CDのジャケ。写真は山梨は清里の線路。 こっちは12inch。黒マーブルと灰色マーブルがあります。ジャケはライアンが作りました。 この作品は2002年10月から2003年の3月にかけて断続的にレコーディングを行い、2003年の9月にリリースされました。 何者でもなかった自分たちが何かになろうとして、それぞれのバンド人生において初めてリリースした正式単独作品です。 リリースからもう20年以上経ってしまいましたが、それでも今もなお多くの方に聴いてもらえたり、言及してもらえたりと、大変幸せなことだと思います。 そんな中ですが、僕としてはあまりこの作品には触れないようにして過ごしてきました。 理由としてはもうすでに過去のバンドであること、作品のクオリティにあまり納得できておらず、今も冷静に振り返ることができないところなどです。 まあ端的に言うと振り返ると恥ずかしくて死にたくなるというパターンのそれです。 20年経過してもそんな感じです。 ただ、リリースしたからには自分がどう思おうと聴いてくれた方の気持ちが全てだと言う気持ちもありますし、好きでいてくれる方がいらっしゃるという事実には、ただただ感謝しかありません。 やっててよかったです。
活動していた当時は、自分の人生全てを賭けるくらいの気持ちでバンド活動に取り組んでいました。 あの頃得た経験は今も自分のその後の人生における土台になっていることは断言できます。 今回このnoteを書いているのは、今も多くの方が言及してくれている中で、自分として過去を振り返ってもいいのかなという気持ちがあったことと、リリースして間もない当時、セルフライナーを書いていてそれが未発表のままになっており、誰かに読んでもらうなら今がそのタイミングなのかなと思ったからです。
ストレージの奥底から引っ張り出してきたそれは、40代半ばを過ぎた自分が読むにはなかなか辛いところもありました。 当然考えが変化している点もありますが、今の自分に通じるものとして特に削除はせずに、言い回しなどを少しだけ手直しして以下に転記します。 読みたい方はどうぞご自由に。 また、I've come for your childrenというレーベルをやっていたライアンがbandcampを作ってくれているので、当時知らなくてまだ未聴と言う方はそちらで聴いてみてください。
https://meatcubelabel.bandcamp.com/album/the-absent-trail-of-an-echo-and-my-future-plagued-by-surrender
ライナーノートに寄せて こんにちは。ぼくはgauge means nothingというバンドでボーカルとベースをやっている笠沼裕一といいます。 このたび(といっても結構前だけど)gauge means nothingの単独のCDと12'epが発売になりました。発売になってから割と時間が経っているんですが、ありがたいことにたくさんの方に聴いてもらえて、自分たちの残した足跡について反応がもらえるということは非常にうれしい限りです。この場を借りてどうもありがとうございます。 ここではぼくなりに自分たちの作品の解説をしてみようと思います。曲はみんなで作っていますが、特に歌詞はほとんどぼくが書いたので、歌詞の解説もしたいと思ったのが今回ライナーを書くに至った大きな動機の一つです。 それでははじめます。 レコーディングメンバー カサヌマ ユウイチ(ボーカル、ベース) ヤマモト ケンタ(ボーカル、ギターシンセ) カミヤ タマオ(ボーカル、合いの手) タナカ ユウキ(ボーカル、ギター) クリタ ヒロアキ(ギター) サトウ ヒデカズ(ドラム) 1.ピルグリム この曲はstand aloneっていう名前で活動してたころからあった曲で、この曲を作ったときのメンバーは今はぼくしかいないんですが、でも形にしたかったのでレコーディングすることにしました。曲ができたのは2000年の12月で、自分たちの初企画で初めてライブでやりましたが。このときはめちゃくちゃ緊張したのを覚えています。 このころは大学の部室でぼくがドラムを叩いてギター二人と曲を作るというやり方でした。