公的年金は積立ではない
昨日、約60年にわたり公的年金制度の「シンボル」ともなっていた年金手帳がなくなるというニュースがありましたね。青とオレンジの手帳は、これはこれで、人生の節目にしかお目にかからない貴重な恋人?のようであったと思うのですが。保険料の納付記録や加入資格管理において電子データ化が進んだというのだ主な理由で、役割を終えたということでしょう。
こうしたノスタルジックなものがなくなるのは、それはそれでさみしい部分もありますが、新時代を切り開くというのはこういう事なのでしょう。
で、改めて思うことは「公的年金というのは積立じゃないです」と、お客様に伝えていく必要があると思う。FPには保険にいらない、興味ないというお客様にも公的年金の制度・仕組みを伝えていく責務があると思う。
年金の話を解説すると、制度自体が難解になっていることもあり、どうしても難しい話が多くなりがちですが、以下は私が年金の仕組みを伝えるときの「スクリプト」みたいな感じでお話ししてみます。なので、多少(言葉足らずで)語弊があるかもしれませんが、これくらい簡単に話すということです。
公的年金制度というとは、そもそも積立なんかじゃないわけです。だから払わなくていいという話じゃなくて、「払ってくれると障害時と死亡時の保障がある保険」のようなもので、将来65歳くらいになると払ったものよりかは確実に減って戻ってくるという保険みたいなイメージです。
年金制度は難しい言葉で、賦課(ふか)方式というのですが、年金制度が始まった当初って「積立方式」だったのです。その後、「修正積立方式」という形を経て、今の「賦課方式」になっているのですが、私たちの払っている保険料のうち全額が今のご高齢の方々に支払われているのです。
みんなで支払っている全額です(笑)。なんで積立方式みたいに勘違いされることがあるかというと、年金には「積立金」というのがあって、これが実は積立方式のときの「残り香」みたいなので、ここが150兆くらいあって運用している構図です。
でも、ザックリですが、私たちの支払っている保険料が35兆で、いまのご高齢者に給付している年金が54兆なんで、これでいくと、この積立金からすごい金額を取り崩すことになると年金制度なんてすぐ破綻するのです。で、どうするか?というと、税金を投入しているのですよね。
この税金って国民年金のうち半分も入っています(国庫負担割合)。国民年金は今の制度で6.4万円/月で78万円くらいで、この半分は税金が投入されているわけですから3万円くらいは税金で、この部分は私たちの所得税などで賄われている。ということは保険料でも高齢者を支え、さらに税金でも支えるという「二重支えの構図」なんですね。
こんな感じでしょうか。年金は深い理解とアウトプットは簡単に伝えることが大事ですね。ちょっと語弊がある部分もありますが、正確に伝えようとしすぎると「難しくなる」のです。これは制度がツギハギだからしょうがない部分もあります。年金の制度改正において平成16年(2004年)改正というのは覚えておきたいですね。なぜなら、ここで謳われたものこそ、「100年安心」という名言?で、この言葉が意味したものこそ「マクロ経済スライド」なのです。
このマクロ経済スライドというのはよくできた仕組みです。以下で解説しています。
そもそも年金制度の改革って、その前までは5年に一度やっていきましょうという話だったわけです。でもいちいち5年ごとに物価水準とか、賃金水準とかを見て、年金制度の計算式を見直していっていたら、(お役所の)官僚たちも大変なの。だから、もう自動的に変更するようにしてしまおう!と頑張って作られた制度なのですが、物価や賃金があがっても年金はそれに応じて上がらない仕組みで、さらにマイナス分はキャリーオーバーされるから、どんどん実質目減りすることになるのです。
私が上段で、「年金は確実に減る」と表現しましたが、これは実額(名目)ではなく、実質減るという意味です。それこそ、今はGPIFの150兆円の運用がうまくいっているけどさ、ほんと世界不況なんてものは何年かのスパンでやってくるわけでしょ。そうしたら、一気に取り崩しも加速することになるでしょう。
老後資金というと固いイメージですが、老後の自分の生活の「ゆとり、あんしん」を購入するための積立と思うといいですかね。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。