【物語】星のごちそうタマゴ #13 準備
眼下に広がるのは、宇宙に浮かぶ地球だった。しかも、すぐそこにある。ヤシス星は、本当に地球に一番近い星なんだなと思った。オヤッサンは滅多に見れないこの光景を目に焼き付けるべく眺めていると、ふと視界に小さな星が、至近距離にあることに気が付いた。
「あの隣にある小さな星は、ひょっとして、どこだかの異星人が作ったという新しい星ですかね?」
「あれは、ヤシス星です。」女王様は答えた。
「ええっ?そうすってぇと、今居るこの星は・・・?」
「新しい星です。先ほどワープしてきました。地球はこの先およそ百年の内に、人が住めない星になります。それは、地球の内側の状況と、地球の外側の宇宙から、さまざまな要因を分析し計算した結果です。私達はもともと、観光の星として存在していたのですが、その事実を知ってからは、地球を救いたいと思うようになりました。それはやはり、地球という星の文化が、宇宙において非常に珍しく、面白く、価値のある星だからです。他の星からくる異星人観光客も同じく大変興味を持っています。ですから、地球を継続させる方法を考えていましたが、やはりどう計算しても宇宙の力を駆使しても地球そして、地球人は滅亡してしまうのです。そこで、私達は、定期的に地球を訪れ調査するようになりました。地球が住めなくなっても、地球人が住める星が存在すれば、地球の文化だけは継続できると考えたのです。それで、ヤシス星の隣に、この星を作りました。」
「まさかそんなことって・・・たしかに、環境問題とか?異常気象とか?考えられなくもないけど・・・」
オヤッサンは、あまりにも衝撃過ぎて言葉に詰まってしまった。
「だから、さっき第二の地球へようこそって言ったんだ!」娘がやっと気づいて叫んだ。
「ってことは、この星に地球人を住まわせようとしているってことか?!」
オヤッサンも遅れて合点がいき声を荒らげた。
「お察しの通りです。しかしこれは、私達が一方的に進めていることではなく、一部の地球人との話し合いの上で、依頼を受けて取り組んでいるミッションです。私達の星で代替えの利くものと、利かないものもありますし、調整と試験を繰り返して色んなデータを取っているところです。」
「それで、食材や料理の事を私達でテストしているということね。」娘が腑に落ちたように言った。
「そういうことです。隠していてごめんなさいね。ヤシス星や新しいこの星では、動物を育てて食べることは、デメリットが多すぎるので致しません。しかしながら、別の方法で食材を作り出し、調理の工夫をする事で解決できると考えております。実は、日本料理だけでなく、様々な国の料理人をオファーして協力いただいております。」
「それって、選ばれしってことね!」娘が喜んで言った。
「なにも私じゃなくても、腕のいい料理人なんてごまんといるだろうさ?」
「はい、おっしゃる通り、腕の良い料理人はたくさんいるでしょう。しかし、相手の事を思いやり、固定観念を持たずに斬新なアイデアで料理を作り出す人は、そう多くはいません。また、現在の生活環境や人柄などの条件を考慮すると、今回のオファーに相応しい地球人は一握りです。」
女王様はそう言うと、オヤッサンに満面の笑みを向けた。
「さて、いかがでしょうか。地球に戻りますか?それとも、私達と共にここで地球の未来を作りますか?」