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実例:コミュニティで「人が動く」とき

はじめに

コミュニティの育成・活性化を支援している立場から、過去に自分が手掛けた手法についてアウトプットしていきます。コミュニティのご相談を受ける際に、議論の「土台」になれば幸いです。今回は、コミュニティというあくまで「任意」「個人」レベルの活動を盛り上げていくために必要な「人が動く」ことについて考えることにしました。前回の「コミュニティによる市場づくり」もよろしければご覧ください。

衝撃の言葉

それは、とても辛い言葉でした。

「疲れた」
「利用された」

あるITコミュニティが軌道に乗り、いわゆる「自走」している状態になってきたと考えていたときに聞いた自分に対しての「ネガティブな声」でした。幸いにもコア運営メンバーの方から「あなたのことを、悪く言っている人が居ましたよ」という形で伝えてもらったにせよ、ショックを受けました。

自分の「善」は相手の「悪」だった

からです。当時は、全国各地で多数のイベントやMeetupを行っていました。当時勤めていた会社から予算を捻出し、コア運営メンバーの旅費を負担していたことや、業界内でも「名」が売れることで個人ブランディングにも貢献できると考えて様々な人を「巻き込んで」いたのです。

反省と変化

善と思って「巻き込み」をやってきたことが、裏目に出てしまいました。自分では(相手に対して)「善かれ」と考えていたことが、実は相手にとっては「悪」だったことを知ったのです。今考えてみれば、確かに「やりすぎ」でした。Meetupやりすぎ男、とまで言われたほどです。

当たりまえのことですが「相手」は「自分」ではありません。自分と同じ価値観で相手を振り回してはいけないとこのような経験から、以後のコミュニティづくりにおいては「相手のペース」を特に意識するようにしました。

挑戦と成功

反省のうえで「相手のペース」を最大限、考える。でも、コミュニティ運営のなかで必要であると判断したら「お願い」をしてみる。そうやって、

つかず、離れず

の距離感を保ちながら新たな「挑戦」を行いました。つまり、いままでは自分のペースだけ「力ずく」での

鳴かせてみようホトトギス

だったアプローチをやめて、

鳴くまで待とうホトトギス

に変えたのです。お願いはしても「催促」はしない、という姿勢にしました。それは、自分の性質を客観的に(改めて)知り、それには良い面も悪い面もあるということを意識することでもあります。例えば、

(良い面)⇔(悪い面)
決断が早い⇔熟慮しない
熱量が高い⇔他人は迷惑

などです。コミュニティという「任意」「個人」レベルの活動において「お願い」を強制することはできないのです。あくまで、お願いはしても「催促」はしないということが相手にとっても心理的負担が少ないといえます。そもそも、人は「お願いをされた時点で大きな負担」であるケースも考えられるからです。

いっぽうこの「鳴くまで待とう」アプローチにした場合、運営上で支障がでることがあります。それはイベント(Meetupなど)の「開催日が決定している」テーマの関係で「ぜひこの人(企業)に登壇してもらいたい」などの背景がある場合です。そんな場合、どのようにしたら良いでしょうか。

「人が動く」とき

人が動くには、どのような背景があるかを改めて考えてみることにします。

・業務の命令(仕事)
・金品の授受(贈収賄)
・信頼の交換(コミュニティ)

企業の「営業行為」が厳しく糾弾されるコミュニティは、信頼の交換の場であって、いわばおカネで交換できない価値の”取引所”のような存在です。たとえば、イベント会場の提供について。「会社の宣伝になるから」「採用につながるから」といった「金銭的な価値を帯びた動機」があるにせよ、その多くは

「コミュニティ」に貢献したいから

という、より上の視座で担当者の方が内部の利害関係を調整してくれる場合が多いものです。コミュニティとは、会社や立場を超えたところで「おカネ以外」の価値でつながる、理想郷(まほろば)なのです。

「人を動かす」とき

より具体的に自身の例で「人を動かす」場面を考えてみましょう。その前に。この「人を動かす」という表現は、適切ではないと考えています。既述のとおり、主語が”I”だからです。相手の立場を慮るとすれば、

「人様に動いていただく」

ぐらいの表現でなければなりません。話は脱線しますが、関東のある私鉄で「ドアを、閉めます」というアナウンスがなされます(ほとんどの会社では「ドアが、締まります」)。鉄道ファンの間で話題にあがるこの会社、米海軍基地の近くを通るので「英語("I"が主語)的な表現」だという冗談まじりの仮説があります。コミュニティでは「私が相手を動かす」のではなく、「相手が動いてくれる」という視点を持つことが大切です。

では、相手に「動いていただく」ためには。それはひとえに、時間をかけた信頼関係の構築以外には無し得ないと考えています。そしてその関係づくりに欠かせないことは、相手を凌駕するほどの自分の情熱です。ただ、実はこの情熱がマイナスに働くことがあり、前述のように「自分だけ熱が上がっている自己満足」状態は好ましくありません。あくまで相手のペースに合わせつつ、自分の熱量はいつも最高度に保つことで時間をかけて「伝播」していくものであると考えています。

陸と海の「温まり方」も違うように、相手の温まり方は自分とは違う。そのことを十分に認識する必要があります。

陸地に比べて海水の比熱は4~5倍程度、密度は3分の1から4分の1のことが多いから、熱容量は2倍近くになる。これだけでも海は陸に比べて暖まりにくく、冷えにくくなる

海洋気象

まとめ

コミュニティで人を「動かしたい」と考えている運営者の立場で考えた場合、以下がいえるでしょう。

・「相手の身」になって考える
・相手との「距離感」を大切に
・ときには「待つ」ことも必要
・コミュニティは「信頼の交換」
・主語は「私」ではなく「相手」
・「最大熱量」を内に秘めよ

コミュニティは、誰のものか。コミュニティは、自分のものか。そう自己に問いかけてみれば、コミュニティ(主語)は自分だけのものではなく、相手のものだけでもない。だからこそ常にこの考えを持っておきたいものです。

コミュニティは
自分(自社)が主体ではない
「相手」がすべての世界である

コミュニティは
自分(自社)のものではなく
コミュニティのものである

#コミュニティデザイナー
コミュニティの立ち上げ・活性化などのご相談は @shindoy のDMにて受けつけております


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