当時はメタリックなバンドが好きだったので、この曲もそういうリフが目立ちます。最後のドラマチックな進行はぼくが作りましたが、今ではちょっと恥ずかしいくらいに思ってしまいます。 イントロは曲を作った当時はもっとメタリックなアレンジでライブをやっていましたが、あるときから曲の最後のパートを利用することにしました。 歌詞は曲ができたときに書いたもので、その後時を経るにつれて少しずつ書き直していて、大きな内容は変わっていませんが、例えば仕事、学校やその他の場所で力(例えば暴力や権力とか経済力とか)を持った人とか、世論、宗教、他にもたくさんあると思うけど、自分の力でどうすることもできないそんな大きな力の流れに飲み込まれてしまい、その流れに対して疑問をもつことすらなく、別にそんなことに疑問をもたなくても明日は普通にやってくるけど、それは一体誰のコントロールした未来で、それをもしかして無条件で正しいことなんだと知らずの内に思い込まされてるんじゃないかって思ってて、気づかなくちゃいけないんじゃないかという内容の歌詞。そういうものに対して疑ってみたり、悩んでみたりしなくちゃいけないのではという葛藤の歌詞です。自分たちの未来は誰かが作ってくれるんじゃなくて、自分たちの行動から始まるんだと思って書きました。ごくパーソナルなことからもっとマクロなことまで。 2.ぼくのメガネはゆがんだ風景をぼくの目に映し出す この曲はku recordsのロープライスコンピレーションCD-R「my notebook is full of scribbles」にも収録された曲で、テイクは同じですが、ぼくのボーカルを録り直して、ミックスも違います。このレコーディングの中では一番新しい曲です。ギターの田中君がドラムパターンとギターのフレーズをほぼすべて作ってきて、それから各自のパートを作り、歌を乗せました。最後の半音ずつ下がっていくフレーズや、その少し前のハモリボーカルが気に入ってます。半音ずつ下がっていくところのボーカルの掛け合いの歌詞もうまく当てはまってると思います。 歌詞は直接的に言及はしていないけど武装による防衛について。やられる可能性があるからこっちもミサイルを持つなんて考えはどうにかならないのかなと思う。そんなこと自分の家族が、大切な人がどこかの国の軍隊に殺されたりしてもそう思えるのかって言う人もいると思うし、それははっきり言ってそんなことになってみないとわからないけど、そこでひるみたくない。それを避けるための手段が暴力や戦争以外にもあると思うし、そう信じたい。それを見つけなくちゃいけない。必要だと考えるのは「安全」じゃなくて「平和」。 余談ですが、曲作り当初、この曲は作曲者の田中ぼんち君によって『メガネ弁当』という仮の曲名がつけられていました。ぼくは知らないんですが、「すごいよマサルさん!」から取ったそうで多分意味はありません。「ぼくのメガネはゆがんだ風景をぼくの目に映し出す」はそこから無理やり考えたものです。割と気に入ってます。 さらに余談ですが、この曲だけ前述のコンピレーション参加のために先行してミックスしていたのですが、隣のスタジオではAVの撮影が行われていました。ぼくはもちろん現場を見ていないですが、なんかバンド関連の内容だったらしいです。ミックスよりも早く撮影は終了したようで、撮影スタッフのみなさんは一生懸命仕事してました。物作りの姿勢を見た気がします。 3.ぼくは美化委員 この曲はもともとの曲は田中君がほぼ全部の展開を作ってきていて、一回それでライブもやったんですが、最初のほうのリフを残してあとはみんなですべて作り直しました。このころは府中市にある生涯学習センターでスタジオよく入っていて、宿泊施設も完備していたのでそこに連休で3泊くらいして練習や曲作りをしていたんですね。最初の歌メロのあとに変拍子のフレーズが出てきますが、そこはぼくと田中君で曲作り合宿中に朝4時ごろ作った箇所です。料金は確かスタジオ13時間と1泊2日で一人4000円くらいだったかな?忘れてしまいましたが、激安でした。ご飯はついてないですが、ガスト行ったりレトルトのカレーを湯煎してパンで食べたりしていました。 