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2021.6.5.sat.「キング・オブ・銭湯」の終焉。
すぐ近くの「大黒湯」が今月いっぱいで閉めるという。教えてくれたのは、婆さんネットワークのコジマさんだ。お隣りのサトーさんも知っていた。おかみさんが体調を壊したとか。調べてみると本当だった。
昭和4年(1929)創業という大黒湯は、唐破風(からはふ)のある立派な宮造りで、天井も高い。脱衣場の天井はいまはくすんでしまっているが、50年以上前、夏休みやお正月など祖母のうちにきたときによく通ったものだが、マス目になった天井にはそれぞれユリやボタン、キク、フジ、ヒルガオ(ちょっと適当)といった花が描かれていたのがまだはっきり見えていたことを覚えている。
いま住んでいるうちもそうだが、大黒湯も震災後に建てられた。ちなみに、震災というのは大正12年(1923)の『関東大震災』のことだ。多くの人が家を失って大変なときに、東京の人たちに元気を出してもらおうと、各地の宮大工さんたちが腕を振るって唐破風のある宮造りの銭湯を建てた。だから関東の銭湯は宮造りが多いのだと聞いたことがある。
それにしても、子どものころの千住の思い出といえば、祖母の家の前の駄菓子屋ゆうちゃんとはす向かいの芝居小屋と、そこを曲がってすぐの金魚すくいと、その隣りの大黒湯だった。芝居小屋もゆうちゃんもとっくの昔になくなっている。金魚すくいは看板だけが残っていたが、そこも最近建て替えられ、カフェに変わってしまい、大黒湯だけが唯一残っていたのだ。
この喪失感は、いままで感じたことのないものだ。年をとるということは、こういう寂しさも受け容れるということなのかなあ。なんてな。