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本当にあった進学の怖い話💀

今思いだしても嫌な話です。
でも、今の日本にはこの親子が”レアケースに思えない”
どこの家庭でもあり得る話なんだと思って書きます。
これは地方で会った、ある親子の話です。。。

≪登場人物≫

●男子高校生(A君)
●男子高校生のお母さん
●高校の先生
●塾の先生

≪高2の春≫

この家庭では将来の話も親子でするような、理想的な家庭でした。
お母さんは仕事をしながらも子どもの将来のことを気にしつつ、
ただ、大学に進学させたいというよりもやりたいことをやってほしい、
と願っていました。

そんなある日の夕飯時、A君から

「宇宙に関わる仕事がしたいかも・・・

と、ちょっと自信なさげに話されました。
お母さんは、

「いいじゃな!!やっとやりたいことが見つかったんだね!!」

と、大変喜びました。
A君は、
「別にやりたいことってほどじゃないけど、、、
 面白そうかなって思った程度だよ。」
と言いつつも、打ち明けられたことが嬉しそう。
それから2人はよく宇宙のニュースを見たり、そのことについて話したりするようになりました。

高校での三者面談≫

進路について、高校で話す機会がありました。
A君は、担任の先生に将来のことは話していないようで、その時初めて先生に伝えました。

「宇宙関係の仕事かっ!!いいじゃないかっ!!Aは理系の成績も良いし、良いし、問題なく大学進学も出来ると思うぞ!!」

先生もとても喜んでくれているのがわかり、A君もお母さんもとても嬉しくなりました。
「でも、まさかAが宇宙飛行士になりたいとはなぁ~w」
「別に宇宙飛行士とは言ってないです!!w」
先生自身も宇宙の仕事に繋がる大学となるとピンとこなかったので、後日調べるという約束をして、とても穏やかな雰囲気で三者面談は終わりました。

後日先生から呼び出されたA。

「お前が本当に宇宙の勉強をしたいなら東京のZ大学(難関国公立大学)
だそうだ。どうする?」

A君は、お母さんに相談すると伝えて、先生にお礼を言って出ていきました。
A君にはわかっていました。
「どうする?」
の意味が。
・難関大学というハードル
それと、
・1人暮らしの資金
です。
A君の家は、自営業を営むお父さんの仕事があまりうまくいっておらず、お母さんも働きに出ざるを得ない状況でした。
A君は、少し重たい足取りで家に帰りました。

≪お母さんの反応≫

A君は少し暗い顔をしながら、今日担任の先生から告げられたことを伝えました。
お母さんの顔は見れません。
緊張しながらお母さんのリアクションを待っていると、

「東京か~、寂しくなるわね、、、」

という思ってもいなかったリアクション。
そういうことじゃなくて!!
という気持ちで

「大学の学費とか、一人暮らしとか考えたらどうしようかなって、、、」

A君は自らお金の話題を切り出しました。
お母さんからしたら言われたくないことだとわかっていましたが、聞くなら今しかないという思いで、うつ向きがちに言ってみると

「あんたそんなこと気にしてたの??大丈夫。Aの進学費用はしっかり貯金してあるからっ!!」

そうなんです。
家計は厳しかったですが、ちゃんとA君の進学資金は貯めておいてくれたんです。
「将来やりたいことをやりなさい」
という言葉だけではなく、ちゃんとお金の準備もしてくれていたんですね。
A君はホッとしたと同時に、お母さんへの感謝の気持ちでいっぱいになりました。
晴れて、Z大進学に向けて猛チャージができます。

≪新しい塾の先生との話≫

そんなこんなで、勉強に一層力が入るA君。
今通っている塾は「受験のため」というよりも「高校での勉強のため」というタイプの塾でしたので、塾もかえることにしました。
新しい塾は、駅前のビルに入っている有名な塾です。
この塾からはZ大に受かっている子も毎年出ているようで、お母さんと一緒に入塾手続きに行きました。
そこで、塾の先生と軽い面談をすることになりました。
A君は、将来宇宙関係の仕事に就きたい事と、高校の先生からZ大学を進められたことを伝えました。
塾の先生は、

「確かに、Z大学は研究費用もたくさんあるし、設備も素晴らしい。宇宙の勉強をするには間違いない環境ではある。」

と、担任の先生が言っていたことは間違いないんだと、A君もお母さんも嬉しく思いました。

「ただ、簡単に入れる大学ではないぞ。これからかなり努力
しなきゃいかん。」

お母さんは少し心配になりましたが、A君には既に覚悟ができているようで、全く怖気づくこともなく
「大丈夫です!頑張ります!!」
と言い放ちました。
その言い方が先生にとっても頼もしかったようで、とても気に入ってもらえました。
この日の面談もとても良い雰囲気で終わりました。

≪毎日、勉強の日々≫

幸いにも、塾を変えたタイミングはまだ受験まで十分に時間があったので、それからA君は必死に勉強しました。
元々学校でも上位の成績だったA君なので、勉強は得意でした。
ただ、それ以上に目標となる大学が決まった事で勉強への取り組み方は、周りの受験生のお手本になるほどでした。
塾での成績もぐんぐん上がり、塾の先生も「頑張ってるな!」と良く話しかけてくれていました。

