退職の引き継ぎで本気出した話
先日の金曜日(18日)で最終出社日を迎えました。
退職する際に発生する最後の業務が「引き継ぎ」の作業。
これまで数社経験して退職の引き継ぎ自体は初めてじゃなく、引き継がれる側も経験しました。
基本的に業務を引き継ぐ際には「引き継ぎ資料」を作成しますが、特にルールやマニュアルとか決まっているものはありません。「引き継ぎ 資料」と検索しても何か参考になりそうなものもなく。
その結果が全てではありませんが、退職の引き継ぎの不手際で日本中、、、いや、おそらく世界中が「引き継ぎ不足による事故」が発生していると推測しています。
たぶん。。。
実際に引き継がれる側で何回か経験しました。
「聞いてないよぉ~!」
いくら情報を探してもみつかりません。
苦肉の策で退職した担当者に連絡を取っても、
「あれ、言ってませんでしたっけ~?」
とケロッとしている。
こんな顔で。
まさに、
「引き継ぎのもらい事故」
である。
完全に人災です。
なので、世界中で起きている「引き継ぎのもらい事故」を防ぐために、「引き継ぎのマニュアル」を作成することにしました。
マニュアル?
いや、業務内容や会社によって統一するのが難しいので、「マニュアル」というより、「引き継ぎはここまでやれば誰にも文句は言われないだろう」といった内容が近いかもしれません。
特にこれから会社を辞める準備をして、引き継ぎ業務に取り掛かろうとしている人には見てほしいです。
少しやりすぎな部分もあるかもしれないので、一部だけでもご参考までに。
この世から少しでも「引き継ぎのもらい事故」を防ぎましょう。
引き継ぎを行う主な項目
主に引き継ぎを行う項目は以下7つです。
①引き継いだ内容を一覧化
②属人的な仕事は全てマニュアル化
③稼働案件含めて過去の施策と実績を一覧化
④過去の提案資料と提案した媒体の一覧化と格納先
⑤関係者の連絡先と性格
⑥使用していたツールやサイトを一覧化
⑦参考にしていた専門ブログを紹介
のちほど詳細は説明していきますが、基本となる考え方として「自分が退職した後に別部署から新しい人が入ってきても、自分が作った引き継ぎ資料が研修資料的な立ち位置になる」ことまで想定しました。
結論、ゼロから見ても理解できるレベルです。
というのは、少々過言ですが。
しかし、極限まで「ゼロから見ても理解できるレベル」で引き継ぎ資料を作成しました。
では、さっそく解説していきます。
引き継いだ内容を一覧化
" 人は忘れる生き物 "
という前提でコミュニケーションを取りましょう。
口頭だけで説明しても、ほぼ確実に忘れます。
昨日の晩ご飯でさえ、じっくり考えないと思い出せません。
※僕だけならすいません。。。
そんな人間に引き継ぐ内容を口頭で説明してもムリムリ。
だからこそ、思い出すキッカケを準備しておきます。
そのために、引き継いだ内容を一覧化します。
僕はスプレッドシートで共有できるようにしました。スプレッドシートは共有しやすく、誤った操作をしても過去に遡れて改修できるので使い勝手が良いです。
もちろん、ご自身、もしくは引き継がれる側が使いやすいツールでOKです。
また、引き継ぎ内容を一覧化する目的は大きく2つあります。
・忘却の防止
・不足情報のフォロー
まずは、忘却の防止について説明していきます。
言葉の通りなんですが、
仮に昨日の晩ご飯が「肉じゃが」だった場合。
たとえば、
「昨日の晩ご飯はなに?」
と聞かれても考えないと思い出せませんが、
「昨日の晩ご飯は和食だった?」
と聞くと相手の回答は「はい」になり、
相手の頭には「肉じゃが」が自然に浮かび上がります。
とにかく相手に考えさせる時間を与えない。
※相手 = 引き継がれる側
そのために、引き継いだ内容を一覧化してあげることで「そもそも何をどう引き継いだんだっけ?」という事故を防ぎます。
次に、不足情報のフォローです。
引き継ぐ人は引き継がれる側と一緒に、引き継ぎ一覧を見ながら「これは引き継いだ」と一緒に確認していくのがベストです。
その中で確実に、「これ何だったっけ?」というものが出てくるはずです。
そこを逃さない。
事故が発生するポイントです。
引き継ぎが一覧化されていないと、「これ何だったっけ?」という考えにすら至りません。なんとなく知っていたつもりで、いざ業務に取り掛かっても完璧にこなせない。
結果、事故が発生します。
「引き継ぎのもらい事故」のパターンでは、このケースが一番多いように思えます。
" 改めて考えると何かよくわからん業務 "
これを防止します。
「引き継ぎのもらい事故」もそうですが、ほとんどの事故はシステムさえ整っていれば防止できるパターンが多いです。
属人的な仕事は全てマニュアル化
どうしても社内上、属人的な仕事が発生していた場合はマニュアルを作成しましょう。もしくは、その作業自体のマニュアルが存在しなかった場合も然り。
