見出し画像

実例:オンラインイベントによるコミュニティづくり

コミュニティの育成・活性化を支援している立場から、改めて過去の経験・知見を整理して今後に活かしたいと考えました。コミュニティのご相談を受ける際に、議論の「土台」になれば幸いです。最近は「オンラインイベントの集客に困っている」という相談が増えてきました。これはそもそもオンラインイベント=コミュニティ活動なのか?という問いにもつながります。そこで今回は「オンラインイベントによるコミュニティづくり」について考えてみます。

オンラインイベントの「現在」

2024年3月時点でインターネット上のデータをいくつか調べてみたところ、「現在」オンラインイベント・ウェビナーの参加率は約50%であるという調査結果が一般的でした。

そこで改めて、オンラインイベント・ウェビナーの参加者と主催者の心理状態(の一例)を思い浮かべてみることにします。

【参加者】
・気軽に申し込みできる
・キャンセルのハードルが低い

【主催者】
・コスト(時空間)がかからない
・キャンセルが多くて困っている

参加者が往々にして「気軽」に構えているのに対し、主催者は約50%「しか」参加しなかった、と嘆いていることがわかります。このことから、オンラインイベントの目的を「集客」というその30分や1時間の「単一点」に定めることは「コミュニティを育む」という観点からは不十分です。また、そのコミュニティが製品やサービスの普及啓蒙を図ろうとしている場合は「営業行為」に写ってしまうリスクもあります。「現在」の参加率約50%という数字は、このように

「気軽」な構えの参加者
「気軽」な構えの主催者

という背景があることを意識する必要があるでしょう。一方、そのコミュニティが特定の製品やサービスの普及啓蒙を意図したものでなく、話題の技術や社会課題の解決といった「テーマだけで集客可能」な場合もあります。これには、

テーマの人気度
登壇者の知名度

などが備わるだけで、1,000人単位の集客ができる事例もあります。

オンラインイベントの「黄金時代(過去)」

それでは「過去」(2021年)1,000人単位の集客ができた時代を振り返ってみます。当時は「仕方なく」自宅に留まらないといけない社会情勢もあり同時視聴者数が1,000人を超えるオンラインイベントの「黄金時代」でした。オンラインイベント配信の企画・運営事業を行っていた当時は、このような大規模イベントは日常的にありました。

この「時代」のオンラインイベントの集客を支えていたのは「社会情勢」という「環境」でした。そう「仕方がなかった」からこそ、集客できた面もあったのです。しかし「現在」はどうでしょう。前述のとおり、オンラインイベントの登録も「気軽」、参加も「気軽」、キャンセルも「気軽」、最後には「登録したまま不参加」も気軽な時代になってしまいました。これは主催者は「悪いこと」だと認識していますが、参加者にとっては何の義理もないため現在の「オンラインイベント不遇の時代」をどう考えていくかが重要です。

オンラインイベント=コミュニティなのか

これまでの主語は「オンラインイベント」でした。オンラインイベント(主語)を中心に、その参加者や主催者のあり方を考えました。では、ここで主語を「コミュニティ」に切り替えてみることにします。結論から先に述べると「オンラインイベントがコミュニティ活動である」という主張は

手段と目的

によってYesにもNoにもなります。たとえば、ある製品やサービスを開発・提供している企業がすでにコミュニティ活動を行っており一定数の「母数」つまり一定数の固定ファン層を既に持っている場合は「オンラインイベント【も】コミュニティ活動【の一部】である」といえるでしょう。しかし一定数の「母数」集めを行っている段階、つまりコミュニティ育成の初期段階において集客が「目的」になっている場合はそれだけで達成は難しいでしょう。

熱心なファン層(=コアメンバー)を中心に、まわりにフォロワー(後追いする人)を増やしていくアプローチを取るコミュニティ育成手法においては、いくらオンラインで呼びかけても「自分ごと化」は起きません。つまり「オンラインイベント【だけ】がコミュニティ活動である」と捉えてはいけないということです。

