数々の名作オーディオドラマを送り出してきたあのSHINE de SHOWが、「SHINE de SHOW+シャイン・デ・ショー・プラス 」として戻ってきました! これまで以上に楽しくバラエティに富んだ作品を意欲的に作っていきたいと思っています。 ぜひお気に入りに登録のうえ、ご愛聴いただければさいわいです。 よろしくお願いします! ※旧SHINE de SHOWはこちら から
さて今回の作品は、会いたくないのにどうしても会ってしまう若い男女のお話。 エリと陸人りくと はマッチングアプリを介して出会うのですが、エリは陸人と会いたくない事情がありました。 どうしてなのか最初はわからなかった陸人ですが、驚くべき事実を知り、陸人の見る景色はガラリと変わります。 そして二人は最後に究極の決断をすることになるのですが……
悲しくかつ壮大な二人の運命の物語に、ぜひ涙してください!
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▶ジャンル :ロマンチック
▶出演
▶スタッフ
『ふたたび逢うはずのない君と』シナリオ 登場人物 エリ(22) 陸人りくと (22) エリ「短いもんですね、桜」 睦人「あっという間でしたね」 エリ「もう葉っぱばっかり」 睦人「でも人が少なくてよかったじゃないですか」 エリ「こんな葉っぱばっかり見てもしょうがなくないですか」 睦人「まあ……たしかに」 エリ「寒いし」 睦人「昔はもっと暖かかったらしいですよ。桜の時期」 エリ「はあ」 睦人「地球温暖化ってやつで──」 エリ「そんなことどうでもいいんです!」 睦人「え?」 エリ「もしかして、あなたと一緒に桜見たかったなー、残念だわー、なんて私が思ってるとでも?」 睦人「え? 違うんですか」 エリ「ていうか、どういうつもりですか? あなた」 睦人「あの、僕はただ、あなたと桜を見たくて……」 エリ「何が目的なんですか」 睦人「目的って?」 エリ「説明しなきゃいけないんですか?」 睦人「あの……何か怒ってます? エリさん」 エリ「気軽に名前呼ばないでください!」 睦人「すいません」 エリ「どうしてあなた、ここにいるんですか!」 睦人「そりゃエリさんに会いに来たからでしょ」 エリ「どうやって」 睦人「なんか使い方間違ってました?」 エリ「何がですか」 睦人「アプリの」 エリ「間違ってないでしょ。マッチングアプリなんだから。だから今会ってるんでしょ!」 睦人「ですよね」 エリ「とにかく説明してください! どういうことか」 睦人「……また相手が僕だったってことですか?」 エリ「そうです」 陸人「それはもちろん、エリさんに会いたかったから」 エリ「じゃなくて! あなた、別人になりすましてたでしょ」 睦人「ニックネームを変えたことでしょうか」 エリ「名前だけじゃないでしょ!」 睦人「自己紹介は変えてないけど……」 エリ「全然別人でしたよ」 睦人「そうですか?」 エリ「私がそう思ったんだから」 睦人「そうか……」 エリ「詐欺じゃないですか!」 睦人「詐欺って言い方はちょっと」 エリ「私、お相手の方の仕事や経歴とかはどうでもよくて、大事なのは性格の相性なんです!」 睦人「はい」 エリ「もちろん前回選んだあなたのことは除外するようにしてました」 睦人「そうですか」 エリ「なのになんでまたあなたと会うわけ?」 睦人「内容は変えてないつもりだけど」 エリ「変わってましたよ! 全然」 睦人「書き方はね。でも中身は変えてないです」 エリ「中身?」 睦人「短所か長所かの捉え方の違いだから」 エリ「捉え方」 睦人「たとえば、落ち着きがないという短所は、行動力があるという長所に書き換えただけだし、粘り強いという長所は、諦めが悪いという短所に書き換えただけだし」 エリ「……なるほど」 睦人「ね、だからウソはついてないんです」 エリ「でも──」 睦人「逆に教えてほしいんですけど。僕の何が気に入らないんでしょうか」 エリ「は?」 睦人「わからないんですよ。僕のことが気に入らないんなら、どうして二度もエリさんに会えたんですか? それって相性がいいってことじゃないんですか?」 エリ「……必要ないでしょ」 睦人「え?」 エリ「自分が会いたくない人に会いたくない理由を説明する必要あります?」 睦人「そうだけど……知りたいから」 エリ「そんなのあなたの勝手でしょ」 睦人「僕ね、あなたのこと好きなんです。