知らなかったことを知ることは楽しい。
「こいつはスゴい!」と思うようなことは、人にも伝えたくなる。
人でも、生き物でも、モノでも、なんでも。
このコンテンツは、そういうスゴい奴らの魅力を紹介していくシリーズである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
シャチ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◼️「地球上の最強の生物はいったいどいつだ?」
動物好きの少年なら、絶対考えたことがあるテーマだろう。私も例にもれず、そうだった。学校の行き帰り、仲のよい友人と話す話題でもあった。
ゾウ?
ライオン?
トラ?
「最強」をどう定義するかによって回答は変わるだろうし、もちろん戦うシチュエーションによっても結果は全く違う。現実問題として、動物たちが異種格闘技戦のリングに上がるわけはないから、何をもって公平な条件とするか、も定めようがないだろう。
が、しかし。
敢えて言う。
地球上最強の生物、それはシャチしかない!
◼️ 陸上か水中か問題について
陸上の生物と水中の生物が直接戦うシチュエーションはそんなに多くないだろう。が、水陸両方で戦える生物もけっこういる。
ワニなんかは水陸どっちにもいるし、噛みつきの力は実測された数値としては地球上で最強だという。イリエワニが顎を閉じる力は、1平方センチ当たり約260キログラムを計測している(ヒトがステーキを噛む力は1平方センチ当たり約10~14キロ。ハイエナ、ライオン、トラなどで1平方センチ当たり約70キロ)。
しかしワニがより恐ろしいのは陸上より水中だ。移動速度は倍になるし、獲物への攻撃も執拗になるという。そしてワニの必殺技「デスロール」。これは獲物に食らいついたあと、自らの体をローリングさせることによって獲物の肉を引きちぎるもの。相手が死ぬまでやめないことからこの名がついた。
だが、例えばトラとワニが戦ったとして、陸上ならトラ、水中ならワニが勝つかというと、そうともいえないようだ。トラ自体が泳ぎを比較的得意にしている猛獣でもあるが、水中でワニに襲われたトラがワニを返り討ちにした、という例も実際に報告されている。一方陸上で戦った場合はほぼトラに軍配が上がるようだ。
陸上での戦いでは、ネコ科肉食動物の攻撃力はやはり群を抜く。なかでも体の大きさ、運動能力の高さから、ライオンとトラが双璧なのは揺るがない。構造的に、ネコ科は丸顔だが、イヌ科はアゴが細い。獰猛な狼でも、アゴの力ではネコ科に勝てないようだ。
ただ、ゾウやサイ、キリン、カバといった大型草食動物が、ネコ科肉食動物に襲われつつもこれを返り討ちにするケースも少なくはない。ライオンは群れで狩りをするから、ライオンがこれら草食動物と戦うときは、群れ対一頭のハンディキャップ・マッチになるが、途中ライオン側に犠牲者が出ることもあるし、結局追い返されることもかなりあるという。
特にアフリカゾウの強さは際立っている。おそらく1対1なら、ライオンが勝てる可能性の方が少ないだろう(トラはアフリカにいないので、アフリカゾウと戦うというシチュエーションがそもそもない)。陸上のみでの戦いに限定するなら、最強の生物はアフリカゾウ、というのがおそらく最も説得力がありそうだ。
となれば、水陸それぞれ別でチャンピオンを決める方が現実的にも見えるが、陸生の生物であっても、前述のワニ以外にカバなんかも水中でめちゃくちゃ強い。それに水中でも海の生物と淡水の生物では出会うことが少ない。だから単純に水か陸か、で分ける意味もあまりあるように思えない。
そう思っていたが、ある時衝撃的な記事を見つけた。
◼️ シャチの圧倒的スペック
巨大動物図鑑より
http://biggame.iza-yoi.net
ホッキョクグマの母と子が氷塊の上で不安そうに寄り添っていた。氷塊は激しく動いており、周囲の波からみてただ事ならぬ様子だった。突然、氷塊の下から鮮やかな白と黒のツートンカラーのシャチが、氷を突き上げるようにして現れた。
ホッキョクグマの親子はこの時は何とか難を逃れた。最大のクマであるホッキョクグマは雌でも300kgもあるが、それでも3トン以上もあるシャチから見ると小さな子供でしかない。
ホッキョクグマは熊の中で最大の種であり、北極圏での食物連鎖の頂点に居る生物と言ってよい。漠然と、ホッキョクグマ対シャチならどっちが強いんだろう、ぐらいに思っていた。
が、これはなんだ。
体重は10倍も違うのか?