一方で、オンラインイベントだけがコミュニティ活動である場合も存在します。「日時指定の同期イベント」ではないので厳密には違いますが、一番身近な例は「YouTube」ではないでしょうか。視聴者はそれぞれの生活時間や場所において非同期にそのチャンネル運営者の「動画」という一定時間の「イベント」にアクセスし「コメント」「いいね」などのリアクションを行います。YouTubeの標準機能として多くの人もその存在を知らないか、知っていても使っていないことも多い「コミュニティ」機能もあります。

まさに非同期型「オンラインイベント限定」コミュニティといえるでしょう。ミュージシャン、講演家、サロン主宰者などを除きほとんどのチャンネル運営者は現実世界で「コミュニティメンバー(ファン)と会うオフラインイベント」を行うことはありません。あくまで「1対n」型の、YouTubeというプラットフォームを介した「実際には会わないファンで構成されている」コミュニティなのです。

このように、オンラインイベントというものはコミュニティを育んでいくうえで「手段」「目的」「段階」によって使いわけていく必要があるということがいえます。

オンラインイベントによるコミュニティづくり

これまで「コミュニティ」を主語にオンラインイベントのみでのづくりが現在においては難しくなったと述べてきました。最後に主語を「オンラインイベント」に戻しコミュニティ施策の一部として行う場合を過去に手掛けた実例から考えてみます。

ある企業が3月14日にオンラインイベント(研修会)を行うことにしました。通常は、この3月14日の数時間という「一点」に焦点をおいて関係者は準備をしていきます。

イベントの「一点」に焦点

そのイベントを確固たる「母集団」=いわば「コミュニティ」に対して告知する場合においては、集客や参加は見込めるものとなるでしょう。なぜならば、前述の通り「気軽」に参加・キャンセルはしない「関係性の構築」が過去に行われているからです。しかし、これを新規に「コミュニティづくり」を行う段階(=母集団をつくる目的の段階)に例えるとどうでしょうか。過去、主催者の期待に反して集客に失敗する例を多く見てきました。つまり「気軽」に参加・キャンセルする人たちで構成されている集団はいつまでたっても「コミュニティ」の状態に近づいていないのです。

それでは、オンラインイベントによるコミュニティづくりの実際はどのようにすれば良いのでしょうか。「接点づくり」の回数と種類を増やすことで「認知」から「関心」へ、関心から「行動」へと導く手法をご紹介します。

複数の「接点」づくりを意識
  1. 事前の接点づくり
    ・約1ヶ月前〜直前
    ・SNS、メルマガ、動画など複数手段と回数

  2. 直前の接点づくり
    ・数日前〜前日
    ・「直前」という強制力を活かした表現

  3. 事後の接点づくり
    ・当日、翌日
    ・すぐに冷める人の熱を「再加熱」する

  4. "コアメンバー"の発見
    ・直後〜約1ヶ月後
    ・対面(オフライン)
    ・飲み会、食事会、勉強会など実施
    ・あくまで「自発性」を誘発

この「コアメンバー」が集まってきて、今後の運営に協力してくれそうな段階になれば、その後のコミュニティづくりにおいて大きな力を得たことになります。

このようにオンラインだけで「コミュニティづくり」をするのではなく、様々な「施策」を組み合わせて母集団の形成を行うことが望ましいでしょう。「気軽」に参加・キャンセルはしない「関係性の構築」とは、主催者側の設定した

ある「一点」の
・日時(曜日、時間帯)
・場(オンライン、対面)

だけでは不十分だということがいえるでしょう。ちなみに過去に主催していた技術の勉強会では試みとして

<曜日と時間帯>
 土曜 午前中+午後
<場>
 対面
<接点づくり>
 当日に参加者全員で
 後日に個別でランチ

という手法で接点づくりを行ったことがあります。このときの参加者の方々とは、今も「エンゲージメント」が高い状態であることは言うまでもありません。

まとめ

コミュニティづくりが関係性の構築である、とすればオンラインイベントによるコミュニティづくりもまた、複数の手段・回数による接点づくりであるといえます。オンラインイベントをコミュニティづくりの「目的」にはせずに、それ(一定の母集団化)に至るための接点づくりの「一例」である、という観点を持つことが重要です。

#コミュニティデザイナー
コミュニティの立ち上げ・活性化などのご相談は @shindoy のDMにて受けつけております




いいなと思ったら応援しよう!