A君の生活は、昼は高校で勉強、夜は塾で授業もしくは自習、帰ってきても家で勉強と、お母さんは少し心配になりました。
ただ、ご飯は一緒に食べていますし、その時に勉強の事を聞いても、成績が上がったことや覚えることは楽しいなど、ポジティブな話ばかりなことと、何より明るい顔をしていたので、心配のし過ぎはやめようと、あまり口を出さないことにしました。

≪模試の話≫

大学受験には”模試”というものがあります。
その名の通り、模擬試験です。
全国の受験生が同じ試験を受けるので、
「その中で何位なのか」
「同じ大学を志望している人の中で何位で、それはその大学の募集人数からして受かりそうなのか」
を、割り出してくれます。
A君はその模試で、もちろんZ大学を第一志望に記入しました。
先生と相談し、せっかく受けるならと、第二志望や第三志望にも東京の大学名を記入しました。
その結果。。。


全てA判定!!!(合格率が最も高い判定)
塾の先生は大喜び!
もちろんお母さんも大喜び!!
高校の先生が一番大喜びっ!!!
みんな自身を持ってA君を本番の入試に送り出しました。

≪結果は不合格...≫

誰もが予想していなかった。
いや、塾の先生は予想していたかもしれません。
高校の先生も予想していたかもしれません。
でも、A君とお母さんは全く予想していませんでした。
もちろん全てが不合格なわけではなく、第二志望の大学には合格していました。
お母さんはなんと声をかけていいか迷いましたが、お母さんがくよくよしていてもしょうがありませんし、第二志望の大学でももちろん宇宙関係の仕事は目指せます。

「大丈夫よ!ちゃんとY大学(第二志望の大学)で宇宙の仕事目指そ!!」

その時のA君の顔は、生気の抜けたような、顔の色が白くなったのではないかと疑うような、目もくぼんでいるような、そんな顔だったと言います。
その顔を見てお母さんはふと感じました。




(宇宙の話をするのはいつぶりだ・・・??)



そして気づきました。



(この子の中で宇宙の仕事に就く事から、Z大学に行く事に、いつの間にか目標が変わってる・・・)



そうなんです。
どのタイミングなのかはわかりません。
徐々になのか、塾を変えてからすぐなのか、それは誰にもわかりません。
お母さんが夕食を食べながら(口を出すのはやめよう)と思った時、あのタイミングで間に合ったのかどうかもわかりません。
そうです、後悔してもしょうがないんです。
ただ、その後のA君は、
自分を”落ちこぼれ”だと決めつけ、塾にも高校にも行かず、ずっと部屋に閉じこもるようになりました。
お母さんが本当に危ない!と思ったのは、参考書を駐車場で燃やしていたことに気付いた時です。

お母さんはとてもとても心配になり、色んな所に連れ出したり、色んな人と話したりして、必死で昔のA君に戻ってくれるように願いしました。

その甲斐もあって、A君は高校には行くようになり、しっかり第二志望の大学にも進学しました。
高校の先生も塾の先生も安心していましたが、お母さんはどこか前のA君とは違うな、、、という感覚がぬぐい切れぬまま、東京に送り出しました。

あとがき:これが受験

高校3年生の人生を1発で決める。
これが受験です。
これは、世界から見るとレアな進学方法で、日本と韓国に色濃く出ている方式です。
A君のような高校生が生まれてしまうので、世界からは「受験戦争を辞めなさい」と注意されていますが、なかなか変わりません。
受験がなくなると困る人達がいて、その人たちの方が国にとって大事なんだと思います。

なぜこの話を「本当にあった進学の怖い話」と題したのか、
この話の「どこが本当に怖いのか」というと、

悪者が存在しないところです。

もしかしたら塾の先生が、宇宙という夢を大学進学にすり替える手助けをしてしまったのかもしれません。
もしかしたら高校の先生は、「うちのクラスからZ大進学者が出たらすごいぞ!」と、自分の評価を気にしていたかもしれません。

でも、お母さんはその2人は良くしてくれたと言います。
たぶん、本当にそうなんでしょう。
全員が、A君のためを思って、Z大学進学を応援していたんです。
こんなに頑張っているA君に、しかも結果が付いてきているA君に、
誰が、
「いやいや、そもそも宇宙が目的じゃないの?なんで「大学、大学」言ってんの?」
と、冷静に忠告できましょうか。
この結末が見えていれば、自分はキャリアカウンセラーとして、プロとして、この発言を本番試験を受ける前のA君に投げられたかもしれません。
この結末が見えていない時にA君に出会っていたら、そんな話をできていたか自信はありません。。。

プロですらそうなんですから、キャリアの面では素人な高校の先生も塾の先生も、そんな話ができるわけないんです。

本当の正解は何なのか。
今やっていることは”正解風”なだけで、本質からズレていないか。

自分のキャリアカウンセラーとしての働き方に大きな影響を与えた話でした。

だからこそ自分は、
進学について考える多くの保護者と話がしたい。

≪進学に強いキャリアコンサルタント≫というレアなスキルを持っている者として、やれるべきことがまだまだある。



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