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“100年続く樽の町”、”区画ごとの盛り上がり”、街を大きく捉えない島田さんの街づくり@富山県南砺市井波エリア。

地域ものがたるアンバサダー富山編・7月の旅は、富山県南砺市の井波エリアへと伺った。石川県に近い富山第四の都市・南砺市は、小矢部川・庄川の河川に挟まれ、世界遺産の合掌造り集落を抱える五箇山も含む、自然豊かな場所。そんな南砺市にある井波エリアは交通アクセスだけを考えれば、公共機関で行きづらい、やや奥地にある場所ながら、日本一の木彫りのまちとして知られ、現在も200人もの彫刻が活躍している街となります。そんな井波エリアで、街の未来を考えた活動を行われている島田さんにお話しを伺いました。

街単位で考えない、フォーカスを小さく、区画ごとに考える島田さんの街づくり

島田さんは地元で林業を営む島田木材の後継ぎ経営者であり、井波の人口減が生み出した様々な課題解決と街づくりを行う、一般社団法人ジソウラボの代表を務めている。

ブリューワリー建設場所で説明をして下さる島田さん

「この場所がブリューワリーになります」と、島田木材本社横の建物を案内頂いた。ここで地ビールを作り、人が集まる場とする構想だ。2Fを泊まれるスペースにすることも検討してるらしい。

ここが22年11月にブリューワリーとしてオープンする予定

このブリューワリーの徒歩圏内には、東京からUターンした窪田さんがオープンしたベイカーズ ハウス クボタがある。地元の人気スポットであるベイカーズハウス クボタも、ジソウラボの活動から生まれたお店の1つだ。

Eat inもできるベイカーズ ハウス クボタ。Eat inの看板もパンで出来ている。

「街おこしって言っても、街単位で考えると大きすぎて分かりづらい。だから私たちは、1つ1つの区画が盛り上がれば良いと思っています」そう説明してくれた。1つの区画ではブリューワリーに人が集まり、その先の別の区画ではベイカーズハウスクボタに人々が集まっている。その1つ1つが、街づくり・仕掛け作りの第一歩だ、ということだ。

「ここにはコーヒーの焙煎所となります」と別の場所を見せて頂いた。大きなビジネスを起こそうとするのではなく、「小さな小商をたくさん作り、そこに従業員が増え、街が盛り上がっていく」そんな街づくりを目指されている。

コーヒー焙煎所は22年10月オープン予定。ここの2Fも宿泊スペースとなるそうだ。ブリューワリーで泊まるか、焙煎所で泊まるか、中々な悩ましいチョイスだ。

「街単位で考えると大き過ぎる」、その意味が街を歩いて体感し、少しだけ理解できた。私には「どうしたら街の人口が増えるか」はわからないけれど、「美味しいパン屋さんに人が集まる」ことや、「ビール片手に楽しめる場所に飲み行く」のは理解できる。そういう場所が増えれば、きっとその街に行ったり住んでみたくなる。「街単位」では、わからなかった街づくりが、少しだけ理解できた気がした。

100年続く樽の街へ

6月の地域ものがたるアンバサダーで訪問した、若鶴酒造さんのウィスキー樽を作り、修理しているのが島田さんが代表を務める島田木材さんと、地元の工務店・山崎工務店さんだ。近くを流れる庄川上流で採れる、ミズナラの木をを使っている。樽の元となるミズナラも、島田さんが樽を作る島田木材さん・山崎工務店さんも、ウィスキーの水も、ウィスキーを造る若鶴酒造もみんな庄川の近くにあり、庄川の恵みを受けて美味しいウィスキーが作り出されている。

樽を作り始めたのは5年前のこと。当初は樽作りのイロハが分からず、とても苦労されたそうだ。「こういう密度が高い木がいいんです。」とミズナラの木材を使って説明してくれた。材料選びを間違えると、樽からお酒が漏れてしまう。

真ん中の木が密度が高い良いミズナラの木です。

「木は乾燥し過ぎるとダメなんです。適度な湿度が必要で、湿度が高いことも井波で木彫りが発達した理由の1つ」と説明してくださった。井波の地は、ミズナラの木が採れることだけでなく、環境もまた木材産業の発展を後押ししてくれるようだ。

そんな井波の次のビジネスが、ウィスキーの樽作りだ。日本には島田さん以外にもう一社しか独立系の樽メーカーがなく、盛り上がるウィスキー作りを支える樽メーカーが不在なのだ。

「100年続く樽の街にしたい」そんな島田さんの熱いメッセージも、恵まれた環境と、ビジョンあるリーダーがいれば実現できるのではないか、そう思えてくる。いつか井波、そして南砺市がジャパニーズウィスキーの聖地と呼ばれる未来が見えた気がした。

井波に木彫りが根付いてから数百年後の令和になっても、若い職人含め木彫りしている姿がそこかしこで見られる。100年後の井波では、樽職人が作業する姿が見れるようになるのかな。


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