そういう理由じゃだめですか?」 エリ「好きなんて簡単に言わないでください」 睦人「前回会った時、僕の顔を見た瞬間、クルッて踵を返して逃げたじゃないですか」 エリ「会いたくなかったからです」 睦人「会いたいから会いに来たのに、会った瞬間に会いたくなくなったんですか?」 エリ「なんかそう思ったんです」 睦人「でもまた今日、僕を別の男だと思って、会いたくてここに来たら僕だったわけでしょ?」 エリ「気づかなかった私も私だけど」 睦人「てことは、僕たち相性いいんじゃないですか?」 エリ「(叫ぶ)だからだめなのっ!」 睦人「え?」 エリ「私はあなたと会ってはいけないの!」 睦人「何を言ってんですか。誰が決めたんですか」 エリ「それは言えない」 睦人「教えてくれてもいいじゃないですか。こんな一方的に意味のわからないこと言われて。昨日までいい感じでチャットしてて突然なんなんですか」 エリ「言えないんです!」 睦人「じゃあたとえば、わかりましたさよならと言って別れて、それでまた次にもう一回会ったとしたらどうします?」 エリ「それは……」 睦人「二度あることはって言うでしょ……って、さすがにないか。あははは」 エリ「……」 睦人「でも、三度目あったらさすがに運命だと思ってくれますか。逆に試してみようかな」 エリ「あの」 睦人「はい」 エリ「あのですね……」 睦人「はい」 エリ「16回目なんです」 睦人「16回目。って何ですか」 エリ「私があなたに会うのがです。睦人さん、あなたとは2回目じゃないんです」 睦人「……えーっ? 16回目って。え、え、前から僕のこと知ってたってことですか?」 エリ「そう……だけど、そうじゃないというか……」 睦人「なになにどういう?」 エリ「説明ができないんです」 睦人「これまで15回はどこで? いつ?」 エリ「中学とか。高校とか。いろいろ」 睦人「そんなに? いや、同い年だとしてもそんな偶然あります? えーっ!」 エリ「うそじゃないの。ほんとなの」 睦人「え、そんな会っててなんで僕は知らないんですか」 エリ「それは……私が避けてきたから」 睦人「なんで」 エリ「言えません」 睦人「どうしてそこから先は言えないになるんですか」 エリ「だから言えないんです!」 睦人「……17回目、また会ったらどうするんですか」 エリ「それは……」 睦人「それは運命って言えるんじゃないですか?」 エリ「……そうですね……そうなんですよ……」 睦人「え?」 エリ「何度もあなたを避けようとしてきた。でも、あなたは何度も何度も何度も何度も私の前に現れる!」 睦人「え……」 エリ「私の気持ち、わからないでしょうね」 睦人「そんなに会いたくないってことですか……」 エリ「違いますよ。逆ですよ!」 睦人「逆? 逆……って?」 エリ「いいですもう」 睦人「え……?」 エリ「専攻、量子力学ですよね」 睦人「僕の? 春から通ってる大学院の? なんです急に」 エリ「ですよね」 陸人「なんで知ってるんです? プロフィールには書いてないけど」 エリ「どうしてそこに進学したんですか?」 陸人「急に僕に興味が出てきたんですか?」 エリ「違います。理由を話してるんです」 陸人「え?」 エリ「理由、知りたいんでしょ」 陸人「それは、将来学者になりたいと思って。尊敬する学者がアメリカにいて──」 エリ「でも、学者にはなれないんです」 陸人「え? なんでそんなこと」 エリ「陸人さんは、宇宙を目指す人になるんです」 陸人「宇宙?」 エリ「私ね、あなたの未来を知ってるんです」 睦人「え?」 エリ「未来に起こることがわかるんです」 睦人「……どういう……?」 エリ「ふふっ……頭おかしくなったと思ったでしょ。ふふふ……(笑い止まらない)」 睦人「大丈夫ですか?」 エリ「気持ち悪いと思うなら思ってください。そのほうがスッキリする」 睦人「何を言い出すんですか」 エリ「私はだから、私とあなたが出会ったことでどうなるか、その未来も知ってるんです」 睦人「どうなるんですか」 エリ「今は2040年ですよね。今からちょうど45年後に、地球は滅亡します」 睦人「はあ?」 エリ「その原因が、私とあなたが出会うことなんです」 睦人「な、なんか宗教的な予言的ななんかですか?」 エリ「どっちかというと、SF的な?」 睦人「SF?」 エリ「ああもう頭のおかしな人間だと思われてもいい。