シェア
聖刻PROJECT
2020年10月29日 17:25
エルセ・ビファジールは上等な操兵だ。 まず、仮面の格がちがう。 一般的な機体に使われるものより、明らかに品質がいい。 仮面の質について言葉で説明するのは難しいが、実物を見れば明らかだ。 その名のとおり、仮面は人の顔にあてるあれそのものの形をしている。人間用と異なるのは、その大きさだけだった。 その裏には、光を放つ貴石が方形に配されている。縦に八、横に八で計六十と四。 仮面と呼ばれるも
2020年10月22日 17:30
従兵機は、どんなに上質の鉄を使い、頑丈かつ精妙な機構を用いたとしても、並の鍛冶師が組み上げた並の狩猟機にかなわない。 そういうものなのだ。 結局、操兵の強さは、仮面の格とでも呼ぶべきものにあるらしい。 格というのは、文字通り仮面の間に存在する序列の優劣のことだ。格の高い仮面をつけた操兵は、格下の仮面を持つものなど敵ではない。 そのかわり、格の高い仮面は、相応の機体を要求するらしいが。
2020年10月15日 17:10
物心ついたころからこの工房の記憶しかない。 がちん、がちんと響きわたる、赤熱する鉄を叩く音。鍛え上げられた骨材が組み上げられる割れ鐘のような騒音と、それに負けない大音量で叫びかわす鍛冶職人たちのどら声が、覚えている一番古い音だった。 ここでなにが作られているのかといえば、それはもちろん操兵だった。 操兵とは、ありていにいえば「鉄でできた巨大な人形」だった。 もちろんただの人形ではない。中
2020年10月8日 17:42
アハーンなる世界がある。 力と魔道の支配するその地に、古より伝えられる武具があった。 その名を〈操兵(リュード)〉。 操手たる人間をその裡に乗せ、千人力ともいわれる膂力を発する鉄の巨人である。 時の王たちはこぞって操兵を手に入れ、強大なる鉄の軍勢を作り上げた。 ゆえに、幾百、幾千の歳月を経てもアハーンに戦乱の絶えたことはなく、操兵たちは変わらず戦場を駆けめぐっている。 このアハーン大