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電力だけでロケット推進力を得るマッハ効果

 昨今民間によるロケット打ち上げをはじめとした宇宙ビジネスが盛んになってきていますが、その推進剤は主にロケット燃料を燃焼させたエネルギーが利用されています。その多くは液体燃料ですが、日本では固体燃料も積極的に活用されています。「はやぶさ」などの小惑星サンプルリターン計画ではキセノンなどを使った静電加速するイオンエンジンが活用され、新たな推進システムとして大きな期待を集めています。そして電気を使った新たな推進システムとして「マッハ効果」ないし「ウッドワード効果」と呼ばれる、電気を加えると膨張と収縮を繰り返すピエゾ結晶を用いた技術が注目されつつあります。
 マッハ効果は1990年にジェームズ・F・ウッドワード博士によって提唱された仮設で、排気がなく反動のない推進システムの可能性が注目されました。NASAは 2017年よりマッハ効果を利用した推進システムの検証に着手しています。マッハ効果の原理はオーストラリアの物理学者エルンスト・マッハ博士が提唱したもので、アルベルト・アインシュタイン博士の相対性理論にも影響を与えた理論と言われています。
この noteの写真は METのキーコンポーネントのリアクション・マスで、博士が右手の小指で押しているのがスプリングのように反復する部分。
 マッハ効果を利用した推進システムは「マッハ効果スラスター (MET: Mach Effec Thruster)」と呼ばれています。原理としては大量のピエゾ結晶に電気を通すことで、物質をある瞬間は重く、次の瞬間は軽くすることで、物体を後ろに押し出す推進力を生み出すものです。ウッドワード博士の初期実験では 30K~35KHzの周期で反復させ推進力を得ることに成功し、一台の METで 100mN程度の推進力を生み出すことができたそうです。
 宇宙空間では推進力がなければ制御不能となり、役に立たないどころか他の宇宙機や人工衛星に衝突するなど多大な被害を及ぼしかねません。推進システムに電気を利用するのは高い運用効率が得られると同時に宇宙機や人工衛星の寿命を大幅に伸ばすことが可能となりますので、今後の研究開発の進捗に期待したいと思います。

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