自分でも信じてなかったんだから信じてもらえなくてもいい」 睦人「え、ちょっと待って──」 エリ「私の娘がね、未来から来たんです」 睦人「え? 話が全然入ってこない……」 エリ「私が幼い時に。私の娘という人が45年後の未来から過去に戻ってきたんです」 睦人「娘が? 未来から来た自分の娘に会ったんですか?」 エリ「私は会ってなくて母から聞いた話。娘は、未来になにが起きるのかを私の母に伝えに来たんです。それが、地球が滅亡するって話だったんです」 睦人「えーっと……」 エリ「どうしてそれを母に伝えに来たかというと、それは私に関することだったから。つまり、私とあなたを出会わないようにすれば、地球の滅亡する未来を変えることができる」 陸人「なんてこと……」 エリ「それは成功したかに見えたんです。でも結局未来は修正されるんです」 睦人「ちょっと待ってください」 エリ「それがつまり、私とあなたが何度でも出会ってしまうということ」 睦人「……一回整理してもいいですか」 エリ「どうぞ」 睦人「つまり、45年後に地球が滅亡するんですよね。それにはエリさんが関与してると。そういうことですか?」 エリ「だから、私とあなたです」 睦人「エリさんと僕……」 エリ「(おかしそうに)何だよこの話、でしょ?」 睦人「……」 エリ「やめてくださいよそんな顔……あははははは」 陸人「どうしてエリさんと僕が出会って地球が滅亡するんですか」 エリ「冗談ですよ冗談! 真に受けないでください」 陸人「信じましたよ」 エリ「え?」 睦人「……信じました。冗談言ってるふうには……見えないから。でもどうして僕とエリさんが出会うことが地球滅亡につながるんですか」 エリ「それは……」 陸人「でもともかく、少なくとも2085年にはタイムリープできる何らかの装置ができてるってことですよね」 エリ「そ、そうなのかな」 睦人「僕の専攻知ってるんでしょ」 エリ「量子力学?」 エリ「その僕が教わる教授の専門が、量子トンネリングの研究なんです」 エリ「量子トン……何?」 睦人「量子粒子がエネルギーバリアを瞬間的に通過するということを時間の壁に応用することで、過去や未来への──」 エリ「ちょ、ちょっとごめんなさい……」 睦人「簡単に言うのって難しいな……」 エリ「もしかして……タイムマシンがほんとにできるってことですか?」 睦人「そう! 実際にはまだできてない。でも、その教授が去年発表した論文が、この世界では大ニュースになって」 エリ「全然知らなかった」 睦人「一般の人は知らないと思う。実用まで何年かかるわからないけど、タイムリープ装置がちょっと現実的になってきた。そんな論文なんです」 エリ「うそ……」 睦人「だから、全然信じられます。エリさんの話」 エリ「まさか……」 睦人「未来を変えようとしても未来が修正されてしまうんですよね。それで僕とエリさんが何度でも出会う。そういうことでしょ?」 エリ「こんなにすんなり理解されるとは……」 睦人「(興奮)そうなのか……すごいな。未来に何が起こるのか知りたいけど……ああ、でも知らないほうが」 エリ「ど、どうかしました?」 睦人「あ、興奮してしまいました。ほんとにできるんだって」 エリ「ああ。タイムリープ」 睦人「エリさんのお母さんは、未来から過去に戻ってきた自分の孫に会ったわけですよね」 エリ「そうらしいです」 睦人「そこでタイムバラドックスが起こる。でも時間は修正されてしまうんだ」 エリ「よくわかんないけど……」 睦人「うーん……」 エリ「でも、じゃあ話が早いですね」 睦人「え?」 エリ「私の言ってる意味、わかったでしょ?」 睦人「はい」 エリ「何度も何度もあなたに会っているうちに、私やっぱり運命からは逃れられないんだって思ってきた。会うたびにあなたのことがどんどん好きになっていく自分に気づいた」 睦人「え……」 エリ「でも、あなたと一緒になることはできないんです。あなたとの出会いが、地球を滅亡させるから」 陸人「滅亡って、一体何が起こるんですか」 エリ「詳しいことは亡くなった母から聞いてないんです。でも、私とあなたが出会ったことが、宇宙で何かが起きるきっかけになって、それが地球を滅亡させることにつながるんだって」 陸人「……」 エリ「だからそれは厳しく育てられました。行動範囲もすごく制限されて、あなたと出会わないように。