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絵本プロジェクト 進んでます

 この秋に絵本シリーズを発売開始するため日々動いています。今回は前回ご紹介できなかった作家ラインナップです。

 第1回目は9月末に発行予定のオカタオカさん。去年浜松で個展をしてもらった時の絵がとても印象的で、「この感じで絵本が作りたいなぁ」と思ったのがこのプロジェクトのきっかけです。

 オカタオカさんは雑誌や広告など多くの印刷媒体で見ることができますが、なんといってもクマが主役というのが、素晴らしい。とても安心感がありながらもイケてる感じ。このキャラクターの味は特別なものだと思うのです。大人の子供心をくすぐるのは何故だろう。子供の頃感じていた、「大人も子供みたいに楽しんでるんだなー」と思う瞬間が脳裏に蘇ってくる。僕たちはオカタオカさんのイラストレーションを大人の視点でみているが、この感じがどのように子供に伝わるのか、それがいちばんの楽しみ。特に今回は子供というよりも幼児向けなので、尚更だ。オカタオカさんにとっても、絵本を書くのは今回が初めてだそうなので、楽しんでもらえるといいなあと思っています。

 自分を含め、みんなが通ってきた道なのに、1、2歳というのは今では未知の世界になってしまったといってもいい。でもこのシンプルに楽しい感じと、安心させてくれる感じがこの本の雰囲気を引っ張っていってくれればと思う。安心感というのは、「何があっても大丈夫だよー」という、失敗さえもポジティブに感じさせてくれる安心感です。どんな道でも歩けば道になる、的な、チャレンジを見守る感じ。そんな印象がオカタオカさんの描くクマにはあるのです。

 オカタオカさんとは、建築家の谷尻誠さんの事務所、サポーズデザインオフィスが、社内に社食堂という、カフェレストランをやっていて、そこで初めてお会いしました。もう一年前くらいのことになると思います。実は僕の事務所もそこに間借りをしているので、ほぼ毎日のように社食堂でランチを食べている。オカタオカさんが社食堂のメニューのイラストを描いていたのを知って、そのメニューを眺めることも多かったのだが、その時人に教えてもらうまでは、それがオカタオカさんだとは知りませんでした。僕はなんだか嬉しくなってしまって、ひとりでお食事中のところに待ち合わせもしてないのに、席の向かいに突然座って自己紹介を始めてしまった。そして展覧会をやってもらえないかと続けて繰り出した。オカタオカさんは内心結構引いていたと思いますが、あまり顔にも出さず、はぁ、という感じで話を聞いてくれました。

 僕が浜松で本屋をやっているのを知っていてくれたので、個展の話もスムーズに進みました。今思えばほんとにスムーズに話が進んだものだと思う。今でもこのプロジェクトが進んでいるのも、オカタオカさんの理解力と包容力のおかげだと思います。僕の方は思い立ったが吉日タイプで、どんどんせっかちに行動してしまうものだから、戸惑う人も結構多いと思うのですが、それはそれでうまくいくこともある。オカタオカさんもあの時よく声をかけてくれましたね的なことを言ってくれた。いい意味で言ってくれたのだとこっちは勝手に思っている。

 絵本を作ることになって、以前にも書いたように、ストーリー作りのイメージ共有が重要だと思ったので、そのことから伝えました。つまりは、起承転結のようなストーリー構成はなるべく避けたいということ。幼児にはストーリーの面白さはまだ理解できないように思うからです。因果の流れが及ばない天使の状態といってもいいくらい。でもページが前に進む以上、何か変化していかなければならない。そしてなおかつ、その話の展開がオチに届く前に話を切り上げてほしいと、そんな意味のことを伝えました。

 今回のシリーズは携帯用にサイズを小さくしていますが、ページ数も極端に減らしています。子供の集中力がなくなる前に本も終わるようにしたいという目的です。これは上手くいくとループ状態を作り出します。子どもは面白いと感じたら何度でも飽きるまで繰り返しを要求します。読みきかせをする側にとっては、終われないという、ある種のストレスを感じるかもしれませんが、時間の認識がない幼児にとっては永遠に時は続くのです。興味がなくなる、もしくは別の対象に興味がある移行する時が終わりのしるしです。先に親の方が疲れて強制終了してしまうかもしれません。それくらいひとつの絵、ひとつのページで起こるハプニングに強く反応してもらえるようなものを作りたいものだと思っています。

 僕自身長い間、写真集を作ってきましたが、今回のシリーズと自分の作品集が決定的に違うのは、自分の作品集は読者のターゲットが絞られていないことです。逆に言えば最大のお客が自分だからです。しかし今回のターゲットは幼児にしぼられているから、そこにいかに向き続けられるかが鍵になってくると思います。こうして書き続けていてもまだまだ発見があるから面白い。やってみたことがないことにチャレンジするのは特に面白いです。

 今後も、出版予定の作家の方達のお話を少しずつ書かせていただきたいと思っています。


下の写真は浜松の個展の会場で、絵の仕上げをしているオカタオカさんです。


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