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【ショートストーリー】シェフの猫
うちでは猫を2匹飼っている。その内の1匹は、何故か料理を始めると、決まってやってくる。カウンターキッチンのカウンターに腰を下ろし、鋭い目つきでこちらに注目している。うちの猫はキャットフード以外食べないタイプの猫なので、あわよくば盗み食いを…なんてことは無い。ただじっと作業を見て、時折、立ち上がって覗き込んだり、口をくちゃくちゃさせたりするが、カウンターから調理台に侵入することは無い。
できた料理をテーブルへ運ぶと、今度はテーブルの上に上がり、食べる様子をじっと見ている。ここでも、食べようとすることは決して無い。躾が出来ているような出来ていないような状態だか、これがうちの日常だ。
「なぁ、お前さ何でいつも人が食べもん作る時見に行くわけ?」
「分からないかね?私がいなきゃ作れないんだよアイツは。」
「そんなことないだろ。アイツはシェフだぜ。」
「フフッ、建前上はね。でも料理が上手く作れるかどうかは私にかかってるんだよ。ウフフフフフ……」
「気持ち悪い笑い方やめろよ。なんでそう思うんだよ。」
「アイツは人に見られてると、やる気が出る生物なんだよ。」
「見てるのは人じゃなくて猫だろが。」
「フフッ、どっちでもいいんだよ。目は同じなんだから。そうしてできた料理は私が監修した料理なんだよ。」
「そうゆうもんかね。じゃあ、ついでに聞くけど、なんでアイツらが食べる時テーブルで見てんの?」
「料理の出来を確認して、感想を聞かなきゃならないからね。シェフとして。」
「ねぇ!そこ、人参の横!チャコちゃんの毛入ってるよ。」