私の行動が、選択が間違わないように、細心の注意を払って生きてきました」 睦人「はい」 エリ「これまでずっと努力してきたんです、私。地球のために」 睦人「ええ」 エリ「だから、それを無駄にしたくないんです。私の人生なんだったのってことになるから」 睦人「わかります」 エリ「あなたと出会って一緒になったほうが楽かもしれない。いやほんとはそうしたい。けど、自分の生きたいような人生を、私はもう生きることができないんです」 陸人「エリさん……」 エリ「未来から来た私の娘も生まれないことになります」 陸人「どうして?」 エリ「それは……」 陸人「もしかして……」 エリ「そう。私とあなたの娘なんです!」 睦人「そんな……」 エリ「でもそれでいいんです。だって、地球の滅亡を止めようとして、私とあなたの娘は過去に戻ってくる。地球の滅亡を止めようとしてですよ。そんな未来、どう思います?」 睦人「……」 エリ「誰も幸せになってないじゃないですか!」 睦人「そうですね……」 エリ「ごめんなさい……」 睦人「……よくわかりました」 エリ「……」 睦人「……」 エリ「それじゃ」 睦人「……もしも」 エリ「え?」 睦人「もしも、また会ったら……」 エリ「ううん……会わないんです」 睦人「会わないんですね」 エリ「会いません」 陸人「うん」 エリ「さようなら」 睦人「……さようなら」 足音去っていく。 睦人「待って!」 エリ「え?」 睦人「待ってください」 エリ「まだ何か」 睦人「つぼみが!」 エリ「つぼみ?」 睦人「その枝」 エリ「枝……あ、つぼみ」 睦人「そうだよ……」 エリ「え?」 睦人「そうだ。そうなんだよ。ね」 エリ「なんですか」 睦人「一緒に、生きませんか」 エリ「は?」 睦人「一緒に」 エリ「何を言い出すんです」 睦人「未来から来た娘って、いつから来たんですか?」 エリ「だから2085年から」 睦人「そうじゃなく。地球が滅亡してから過去に来たわけじゃないでしょ?」 エリ「当たり前じゃないですか。まだ地球があるから戻ってこれたんだから」 睦人「それですよ!」 エリ「え?」 睦人「エリさんも知らない未来がある」 エリ「知らない未来?」 睦人「あなたと僕が出会ったことで、2085年に人類は地球ごと滅亡するのかもしれない。でも、ぼくらの娘は地球がまだ滅亡してない未来から来た。だからほんとにそのあと滅亡したかどうか誰も見てないんでしょ?」 エリ「それは……」 睦人「エリさんが知ってる未来と、その先の知らない未来もあるんですよ」 エリ「……」 陸人「もう十分エリさんはがんばりましたよ」 エリ「え……」 陸人「何が起こるかを知ってしまったばっかりに、ひとりで地球の未来を背負ってがんばってきたんでしょ」 エリ「はい」 陸人「でも、もう一人だけで背負う必要はないんですよ」 エリ「……」 陸人「そうならないように二人で考えるんです」 エリ「二人で?」 睦人「だから、ね。一緒に生きましょう」 エリ「睦人さん……」 睦人「今日からもうあなたは一人じゃないんです」 エリ「地球を滅亡させるかもしれないんですよ」 睦人「はい」 エリ「それでも?」 睦人「まだ時間はあります」 エリ「時間……」 陸人「考えましょう」 エリ「未来を?」 睦人「人類の未来を」 エリ「……」 睦人「知らないつぼみが膨らむかもしれない」 エリ「はい……」 睦人「ね」 エリ「咲くでしょうか」 睦人「わかりません」 エリ「そうですね」 〈終〉
シナリオの著作権は、山本憲司に帰属します。 無許可での転載・複製・改変等の行為は固く禁じます。 このシナリオを使用しての音声・映像作品の制作はご自由にどうぞ。 ただし、以下のクレジットを表記してください。(作品内、もしくは詳細欄など)【脚本:山本憲司】 オリジナルシナリオへのリンク もお願いします。 また、作品リンク等をお問い合わせフォーム よりお知らせください。
*番組紹介*オーディオドラマシアター『SHINE de SHOW+シャイン・デ・ショー・プラス 』 コントから重厚なドラマ、戦慄のホラーまで、多彩なジャンルの新作オーディオドラマを配信中! 幅広い年齢の声優陣がさまざまなキャラクターを演じ分ける「劇団シャイン」は、総合映像プロダクションで働く社員たちが立ち上げた声優ユニット。 豊富な人生経験から生み出される声のエンタメが、あなたのちょっとした隙間時間を豊かに彩ります!