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家族と一緒にネパール旅行-03

お店が立ち並ぶ細い道にはヨーロッパ系の顔立ちをした人がぶらぶらと歩く中、車はゆっくりと進み、落ち着いた雰囲気の画廊の前で止まりました。

「着いたよ」

だけど周りはお店ばかりで、ホテルっぽい建物は見つかりません。車を降りると女性の声が建物の上から聞こえてきます。
見上げるとたぁのママとパパが手を振ってお出迎え。

うわぁーい、会えたっ!

2人の笑顔で心は弾みます。

聞けば画廊の隣の薄暗い入り口がホテルエントランスとのこと。中に入り、チェックインを済ませると部屋は上階だと告げられました。残念ながらここにはエスカレーターはなく、スーツケースを持ちながら細い階段を上っていくほかありません。

ちょっと気を落としていると、近くにいた男性が荷物に手をかけました。

うんっ、またか!?

ここはホテル内でスタッフたちも何も言わないので問題はないとは思いますが、人は失敗から学ぶもの。

「お金はかかる?」

「いらないよ」

ホっ。それではお願いします。


(確か)3階の部屋へと入るとシンプルデザインの部屋にはある程度の広さがあるものの、カビっぽい匂いが鼻につきます。

まずはママとパパに会わないと。
彼らの部屋に案内してもらうともう一つ上の部屋でした。

ハグをして再会を祝います。

その次にママが発した言葉は意外なものでした。

「昨日、道で売っているみかんを買ったら10ドルくらいしたの。だけどその後、地元の人に聞いたら、半額以下で買っていたのよ」

うぉー、会ってすぐに文句とはママ節だわぁ。

まるで顔の目の前から「強」に設定された扇風機の風を直接当てられているような言葉の嵐。頷くタイミングも逃して、息を吸うだけで精一杯です。
聞けば、英語を理解してくれる人がおらずたった一日でもストレスになったらくして。いつものととばかり、パパは笑顔でこちらを眺め、たぁと私はどうしていいものかと目を泳がすほかありません。

っていうか、一袋のみかんに10ドルも普通出さないでしょ。

さらに階段の上り下りが気に入らないようで部屋を替えてもらいたいとのことだったので、受付でそのことを伝えると二階に移動してもらえました。


「かび臭いね」

「そうなのよ」

とりあえずここに滞在するのは一泊だけ。その後、ネパール国内を旅行して、カトマンズ観光をする時に数日利用する予定でしたが、別の場所に替えた方がよさです。
シャワールームだけながらまだしも、ずっとこの匂いを嗅いでいると自分にまでカビが繁殖しそうな気になってしまいます。


部屋から中庭を見ているたぁ。

「あっ」

「何?」

「あそこみて」

「あっ!!!」


写真、写真。

すばしっこい動きから、なかなかいい写真が撮れずにいましたが、最後にすごい近くまでやってきて迫力のあるの一枚をゲットです。

お猿さーんっ。

ネパール首都のカトマンズ、それも賑やかなこの場所でこんな風に出会えるなんて。怖いけど、嬉しい。


盗難のことを思えば、貴重品は部屋にそのまま置いておくと、持ち歩くも嫌です。その点、このホテルはしっかりとしていて、セキュリティボックスは受付から遠く離れた地下にあります。ホテル側で一つ、利用者側で一つの鍵を保管し、二つの鍵がないと開けられないシステム。安心感大で、パスポートやお金などを預かってもらいました。


町を散策しようと外に出てみると、目の前にみかん売りがいます。見つけた瞬間、ママは近づき、文句を言うものの、彼からしてみればいつものことなのかもしれません。

あなたは誰?

知らんけど。

そんな対応で結果、お金が戻ってこず。

ネパールに来て、お金問題でストレスを抱えたのはわたしとたぁだけじゃ、なかったのね。ここは引き締めていきましょう。


街中のレートのよさそうなお店でお金を両替してから、近くのカフェに入り屋上スペースでビールを注文します。

かんぱーいっ!

お酒の力を借りて、ほんのりと緊張が解けていきます。
リラックスしてやっとここで互いの近況を伝える時間となりました。

たぁパパは物づくりが得意です。家で壊れたものを直すのは当たり前。だって小型飛行機まで作っていますからね。時間があればガレージで創作作業に明け暮れ、たまに友人がやって来てはいろいろと語り合っています。

ママも手先が器用でパッチワークが趣味。もともと洋服のリメーク店をやっていたのでプロ級の腕前です。週に何度かパッチワーククラブに参加して、しゃべくりまくりタイム。

ニュージーランド人は話好きが本当に多いです。

「そろそろ夕食に行こう。何食べたい?」

「もちろん、カレー」

たぁの一言でグーグル検索から見つけた評価が高めのお店へと移動することに。


私たちの旅行についてきてくれたお礼にここは私たちにご馳走させてください。

少しだけどお釣りがくるはずの金額を渡したにも関わらず、一向にそれがやってきません。
もうお金問題はこりごりと思ったばかり。
店員さんを見つけて、お釣りについて尋ねるとボロボロのお札が戻ってきました。

どんな形であれ、使えるお金に変わりない。

二本の指を私の目に当て、それを彼へと向ける。

ちゃんと見ているからね。

そうアピールすると家族たちが笑ってくれました。


後で気づいたのですがお釣りは数円ほどの額でした。あえて言うほどのことでもなかったかなと逆に自分のやましさを思ってみたりして。


※2010年11月18-12月4日にたぁ両親とともに訪れたネパール旅行記です。



これまでのお話



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