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2021.8.24.tue. 二階から目薬。
今日がいつなのか、いよいよあやしくなってきた。それで気分をスッキリ、視界をハッキリさせようと目薬をさした。そこで浮かんだことわざ。本来は「二階から目薬をさす」だけど、まあ縮めるよね。私はじぶんの腕が伸び切るところからでもうまくさすことができる。でも、二階からは自信ないな。っていうか意味ないだろう。
私の姉は目薬がさせない。そんな人がいるというのはきいたことがあったけれど、まさか身内にいるとは思わなんだ。それを知ったのは、つい最近のことだ。母が白内障の手術をして、しばらくのあいだ目薬をさすことになったのだが、何しろ母なので、すぐ忘れる。それで姉に「あなたがさしてあげればいいじゃない」と言ったところ、非常に動揺したのでおかしいなと。
で、そのときはまだ実家にも顔出していたから、私が母に目薬をさしてみせたのだが、姉は「じぶんにさすのもできないのに、ひとにさすなんて無理」って、 姉ちゃんまじか。まあそのあと練習をして、最近は怖がらずに目薬をさすことができるようになったらしい。しかし、点眼なんて練習するようなものでもないと思うのだが。不思議な姉である。
目薬というのはじつは古いのかもしれないが、どうも「Vロート」のような形をした現代の目薬を思い描いてしまう。しかし、ことわざになってるくらいだからな、江戸のお医者が薬研とか乳鉢でごりごりしてるような時代の薬というか、あるいはもっと古くからあるのかもしれない。
ただ、「二階から」ということは、二階建ての家が一般的になってから生まれたことわざではないかとも想像できる。で、またあちこち調べてみた。それで総合してみると、二階家が建つようになるのは江戸時代だ。商人の力がついたのと、都市部での人口増加が影響して、大名・旗本の屋敷は二階建て、商家は半二階、平民は二階建ては禁止されていた。大名行列を上から見てんじゃねーよ、ってことだ。それから花街は治外法権で二階建てOK。
そうしたら、ちゃんと『故事ことわざの辞典』(小学館)に載っていた。「二階から目薬さす仕掛、さりとは急な恋ぞかし」出典は江戸前期の作者、西沢一風の浮世草子『御前義経記(ごぜんぎけいき)』である。元禄13年(1700年)刊。義経が諸国の遊里を遍歴する話で、だから二階っていうのは遊郭の二階のこと。こうなると目薬も色っぽく感じられるわなあ。