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無茶ぶりは忘れさせたもん勝ちです☆彡.。

皆さん、はじめまして。舞台美術を担当しました垣花です。 他セクションの熱いノートが日々公開されていてあわあわしながら書いています。というのも私は劇団森ではなくて、舞台美術研究会というところで裏方だけを4年間やってきた人なのです。劇団森の皆とは…そうですね、隣の学区だけど溜まり場の公園とか駄菓子屋は同じ幼馴染…みたいな感じで仲良くさせてもらっていました。
 あ!以下は舞台仕掛けのネタバレを含むので知らずに見たいよ~という人は先に映像をご覧くださいね!

🔨舞台美術はいつだって無茶ぶりから始まる
 皆さんは舞台美術がどうやってつくられるか考えたことがありますか?
「言われてみればないな~」と言う人がほとんどだと思います。普通、舞台を観ていて物の素材とか固定方法とか考えませんよね。でも、それが私の目標なんです。お客さんにも役者さんにも「そこに存在して当たり前の場所」だと思ってほしい。そうであるほどかっこいいと思っています。あの床の下には補強材がこれぐらい入ってて~なんて言ったら野暮ですから。というわけで今日は技術的な話はせずに、本公演らしくロマンのある話をします。

 美術は演劇をつくっていく上で最初期に動き出すセクションのひとつです。脚本が完成してから依頼されることもありますが、お互いに手探りの学生演劇では打ち合わせ段階で「こういう演出考えてるんだけど、作れるかな?」と相談をもらうことが多々あります。
それは今回も例外ではなく…というか特大の無茶ぶりから始まりました。
「前方後円墳つくりたいんだよね」
「…うん?」
「古墳は光らせたくて、あと最後だけ出したくて」
「え?!光…は?最後だけ?!」
「そう、最後は弥生時代なんだけど一幕は日本で二幕はアメリカに」
「ちょっとまって?!」
とまぁ、こんな感じ…
それでできたのが、あの光る古墳と回転扉と中割幕です。一番前の幕も場面転換には必須だった。あのサイズの布、予算内で用意するの本当~~~に大変なんですよ。端切れを買い集めて縫い合わせて、床も三種類を組み合わせて場面によって見え方が変わるように工夫して…床と布で予算を半分以上使いました…広いって恐ろしい…
簡単に言うと、わたし結構頑張ったよね、と思います笑

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【色を変えたり柄を変えたり、角度をぐるぐる回して演出家に説明したり、3Dモデルは便利です】

小屋の臨場感とか稽古場の想像力から少し離れた作業場で黙々と釘を打ってるのが好きな私からすると、よくそんなとんでもない舞台思いつくよな…と思うのですが、無茶ぶりと言うのは実はちょっぴり嬉しいものでして。
もちろん、安全面や他セクションとの兼ね合いでできないことは伝えるけれど、まっさらな劇場をどんな形にしようが私たちの自由なわけじゃないですか。みんなの「やってみたい!」の最初の土台を任されるんです。できる限り形にしたいし応えたい。どうなってんだ?!と言わせたい。ここが劇場だって忘れるくらい、でもどんな場所よりも演劇をしていると実感できる場所にしたい。

結局はそういう“無茶ぶり”を叶えてあげたいと思わせてしまう愛嬌というか、夢みて騙されてもいいやみたいな、そういうの。演出家や役者さんの才能なんだろうな~と思います。

🔧見えないところもがんばってる

 技術的なことは書かないぞ~と冒頭書きましたが、ちょっとだけ。
古墳を光らせたい!ピアノを置きたい!バカでかい大道具を出したい!こういう「やってみたい」は演劇が盛り上がるほど増えていきます。たとえば、弥生エリアのパネルは一部欄間(出ハケの上)がありませんよね。これは、通し稽古を観て槍が通らないだろうなと思ったから変更した部分です。光る古墳もLEDテープが丸出しだとネタバレでカッコ悪いので薄い布を探して重ねたり、ピアノの配線を古墳下に通して使わないときに隠す穴を作ったり。役者さんが気兼ねなく動けるように補強をしたり、出ハケの広さを繰り返し確認したり。
美術は一番最初に図面を描いてプランを決めるお仕事ですが、それで突き進めば良いという訳ではないんです。土台だからこそ、全てのセクションがその世界を自由に当たり前に使えるように対応していく必要があります。色々な演出の基準で土台だから簡単には動かせないけれど、大きいものだからこそ壁に、床に、天井に、色に、素材に、見た目を変えず対応力を維持する工夫を隠し持っています。
そういうところは見つからなかったもん勝ち!と思っているので、最後まで秘密にしたいんです。せっかく隠したんだもん。最後まで「どうなってんだ〜?!」と思われたい。

気になる~!と言う人はぜひ舞台美術をやってみてください☆。.:*・゜

絶対に語り合える友達ができます!!!きっと演劇だけじゃなく、街並みや建物、ちょっとした布や看板を見る目が変わりますよ👀

🥕さいごに
 わあ〜意外と喋っちゃった。
 これはコロナ渦が始まってからずっと言っていますが、舞台美術ってでかくて高くて本当に贅沢品だって思います。ケチろうと思えばどこまでもケチれる。この作品を見てもらえば分かるように、演劇って何もない場所でもできるんです。表現する人とそれを受け入れる人がいれば弥生時代の原っぱでも令和のオンライン世界でも成立しちゃう。
それなのに、それを分かっているのに、いつ公演ができなくなるかわからない世界で絶対上演できると信じてこんなにハチャメチャなものを作らせてくれた劇団森はやっぱりとんでもない団体です。そういう欲張りで向こう見ずなところが好きなんですけどね。ハラハラさせられつつも、ちょっとくらい騙されて巻き込まれてやってもいいかと思っちゃう魅力とエネルギーがあります。

 さいごに一緒にでかいことができてよかったです。
さいごまで私に無茶ぶりしてくれてうれしかったです。ありがとう。

何も無い世界でだって成り立つはずの演劇で、私たちが贅沢につくった場所が皆さまの思い出の景色として残りますように☆彡.。

 舞台美術 垣花恵利奈(さわら小學校)

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