

苦笑いをしつつも嬉しそうな顔をしているたぁを見て、お父さんは幸せに包まれた柔らかい表情をしています。


次は私の番。青をベースとした石の中にキラキラと光る緑が色めく指輪をはめます。

あれっ、サイズがでかい。

それもめっちゃでかい。

とりあえず中指にはめてみるけどガバガバ。

それを見た瞬間、お父さんはお母さんへと顔を向け、彼女は何事もないような顔をしています。

「あらっ、のんの指のサイズと私と指のサイズは同じだと思ったのに」

へっ?

それ本気ですか。

ママはニュージーランドでいえば小柄ながらも一般的な体系といえるけど、日本に来たらチャビー(小太り)サイズ。日本では一般サイズの私はニュージーランドでは子供サイズの下着がぴったり。

どうして、そう思ったんだろうか。

だけどこれたぁママにはよくあること。
自分にとって都合のよいように事実を湾曲してしまう。

お父さんは文句を腹へと押し込もうとしているように顔をしかめたまま。
このままでは雰囲気が悪くなると親指にはめてみると、スカスカながらも「大丈夫!」とアピールするとママはしらっと「それでよし」とし、パパは私の配慮を呑んでくれ、ちょっと笑顔を見せてくれました。


そう待つことなく届けられたカレーは見るからにおいしそう。

「いただきまーす」

お口へと運ぶ。

あれっ?

もう一度運ぶ。

おいしくないわけじゃない。

おいしいか、まずいか尋ねられたらおいしい部類。

だけど味に深みがない。

日本で食べるネパールカレーのほうがおいしいんですけど。

「でもおいしいよね」

そう言って、バクバク食べるたぁ。

両親たちもおいしそうにいただくので、心の中で「これが本場の味なのかな」と首を傾げながら、私も食べ続けます。


私の隣でうまそうにカレーをほおばるたぁですが、指輪を気にしてむずがゆそうな動きを止めません。

「お父さんに失礼だから止めな」

「うん」

だけど数分後にはまた動いてしまう。

最初は我慢させていたけど、その動きはあまりにも不愉快で。

「もう、そんなに嫌なら外せばいいじゃん」

「いい?」

たぁはお父さんに尋ねます。

「いいよ」

子供のことをよく知っているお父さんは静かに了解。
指輪を外したたぁはなんとも爽快な顔をします。

折角手作りしてくれた指輪、見事に失敗じゃん。

なんだかお父さんに悪い。

心に若干の痛みを感じながら、そう思うのが日本人の気苦労なのかな。だけど相手を思う気持ちを持てることって私は素晴らしいと思う。


なんだかんだですべての食事を平らげてお会計。

「ここは私たちが出します」

プレゼントをもらったお返しをさせてください。支払額は5500円ほどで、日本とそう変わらない。

ネパールの物価って日本の半分以下なのに。

日本のカレーと比べると劣るのに。

嬉しくない思いに包まれながら、「いつかはローカル店にっ!」と強く思うのでした。



※2010年11月18-12月4日にたぁ両親とともに訪れたネパール旅行記です。


これまでのお話



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