エヴァの呪縛とエトセトラ

エヴァの呪縛とはエヴァに搭乗したパイロットの身体的年齢が固定されてしまう現象である。今回はこれについて少し考察していこう。

〇エヴァの呪縛はどこから

こう書くと某風邪薬のキャッチコピーのようだが、エヴァの呪縛とはどの程度エヴァと関わると発生するものなのだろうか。

正直な話、これを判断することは非常に困難である。というか不可能に近い。

何故なのか、順を追って説明しよう。現在エヴァの呪縛を受けている事が確定しているとされる人物は2人。式波・アスカ・ラングレーと真希波・マリ・イラストリアスである。この2人は新劇場版破からQの間に一切歳をとっていない。また、エヴァの呪縛を受けている可能性のある人物は碇シンジである。何故可能性の範疇に収めたのかと言うと、彼がニアサードインパクトを起こした際にエントリープラグ最深部まで到達し、一度エヴァと同化した可能性があるからである。新世紀エヴァンゲリヲン第16話でもシンジは12時間エントリープラグ内に閉じ込められ、L.C.Lに溶け込んでしまった。新劇場版Qでサルベージされた際にニアサードインパクト発生時の肉体がそのまま再生された可能性もあるため、エヴァの呪縛のせいで歳をとっていないかどうかは判断しにくい。

また、ゲンドウと冬月が14年間の間にほとんど歳をとったように見えないのも不可解である。但し個人的には彼等は肉体を捨て機械化している可能性が高いと思っている。

兎に角ここではエヴァに搭乗した時点でエヴァの呪縛に囚われると仮定しよう。

〇エヴァの呪縛(メタ的考察)

エヴァンゲリヲン初号機のコアにはシンジの母である碇ユイが取り込まれてしまっている。また、2号機を始めとするエヴァンゲリヲンのほとんどのコアにはパイロットの母親が取り込まれており、それによって同調率を上げている。

この設定はあくまでアニメ版、旧劇場版のもので、新劇場版まで残っているかどうかは定かではない。しかし作品を通してエヴァンゲリヲンは「母親」を象徴する存在だと言えるのではないだろうか。

エヴァンゲリヲンが母親の象徴であればそのパイロットはさしずめ母親の子供である。

そしてエヴァという母親の子供であるパイロットの肉体は成長する事がない。

勘のいい方なら気づいていただけたかもしれない。エヴァに乗る事とは母親に保護される子供であり続ける事、つまり成長しない事。これがエヴァの呪縛なのである。

〇思春期、シンジの心情

ここまではエヴァの呪縛について考察してきたがここからはエヴァパイロットの適正年齢である14歳に焦点を当てて考察(妄想)していく。

まず第一に14歳とはどんな年代か。そう、正に思春期真っ只中である。思春期とは子供と大人の中間。母親の保護下であることをもどかしく感じる一方、いつまでも子供でいたいといった相反する想いを抱える時期である。

主人公碇シンジはそんな思春期の中の人間を代表するような人物である。

誰かに認めて貰うために使徒と戦い、エヴァに乗る事で孤独な自分を変えようとする。しかし新劇場版:Qで彼は自分の存在価値であるエヴァへの搭乗を止められ、更には明確な拒絶を受けてしまう。

これは人が思春期に母親の元に居続ける事。つまり子供であり続けることを否定される状況に酷似している。

アイデンティティを奪われたシンジは渚カヲルの語る再生の儀式にすがるも全て失敗。彼にとって唯一の理解者であったカヲルをも失った。自分の存在価値がいきなり消え、理解者すら失ってしまえば誰だってQラストのシンジのような無気力感に陥ってしまうだろう。

さて、シン・エヴァンゲリヲンでシンジは一体どうなってしまうのだろうか。

シン・エヴァンゲリヲンのキャッチコピーになっている「さらば、全てのエヴァンゲリオン」は、上記の考察通り行くと「母親からの独立」という解釈がとれる。これはあくまで予想だが、シンジは思春期の中の人がそうであるように、母親の保護下から脱し新たな自分を築くのではないだろうか。エヴァに頼らず自らの手で変えていける自分を。

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