最悪、引き継いだ担当者が急に休んだとしても、別の担当者がマニュアルを見て作業できる状態がベストです。
僕の場合だったら広告運用の業務をやっていたんですが、
・広告媒体ごとの支払い処理
・広告媒体ごとの売上管理などの計上関係
この2つが属人化していました。
マニュアルも特になかったので、これを期にマニュアルを作成することにしました。
過去に発生したミスやヒヤリハットは注意喚起して残しておきましょう。
ミスは発生すれば「負債」ですが、ミスの防止として事例にすれば「資産」に変わります。
マニュアルのベースはExcelでもPowerPointでも使いやすいもの、もしくは会社で基本的にマニュアルを作成しているものを利用しましょう。
僕の場合はExcelを使いました。理由は僕と引き継がれる側が使い慣れていたからです。あと、Excelの場合はPowerPointやWordと比べて、ページ単位で区切られることがなく、マウスをスクロールしていけば気を散らさずに見返せます。
ちなみに印刷をしないでPCで見ることを前提にしていますので、もし印刷が必要な現場であればPowerPointやWordが望ましいです。
稼働案件含めて過去の施策と実績を一覧化
次に実際に稼働している案件を共有します。
クライアントワークであれば、会社名や売上、担当している業務内容だけではなく、過去の実績や改善事例、失敗した内容など細かく共有しましょう。
ポイントは「同じ過ちを繰り返さないこと」です。
例えば、広告運用だと、正攻法と言われるものが広告媒体ごとにある程度はありますが、常にアップデートが繰り返されている中で全てを洗い出すことは不可能です。
「正しい検証と改善の繰り返し」が必要となります。
検証して改善した結果を共有しておかないと、極端な話、過去に失敗した施策を失敗したものと知らずに、また同じように試して失敗する可能性が出てきます。
フグも毒を除けば食べられるということは、フグの毒に侵された過去の事例が残されているからです。どのように調理すれば美味しい高級魚として提供できるのかを残しておく必要があります。
毒(悪化の原因)は何で、どうすれば食べること(改善)が出来たのか?もしくは食べたら死ぬのか(失敗)?
過去の施策の失敗と成功例は全て共有できるように整えておきましょう。
過去の提案資料と提案した媒体の一覧化と格納先
僕は2年近くいて100社近く提案した提案書やシミュレーション、その他の資料を全てまとめてどこに共有ファイルへと格納しました。
まあ、ここまでは普通の引き継ぎかなと思います。
しかし、僕は引き継ぎに本気を出しました。
このマニュアル?を作成するために。
過去に提案して失注した内容もテキスト化して残すことにしたんです。
これは少し先の未来も想定した上で準備するものになります。
例えば、自分が退職したあとに別の人間が新規提案をする場合。
「むかし同じ商材を提案したことがないっけ?」
と振り返って、受注 or 失注した内容を即座に振り返られる体制を作っておきます。結果、過去に失注したポイントを事前に押さえておくことで、同じ過ちを事前に防止して受注角度を挙げることができます。
引き継ぎ資料が自分の分身です。
退職後も自分がいるかのような体制を整えておきます。
これが引き継ぎの最終形態だと思っています。
本人に聞けば答えが出てきますが、すぐに退職すればすぐに聞けません。その場にいるかのように、過去の情報が全て資料化されている状態です。
関係者の連絡先と性格
担当していたクライアントや外注先となるビジネスパートナーへ退職の挨拶も兼ねて、後続の担当者(引き継がれる側)を紹介するのは通常でも行います。
その際に担当者の名前と連絡先は共有するのが一般的です。
しかし、重要なのは担当者の性格や仕事の特徴です。
「他者紹介」みたいな感覚で引き継ぎを行いましょう。
性格であれば、「怒りやすいか温厚か」「論理的か非論理的か」「過去にどういったケースでその性格が現れたか」まで細かく共有します。
仕事の特徴であれば、「レスは遅いのか速いのか」「連絡はメールが多いかTELが多いか」、さらにはどこに強みがあってWebに関する知見はどの程度かまで。
ここまで細かく取引先の担当者の引き継ぎを行う目的として、引き継ぐ人への不安解消があります。
引き継がれる側からすると、担当者がどういった人物かを理解していない状態でコミュニケーションを取るのは少々不安になります。
さらに、相手が怒りやすいポイント、提案した際に特に気にするポイントなど事前に押さえておけば、入念な準備ができます。
取引先の担当者も、自分と同じように引き継ぎ担当とコミュニケーションが取れて、担当者交代に対するストレスを感じにくくなります。
クライアントワークであれば、
「担当が変わってリプレイスされた」
といったケースは珍しくありません。
担当者が変わったときに感じていた違和感の積み重ねで、結果的にリプレイスされることが多いです。いきなりリプレイスされることは、ほとんどありえません。
