【物語】星のごちそうタマゴ #12 地球観察
オヤッサンの店は連日、異星人たちで繁盛していた。すでにたくさんのヤシス星のお客さんが常連となっていたが、時々ヤシス星以外の星からくる異星人の予約も少なくなかった。あまりにオヤッサンの料理が求められ盛況なので、2号店を出す事が決まって、建設が進んでいる。大きなイセイジンは、オヤッサンの一番弟子となり、すでに料理をマスターしていた。新しい従業員を雇い、料理を教えたり、オヤッサンの料理を再現できるマシンを開発したりと忙しくしている。そんなある日の事である。
「大変大変!」
そう言いながら、娘が慌ただしく店に入ってきた。店はまだオープン前でオヤッサンは仕込みをしていた。
「どうしたってんだ?」
「地球人がいたよ!」
「なんだって?!」
「私達と同じ!イセイジンに案内されてあの”玄関”から入ってきたの!」
「あれは・・・きっとヨーロッパ系ね!」
「だとすると、どういうことだ?料理人がまだ必要ってことか?それとも・・・」
そんな会話を始めた矢先、突然ドアが開きイセイジンが現れた。
「お久しぶりです。相変わらずご盛況のようで嬉しい限りです。新設の2号店が完成しましたので一緒に見に行きましょう。」
オヤッサンは少し警戒したものの、確認する良い機会と思い、娘に目で合図し一緒に歩き出した。ところが店のドアを出るなり、強烈な光に包まれた。アパートのドアを開けてからここへたどり着いた、あの時と同じ感覚だった。眩しくて目は開けられず、体は深い谷底に落ちたように重力がかかった。
「ようこそ!第二のヤシス星、いや、第二の地球へ!」
目を開けると、そこには日本でオヤッサンの店を訪れたあの”客”(イセイジン)とヤシスの女王様が立っていた。
「なんだ?一体どうなってるんだ?第二の・・・って・・・」
「すべてお話ししますが、その前に紹介させていただきたいものがあります。どうぞこちらへ」
差し出した手の先には、巨大なドームが建っていた。
「うわぁーこれって東京ドーム何個分?」娘が目を見開いて尋ねた。
「外見は百個分くらいかと思いますが、中はもっと広いですよ。」
イセイジンがそう言い、案内を始めた。ドームの中は、やはり街・・・というか国のように思えた。さっきまでいた街とはまた雰囲気が異なり、どちらかというとそれこそ地球に近いような気もした。
「あっ!ハンバーガー屋さん!」娘が思わず叫んだ。
「そうですね。他にも色々なじみの店があると思いますよ。」
イセイジンは微笑んで言った。いつもと違い地球人の装いで表情があるのが、逆に不気味である。
「こちらが、新設2号店です。どうぞ中へ。」
女王様に促されるまま、中へと入った。すると、中は完璧な和食料理屋の内装・・・というより、日本のオヤッサンの店そのものだった。
「いや~驚いたな、懐かしささえ感じるよ・・・」
オヤッサンはぐるりと見渡しながら言った。
「それでは、次へ参りましょう。」
そう女王様が言うと、店を出て少し歩いた先にある、見たことのないくらい大きな背の高い木のふもとへ案内してくれた。女王様が木に手をかざすと木の表面にドアのようなものが現れ中に入るよう促された。外からは木だったが、中は透けて外がみえるエレベーターのようなものだった。乗るとすぐに上昇しわずかな時間で頂点まで到達した。
「地球観察です。」女王様が言った。