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2021.7.29.thu. 自由でいることの幸せをかみしめる。
従姉は私と正反対の、決まったことしかやらない人物。話にきいているだけなら笑っていられるが、これがなかなか厄介なのだ。
以前、毎週火曜日になると、すぐ隣に暮らす従姉が「食べきれないから」と言って買ったお刺身を届けに来た。私が留守にしていると、うちの冷蔵庫に入れていく。マグロとイカ、コハダとトリ貝、あるいはアマエビは毎回平たいケーキ皿にきれいに並べられ、ぴっちりラップがかかっていた。それとプラ容器に入った分厚いサケの切り身。
毎週火曜に千葉のほうからやって来る魚屋兄弟がいるのだが、従姉はそこで魚を買っている。私はどうも胡散臭いその兄弟を避けているのだが、従姉にとっては伯母さん(従姉の母親)がいたころからの常連で、魚は体にいいからといって買いつづけているのだ。
毎週火曜は魚が届く日。これが私にとってはプレッシャーだった。「毎週決まって」というのが煩わしく、やんわりお断りしても止まらない。それで、「お魚も飽きるしね」と断ると、じゃあエビなら? イクラならどう? と、こんどはお刺身のほかに、今週はエビ、次の週はイクラ、その次は何だったかな、ホタルイカとかホタテとか。で、またエビ、イクラ……。これがくり返されたのである。
ぴしっと神経質にお皿に並べられたお刺身も食べる気が起こらない。盛り付け直すからお皿にしなくていいと言うと、こんどはプラスチックの容器のまま持って来る。ゴミとなるプラが山のようになってそれでまたうんざり。従姉は「一人じゃ食べきれないから」って言うけど、わざわざサケやエビやイクラをまるまる買って持って来るって、おかしいだろ、それ。
「今夜、私は何が食べたいかな~♪ 」といって献立を考えるとき「あ……。今日は火曜日じゃん」という笑えない状況だった。それで、姉や友人に相談すると、もっとはっきり断らないと従姉には伝わらないだろうということになったのだった。
罰当たりだとじぶんでも思う。でも、もう玄界灘。ってお寒いギャグが出るくらいノイローゼ一歩手前。「お願いだからもう持ってこないでくれ」と言ってやっと解放されたのである。それからは従姉は近所の親戚に持っていってるようだが、そっちは家族だし、もう知ったこっちゃない。
あれから2年くらい経つのだろうか。最近やっと、イカのお刺身が食べたいなと思えるようになった。ワタを焼いて食べたりもして、ああ、自由って美味しい!