これではホッキョクグマなど、シャチから見たらただのエサ以上の意味はない。
これが、シャチに関心を持ったきっかけだった。いったいシャチはどんなスペックを持つのだろうか。
Wikipediaより(要旨)
●最大級のオスでは体長は9.8メートル、体重は10トンに達する。
●世界中の海に生息し、地球上で最も広く分布する哺乳類の一種と言われる。時には餌を求めて、数百キロメートルも川を遡上することも報告されている。
●泳ぐ速さは時速60 - 70キロメートル以上に及び、哺乳類では最も速く泳ぐことができる生物のひとつである。
●2つの種類の音を使い分けていることが知られている。1つはコールと呼ばれ、群れのメンバー同士のコミュニケーションに使用される。もう1つはクリック音と呼ばれる音波である。この音波は物質に当たるまで水中を移動するため、シャチはその反響音を下あごの骨から感じ取ることで、前方に何があるか判断することができる。クリック音の性能は高く、わずか数ミリメートルしか離れていない2本の糸を認識したり、反響音の波形の違いから物質の成分、果ては内容物まで認識することが可能だという。
●海洋系での食物連鎖の頂点に立つ。武器を使う人間を例外にすると自然界での天敵は存在しない。知能も高く多くの生物を捕食することから、非常に獰猛で貪欲な捕食者として知られている。
●比較的大きなものではオタリア・アザラシ・イルカ・ホッキョクグマ、時にはクジラやサメなど、捕食する動物は多岐に渡るとされる。
●氷の下からの奇襲・群れでの協力・挟み撃ちなど、高度な狩りの技術を持つ。前述のクリック音を通常より凝縮させて獲物に当てて麻痺させ、捕食しやすくする行動も知られている。
●海中から浜辺へ突進し這い上がり、浜辺にいるアシカやオタリアなどを捕食する「オルカアタック」と呼ばれる行動がみられる。
●水面下を遊泳していた3メートルほどのサメを真下から攻撃し一撃で仕留めた例を、海洋学者の海洋探査船が報告している。
●サメやエイを捕食する場合、獲物の身体をひっくり返し擬死状態にすることで抵抗出来なくしてから食べる。軟骨魚類特有の性質を用いた有効な狩猟方法。
●口に入れた魚を吐き出してカモメをおびき寄せ、集まってきたカモメを食した例も報告されている。
最大10トンといえば、アフリカゾウに比べてさえ倍以上あることになる。この時点で、あらゆる陸上動物はシャチから見たら少なくとも敵にはならない。
そして泳ぐスピードは速い。もともと泳ぐスピードでは変温動物である魚類より恒温動物である哺乳類の方が優れるのだが、これにより大型のサメと戦う時も機動力で勝る。
加えて頭脳の優秀さ、仲間とのコミュニケーション能力の高さがものすごい。この狩りのテクニックの多彩さ、合理性はなんだ。挙げ句の果てにはビームみたいなものまで出してるぞ。
順応性も抜群。寒いのも暑いのもOK、川でものぼり、移動力も高い。
これ以上、他に何か必要ですか?
生物の中には信じられないくらいスゴい能力を持つものもいる。が、総合的な戦闘力という指標で見た場合、シャチのそれは他を圧倒している。
同じ水中哺乳類として比肩しうるマッコウクジラはシャチよりさらに巨大である。最大50トンを誇り、歯のある生物としては文句なく最大。
だがそのマッコウクジラさえ、シャチの餌食になることがある。マッコウクジラが戦うのはもっぱらダイオウイカなどの巨大イカであり、マッコウクジラがシャチを襲うことはどうもない。やはり最強の座はシャチだろう。