【ネタ感想会】センサールマン 漫才 ゴジラ
この記事は、スパンキープロダクションの芸人による「ひとつのネタに対してみんなで感想を書く」という企画に参加したものです。
今回のネタはセンサールマンの漫才『ゴジラ』で、感想を書くのが、
ひこーき雲・佐藤さん、高田さん、ボーカルさん、単細胞さん、オイカゼ・ワサダさん、純情ポパイ・昨今まれにみる山田の6人です。
ネタ動画はこちら!
https://youtu.be/72ZFXvF3bBs
ご存知の方にはあえて言うまでもないことですが、センサールマンはボケである愛植男さんの抜群の演技力と、ツッコミである山﨑仕事人さんの理知的なツッコミが組み合わさった理想的なバランスのコンビです。植男さんの高い演技力、表現力、そして無駄のないセリフ回しにより爆発的な笑いを生むことが可能である上、仕事人さんの的確かつ理論的なツッコみによりお客さんにボケの意図を余すところなく伝えることが可能です。つまり、非常に“隙のない”コンビということになります。さて、今回取り上げる「ゴジラ」のネタはセンサールマンの代表作である「時代劇」「桃太郎」「トーマス」などに比べてもお客さんに想像力を要求する度合いの高いネタです。冒頭での植男さんの「ゴジラを舞台版でやりたい」という言葉により、ゴジラ及び全ての配役を生身の人間が演じるということ、また、「芝居だけでゴジラを感じてもらいたい」から着ぐるみではなく白いシャツ、白いズボンでゴジラを演じること。音響、照明、舞台効果を一切使わないということで、以下のゴジラなどの演技は全て「白シャツ、白ズボンの生身の劇団員が行うこと」という前提の上にネタが進行します。もちろん、1つ1つのボケを切り取っても面白いが、それが全て「一切舞台効果の無い生身の劇団員の芝居である」ということを踏まえた上でみると何倍も面白いということになります。言葉にすれば以上ですが、これ、並大抵のコンビに出来るネタではありません。何度も言うように、植男さんの高い表現力により、そのまま観ても充分に面白いというパッケージになっていますが、状況を常にお客さんに状況を想像させ、かつボケの意図をより明確にお客さんに伝える仕事人さんの文字通り「仕事」の光る漫才であり、スキの無い構成の上に成り立ったネタなのです。
以下はネタの細かい部分を見ていきたいと思いますが、冒頭の植男さんの舞台版ゴジラの「予告編を上演する」から観ていて欲しいという言葉に始まり、ゴジラが現れたときの「ズシーン!ズシーン!」という音に対する仕事人さんの「口で言ってますけどね」や、「アーオ!アーオ!」というゴジラの鳴き声に対する「白シャツですよ」というツッコミにより、客席に“これは全て生身の役者の演技である”ということを常に喚起します。そして中盤、植男さん演じる“生身の人間が演じるゴジラ”がゴジラのテーマを口ずさみながら“まちを踏みつぶす演技をする”シーンでの仕事人さんの「帰りたい!」という心からの絶叫により、この設定のバカバカしさはピークを迎えます。繰り返すようですが、ここまでお客さんを離さないお二人の演技力、構成力は圧巻です。そして後半、人間たちが何もしていないのに、なぜか“山”に帰って行ったゴジラに対して、植男さん演じる劇団員の「ゴジラはもしかすると、自然界が我々人間に対して送ってきた警鐘なのかも知れない」という言葉に対して、仕事人さんの「感受性豊かだな」というツッコミがあるわけですが、僕は個人的にこのようなツッコミを好みます。ボケの持つ面白さをツッコミの言葉により初めて明確な面白さとしてお客さんに伝える、漠然と感じていた面白さが明確な言葉に置き換わった瞬間のカタルシスにより、さらに大きな笑いが生まれる。これぞツッコミ冥利に尽きるのではないかと、僕自身これまで組んできたコンビを通してもツッコミを演じることが多かったために強く思います。
以上が今回のテーマ、センサールマンさんの「ゴジラ」に対する僕の感想です。長々と書きましたが、要するにセンサールマンさんは非常に面白いコンビだと言うことです。(笑)もっと言うならば、ネタの奥にある緻密さを理解した上で(僕にしたところで全てを完璧に理解しているとは言いませんが)想像力を働かせて見ると、何倍も面白いコンビであるということです。これからもまた新しいネタが見られることを楽しみにしております。