曲の解説に戻りますが、中盤のメロディとストリングスがいいですね。最後のダンサブルなパートのリズムとピアノのアレンジも気に入ってます。 歌詞は「メガネ」とだいたい同じ時期に書きましたが、図らずも両方ともタイトルに「ぼく」がついていて、曲順を決めてタイトルを並べたときにちょっと変かなと気にはしたんですが、そのままにしました。内容は「ピルグリム」と「メガネ」を合体させたような感じですが、世界で起きているあらゆる理不尽について、知らないことは言い訳にならないよってことと、でもよく「たいした知識もないのに軽々しく意見を言うな」って言葉を耳にしたことがあると思うんですけど、知識がないから意見を言わないというのはまた違うと思うという内容です。「ぼくは美化委員」というフレーズはぼくの生涯のアイドルであるとあるバンドのインタビューの発言から取ってちょこっと変えたものです。 4.黒く染まる この曲は「ピルグリム」と同じでstand aloneのときに作った曲で、やっぱりぼくがドラムをやりながら曲作りしたので、似たような曲構成です。switch styleの「....to infinity」と可燃引火のデモがかなり好きな時期だったので、そのあたりの影響が感じられます。イントロのアルペジオがラルクアンシエルにおんなじようなフレーズがあると指摘を受けてびっくり。曲は聴いたことないんですけど。ちなみにそこを作ったのは前のギターのフルカワノリオくんです。中盤でのギターの単弦フレーズもspike shoesに似たフレーズがあって、でもこれもspike shoesのその曲が収録された音源が出る前からあったフレーズだったんで偶然です。直そうかなと思いましたが、そのままにしています。全般的にギターシンセのフレーズが気に入ってます。歌メロもいいとこ多いですね。 この曲の歌詞は大学のときの仲のよかった人が死んでしまったときのことを書きました。ぼくはその人と仲がよくて、その人が突然亡くなってショックでお葬式に行っても今まで体験したことのない気持ちの行き場をどう整理したらいいかわからなかったという戸惑いの内容です。書いたときは表現が稚拙で気に入らなくて、今も恥ずかしいけど足跡を残すのも大事と思ってそのままにしてあります。 5.右手 gauge means nothingに名前が変わってから初めてできた曲。CDには入ってないですが、12インチのほうに「ピルグリム」と入れ違いで入っています。falling leaves recordsというレーベルから出た森林保護活動ベネフィットコンピレーション「inspiration from forest」にも収録されています。12インチのほうにはイントロ的なものとしてSEを入れました。それまであまり使わなかった不協和音を使ったり、変拍子も入れたり当時の自分たちとしては割とがんばった曲です。この曲のアレンジは3バージョンあって、このレコーディングされたのはバージョン2のものを田中君がアレンジをして作られたやつです。あとのバージョン1、3とは後半の展開が違いました。別のバージョンもレコーディングしてなんかの形で出すって話もだいぶ前にはあったんですが、今ではそれもなさそうです。 歌詞は自分のもとから離れていく人がいて、その人のこととそれについての自分の気持ちを書きました。「あなたがここにいて欲しい」というフレーズはもちろんピンクフロイドから。この曲はめちゃくちゃ大好きってことではないんですが、歌詞の内容が好きで、書こうとしたこともおおまかなところは似ていたので引用させてもらいました。今さらどうしようもない、取り返しのつかないことを思い出してみてもなんにもならないのはわかっているんですが、「あのときこうしていれば……」って思うたびに後悔と恥ずかしさのあまり消えてなくなりたいと思います。「すべては遅すぎた」というフレーズにその気持ちをこめました。 曲のタイトルはイントロがライトハンドで始まることから「ライトハンド」と仮タイトルがついていて、その後そのまま「右手」にしました。深い意味はありません。
2003年12月作成のライナーノートより