Vol.17 アイドルはいつまで握手付きCDを売るのか
先日、アイドルグループ私立恵比寿中学が握手会を廃止というニュースが飛び込んできました。ただし実際は、運営側が廃止を検討しているというアナウンスをしただけであり、確定したわけではありませんでした。
握手会はアイドルが効率よくお金を稼ぐために生み出されたシステムですがが、全てのアイドルが握手会を行っているわけではありません。
さくら学院というグループは非接触を売りにして、プレミアム感(清純さ)を売りにしていました。
同じスターダストの先輩であるももクロ。活動初期は、握手会やチェキ会で地道に知名度を獲得し現在の地位を確立しましたが、アイドル=握手会とイメージが定着してしまった2016年、握手会を辞めるアイドルがいても不思議ではありません。
握手会のデメリット
アイドルサイドから見た握手会のデメリットです。
メンバーの精神衛生
8割位はこれな気がしますが、やはりどこの誰だかも分からないおっさんと握手を続けるのは骨が折れます。しかも成人したアイドルならまだしも、実際はU-15だったりする訳ですから、アイドルのメンタルは想像を絶します。
世間にはアイドル=笑顔でニコニコしてればお金もらえる楽な商売という、性格の悪い見方をする人もいらっしゃいますが、実際四六時中おっさん相手に笑顔でいるの、きついってマジで。
メンバーの危機管理
半年くらい前、シンガーソングライターが殺傷された事件がありましたが、やはりファンを物理的に近づける=リスク増なんですよね。
凶器は入場前に取り上げればいいのですが、防げないのが言葉の暴力です。握手会における言葉の暴力は、世間の人が思ってるよりも普通にあります。
アイドル現場には現実世界では他人から相手にされない人種がたくさん来ます。そういう人たちは、アイドルに説教したり、説教ならまだマシで、「ブス・死ね」などの暴言を平気で言い放ちます。
そういう人たちは当然出禁になるのですが、その言葉を聞いた十代の子は結構トラウマになったりします。
金がかかる
握手会はなんだかんだ金と手間がかかります。
スタッフの人件費。AKBレベルになると警備スタッフ数百名規模+金属探知機導入で馬鹿になりません。会場も横アリ、幕張メッセレベルを数日貸し切る必要があります。
調べてみると、幕張メッセ1ホール借りるのに2,256,680円/1日でした。
AKBGで握手会を開催する場合は、3~5ホールは毎回抑えてる気がするので、会場費だけでも余裕で1000万/1日を超えます。
山本彩が1日2000人を握手会で捌いたところで、それに対する対価は雀の涙ほどでしょう。
昔の握手会はあくまで、ファンに対する日頃の礼であり「普段から応援してくれてありがとう。これからも応援してね」という意味以上のものはありませんでした。
それがアイドルブームとともに拡大解釈された結果、アイドルはファンと握手して会話を楽しむのが当然という認識が広まってしまいました。
そもそも握手会を続けた先に何があるのか問題
昔、東京女子流というグループが「このままアイドル路線で行くか、アーティスト路線で行くか」という問題提起を行いファンの間でも議論になりましたが、これはグループのアイデンティティにも関わる問題です。
今やアイドル=握手会という風潮になってますが、ほんとに握手会をやる必要があるのかという話です。
みなさんご存知の通り、CDは売れないですし、そもそもCDを売るということ自体が前近代的な感じです。とは言えCDなしで金だけ払って握手(接触)ということになると、風営法&児童福祉法にひっかかちゃうんですよね。
AKBはファンとの近さを引き換えに、効率的にお金を生むシステムとして握手会を導入し成長しましたが、現在AKBG以外の握手会はただの集金システムに組み込まれた一プロセスに過ぎず、コンセプトもクソもないわけです。
日銭が必要な地下アイドルは別として、ある程度の規模のアイドルになってくると、真っ当な意識を持ったマネージメントサイド(A&Rを含む)であれば、「この子たちは、握手会で金を稼ぐ存在のままでいいのか」という問題意識を抱えるはずです。
それがつまり今回握手会廃止を検討したスターダストだったり、アイドルからアーティスト路線に切り替えようとするエイベックスなどの大手企業の動きということです。
レーベルや、事務所、エンターテイメント企業に求められるものはアーティストや歌手による感動の提供であり、若い女の子のぬくもりを安価で提供することではありません。
握手会は再現性のハードルが低いので誰でも真似できますし、差別化にもならないので、ただの消耗戦です。
歌やダンスのレッスンもまともに受けず、土日になれば握手会で過ごす日々。そんな子たちに歌手としての未来などありません。
CDで稼げてた時代は良かったのですが、今はCDが売れないですから、握手会が台頭するのも理解はできるのですが、もう少し別のやり方で稼ぎ方を考えてほしいものです。
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