孤独でありながら自立している。彷徨いながらも行先を決めている。儚さの裏に見える自信。渕上舞さんと瀬田宗次郎のJourney

前書き

しばらくご無沙汰でしたが、コロナが再び感染拡大して自宅待機を強いられているため、暇な時間が増えてしまいました。そのため、また久々に渕上舞さんの楽曲考察しようとでも思った次第です。

今回、考察メモしておこうと思うのは、渕上舞さん作詞曲の類歌についてです。

類歌とは何ぞや?と思われるでしょう。よく和歌の研究では使われる用語ですが、その和歌に似ている過去の和歌、つまるところ、その和歌に影響を与えた歌というところになります。

『徒然草』で有名な兼好法師は「衣うつ夜寒の袖やしほるらんあか月露の深草の里」という歌を詠んでいます。深草とは山城国、つまり今の京都の地名でもあり歌枕でもありますが、この歌の鑑賞によると兼好法師は女性の元に通っていたと解釈されています。それはなぜでしょう?

実は平安時代に成立したとされる『伊勢物語』に、この深草において男女の恋路の遣り取りがあり、そのシーンの中で歌の贈答があります。おそらく兼好法師はその深草の話、その贈答歌に影響されてかのごとく歌を詠んだのではないかと言われています。もとい、伊勢物語の深草のシーンに影響された歌を詠んだということは、彼も恋愛している?と捉えられるわけです。



さて、前置きが長くなったので、早速本題に入りたいと思います。

今回、考察に及ばんとするのは、渕上舞さんのミニアルバム曲「Journey」と、『るろうに剣心』のキャラクター、瀬田宗次郎のキャラクターソング「Journey」です。


渕上舞さんと瀬田宗次郎の関係性

(本来画像など貼り付けておくべきですが、使っていい画像が不明なので引用しません。)


渕上舞さんの初恋(?)が、このるろ剣の瀬田宗次郎であるということは最近ラジオを聞いていると知られ始めていることかと思います。

随分前になりますが、瀬田宗次郎の中の人たる日高のり子さんともラジオでお会いし、珍しく公私混同な姿を見せていた舞さん。

先日のラジオにおいても、この瀬田宗次郎のキャラソンの話題をしていました。そこで話題に挙がったのが、瀬田宗次郎の「Journey」です。

「Journey」と聞いて思いつくのはこちら。


さて、どうして今回この2曲を取り上げたのかはだいたいわかっていただけたことかと思います。前置きがどんどん長くなってしまうので本題に入りましょう。


両者の「Journey」においての注目点

ひとまず瀬田宗次郎くんの「Journey」の注目すべきという歌詞を挙げておきます。

①「僕は、僕の場所へゆこう まだ、なにも見えないけれど」
②「もう涙流すのもきっと怖くないよ」
③「ただ風の指す場所へたったひとりで歩いてゆこう」

この孤独感を見せつつも、流されているようでしっかりと行き先を見据えているような印象を受けるこの歌詞。渕上舞さんの「Journey」も同様の印象を受けると思っています。

では具体的に渕上さんの「Journey」ではどの部分がこの歌詞に対応するでしょうか?

(1)もっともっともっと簡単で
もう一歩踏み出せば
もうそこはゴールだと思ってた
行き場を探して彷徨い続ける
(2)「悲しくて泣いちゃう日もあるけれど
遠回りをしたら幸せの四つ葉のクローバー
ほら見つけられたよ」
(3)「今はもう胸を張って立てるから大丈夫
向かい風にだって流されないよ」


注目点から見える両者の「Journey」のコンセプト

瀬田宗次郎の①と渕上舞さんの(1)の歌詞。瀬田君は一見自立しているようで迷っている雰囲気を思わせ、渕上さんは確信した先がゴールではなく迷い続けています。

この①と(1)で見えるのは、両方の「Journey」、「旅」が「彷徨っているその先」であることがわかるのです。


次に、②と(2)です。こちらも孤独感を思わせ、かつ泣きそうな不安を抱えていることが思えます。

しかし、二人ともその涙を流すことを克服しているように見えます。特に渕上さんは、泣いてしまって悲しい日があっても、幸せのクローバーを見つけたことで相殺させるということをしています。


次に③と(3)です。

こちらは、風の指示するままに向かう瀬田くんに対し、渕上さんは風に流されないようにしていますが、向かい風という逆境に対してであり、自分の往く道を遮るものはないという表れです。これは「通れない道はない」という歌詞からも見えます。

では瀬田くんは流されるままなのでしょうか?そうとも言えません。①で自分の行く場所へ行くと宣言しており、更に③の中では「たったひとりで」という言葉が見え、少なくとも一人で自立していけるようなものを感じさせます。



そして双方の曲には、意外と見えない、もう一人の存在が見えます。

瀬田くんについては「あの人がくれた」という歌詞。

渕上さんについては「あなたが手を引いてくれたから」という歌詞。

瀬田くんの言うあの人とは、この曲の冒頭を聞いてくれたらだいたいその人なのではないかと想像できますが、そうではなかったらごめんなさいるろ剣のファンの方。

渕上さんのいう「あなた」については謎です。突き詰めたいという気持ちもなくはないですが、なんとなくそっとしておきたい気持ちもあります。意外と、「あなたたち」(彼女が今まで演じてきたキャラたち)なのかもしれません。


まとめ

だいたいざっとではありますが、ここまで述べた上で簡潔にまとめるならば、

孤独でありながら自立している。彷徨いながらも行先を決めている。儚さの裏に見える自信。


といったところでしょうか。表裏のようなまとめになっていますが、この二つの曲はどちらも表っつらだけ見れば非常にはかなく、孤独で彷徨いそうな印象を受けます。

しかし、裏側を見えば非常に力強く、自立し(そして誰かの存在がいる)、行先をはっきりと決めている印象を受けます。

ネガティブなようでポジティブさが見える。双方ともそんな曲になっているのではないでしょうか。


今回、類歌研究ということで両曲を比較してみましたが、どちらかというと渕上さんの作曲自体のスタンスに影響を与えていそうな瀬田宗次郎くんの「Journey」であるなと思いました。そこに、渕上さんが数々演じてきたキャラたちとの思い出も込められている。そんなところかと思います。


また、次回、思いついたら色々考察してみようと思います。


追記

「Journey」と聞くと、他にも同じ名前の歌はあると思うので、念のためにそれらをあげておきます。

Hey! Say! JUMP!

https://www.uta-net.com/song/254435/


Mrs.GREEN APPLE

https://www.uta-net.com/song/221345/



ZAQ

https://www.uta-net.com/song/242240/



どれをとっても、渕上さんや瀬田宗次郎のものとは毛色が違うように見えます。エネルギッシュであったり、冒険にわくわくしていたり、二人きりの旅を楽しんでいたり…

こう見ると渕上さんのJourneyは瀬田宗次郎のJourneyに影響されたのか、と考えてしまいますね。

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