その小さな違和感の積み重ねを防止するために、担当者の性格や仕事の特徴を事前に押さえておき、事前に準備しておくことが「本当の引き継ぎ完了」です。
これはかなり喜ばれました。
「事務的な仕事ぶりでリスクや責任を負うことを極端に嫌う」
「TELが嫌いなのでチャットで連絡するのがベスト」
「基本的にレスが遅く、遅延することのリスクを提示して後追いすると早くなる」
といった感じで共有していきます。
もちろん、誹謗中傷は絶対にNGです。
言葉が独り歩きして、想定外の事態に陥ることも考えられなくはないので。
使用していたツールやサイトを一覧化
実際に自分が仕事で使用していたツールや参考にしていたサイトを共有します。これはすぐに使うかは正直微妙なので、アペンディクス的な立ち位置として添える形で。。。
案外、同じ仕事をやっていても使い慣れたツールを継続して使っているケースが多く、知らなかっただけで他人が使っていたツールを紹介すると喜ばれるケースが多いです。
参考にしていたサイトも然り。
例えば、決算書やLPの一覧サイトなど、ありとあらゆるサイトの詳細と利用用途をテキストに起こします。年数を重ねていくと自己流でやりがちで、新しい情報を見落としがちです。
そこを補うために、自分が使っていたツールや参考にしていたサイトを共有します。
すぐに使わないにしても、今後、別の部署から新しく入ってきたり、新入社員で入ってきたりした際に研修で利用されるケースがあるので一石二鳥です。
参考にしていた専門ブログを紹介
他にも仕事だけではなく、自己学習の際にも利用していた参考にしていた専門ブログを紹介しました。Web系のブログだけではなく、YouTubeチャンネルも合わせると合計で40近くありましたが。
各コンテンツの特徴やどういったケースで利用しているのかまで書き記しておきます。
情報過多の時代で可処分時間の奪い合いとなる現代において、無駄を省きたいならゼロから参考になりそうなサイトを探しに行くよりも、経験者に聞く方が10倍速いです。
ツールもそうですが、社内に共有した際に、自分では有名だと思っていたブログが案外知られていないこともあります。
特にWeb業界は技術や会社のアップデートが激しく、「A社のブログを参考にしていたけど、急に現れたB社のブログがもっとわかりやすい!」といったケースが多くあります。
数年前まではある分野の第一線を走っていた会社が、今年から他の会社が台頭してわかりやすいコンテンツを配信しているケースも珍しくありません。
特に自分が言うのもなんですが、約40サイトを同時に見た経験があるので、Web系の企業ブログとひとくくりにしても得意分野が異なるので使い方が難しいです。
・Google広告だったらA社
・タグに関してはB社
・SNSに関してはC社
少々極端ではありますが、このように細分化して得た情報をインプットする体制を整えておきます。
これでボーッと必要な情報をネットサーフィンする無駄な時間を消し去ることができます。
まとめ
今回は引き継ぎに関してまとめてみました。
かなり細かい内容で「そこまでやる必要ある?」と思われるものもあったのかもしれません。ただし、結論、引き継ぐ相手に100%完璧に伝わっていればOKなんです。
今回ご紹介した内容はあくまで事例にすぎません。
(マニュアルと言っておきながら)
どうすれば「引き継ぎのもらい事故」を防止できるか?
引き継ぐ側が十分に注意すべきことは、自分は引き継ぎ加害者の候補であること。
下手な引き継ぎをすると、それまで得ていた信頼もガタ落ちします。
「なんか、これも漏れてテキトーだな」
と、悪印象を持たれて終了です。
今回の内容は現在、退職の手続きをして、引き継ぎ業務に取り掛かろうとしている人に届けたいと思って書きました。
今回の内容をまとめると以下7点です。
①引き継いだ内容を一覧化
②属人的な仕事は全てマニュアル化
③稼働案件含めて過去の施策と実績を一覧化
④過去の提案資料と提案した媒体の一覧化と格納先
⑤関係者の連絡先と性格
⑥使用していたツールやサイトを一覧化
⑦参考にしていた専門ブログを紹介
退職を決意しているのであれば、引き継ぎを行うのは最後の仕事です。
引き継ぎ方(辞め際)で人柄や評価が決まります。
いくら在職中は評価が高かった人でも、引き継ぎを雑にやると「あの人は仕事が雑だ」という認識をされてしまいます。このタイミングでのマイナス評価はすでに退職しているので変えることが出来ません。
さらに、今後も今の会社の人たちと良好な関係(円満退職)を目指すのであれば、資料を残しておいて損はありません。
いつ、いかなるタイミングで前職とつながりを持つかわからないので、退職するなら究極の円満退職を目指しましょう。
引き継ぎの事故をなるべく防止して「飛ぶ鳥跡を濁さず」といった状態ができることを願っています。