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2021.8.20.fri. 空が静かな日の昼下がりに思い出したこと。
相変わらず、てやんでぃ婆さんは大声でしゃべりつづけているし、車やバイクは間断なく走っている。救急車のサイレンだってきこえているのだが、そうした喧噪さえ遠くに感じられる。もしかしたら空の気配が関係しているのだろうか。空の気配なんて、そんなのきいたこともないが。
窓から覗く東の空は真っ青だ。まさしく秋の空だなあ。この空が音をみんな吸い取ってしまうのかもしれない。おっ、喧噪のひとつが帰っていった。お昼だからね。
そういえば、子どもの頃、友だちが来て遊んでいたとき、母が「もうお昼だから、おうちに帰りなさい」と言ったことを思い出した。友だちは、母の言った「お昼」に反応して、「ええ~お昼だって~変なの」と言っていたことをいまでも覚えている。
これをひらがなにすると、母は「もうおしるだから、おうちに帰りなさい」と言ったのだ。言われた友だちは、たぶん意味は通じたはずだが、おかしなことを言うなと思ったのだろう。私もちょっと恥ずかしかった。
母は下町で育ったためか、「ひ」と「し」の使い分けができない。夏休みなど祖母の家に親戚一同が揃ったりすると、子どもたちは別にして、ばあちゃん兄弟おじおばが、みんな「し」で会話していた。その中に居れば気にしないでしゃべっているのだが、叔母さんなどは、子どもたちの手前、ちゃんと話さなきゃと思うからか、気をつければ気をつけるほどおかしなことになって「そのひんぶん(新聞)とって」なんてことになってしまうのだった。
そういう家庭で育った母の子だもの、影響を受けないわけがない。1年生か2年生の漢字の読みのテストだった。「人」の読み仮名に「しと」と書いてバッテンをもらったことがある。自信を持って書いたのに、納得がいかなくて先生にききにいった。「お母さんは「しと」と言ってます。なんでバツなんですか?」と。しかし、授業でちゃんと「ひと」と習ってるはずなのに、きいてなかったんだねぇ。
先生は「お母さんはそう言うのかもしれないが「ひと」が正しい。お母さんが間違っている。」と、バッサリ。小さな私はそのときに、親は絶対ではないのだと学んだのかもしれない。早くに知ってよかったな。