【物語】星のごちそうタマゴ #8 試食
戻ってきた大きな異星人は、片手に食材らしきものが盛られたバスケット、もう片方の手にはアタッシュケースのようなバックを持っていた。それを両方テーブルの上にのせると、それぞれを取り出し一つ一つ並べながら説明を始めた。
「例えば、”しょっぱい”って言うのはおそらくこれらの事を言うのだと思うのですが、こちらの小さな実はかじるとしょっぱいです。そして、この枝を絞るとこのような液が出ますがこれもしょっぱいです。もう一つ、この砂・・・失礼、パウダーもしょっぱいです。」
オヤッサンは、それぞれの味見をしながら、うんうんと頷いた。
「なるほど、それでは甘さを出すものは?」
「それなら、たぶん、これとこれ。両方果汁です。それから、この石を削るとカスが出てそれも甘いです。」
「どれどれ・・・・うん、たしかに甘い。それからこの石は・・・ああなるほどいいね、いい味だ。」
オヤッサンは、急にスイッチが入ったように真剣なまなざしで色んな食べ物を分析し始めた。そうして、先ほどのニョロニョロした食べ物に、しょっぱい枝の絞り汁と、甘い果汁を合わせてかけ、味見をした。
「うん!いい。私ならこういう味が美味しく感じるんだが、この星ではどうかね?」
そう言い、そのアレンジしたニョロニョロを大きな異星人に差し出した。
「おお!これは初めての味!うまい!」
大きな異星人は大きな声で言い放ち、まるで蕎麦でもすするように一気に平らげた。
「さすがお父さん!やるっ!」娘は拍手をして言った。
「枝の絞り汁はしょっぱいだけでなく出汁のような旨味があったんだ。それに、この甘いフルーティーな果汁を合わせて、酸っぱいニョロニョロとあえると、なんとなく、もずく酢のようなトコロテンのような食べ物に仕上がると思ったんだよ。」
オヤッサンは、いつの間にか大将の顔になっていた。
イセイジンが席を立ちオヤッサンの横へ来た。
「おみごとです。私にはそのようなアイデアは想像できませんでした。しかし、オヤッサマなら、改善できると信じておりました。来週この星を取り仕切っている者・・・地球で言う・・・王様的な?者がこの店に来て、審査をします。そこで許可が出れば、オヤッサマがこの星の料理人として働けます。いかがでしょう、挑戦してみませんか?もちろん、その為なら何でも協力します。」
「しかたねぇなあ、いっちょやってみっか!」
イセイジンは、オヤッサンと娘の為の家を用意してくれた。家具や家電は、見たこともない近未来的な形をしているが、どれも直感的に操作ができるのでこれといって不自由はなかった。
「これが現実なんて信じられないわね。明日、目が覚めたら夢だったりして!こんなワクワクほんと久しぶり。お父さんはどんな感じ?」
娘が目を輝かせて言った。
「そうだな。審査だとかミッションだとか言われると、熱いものがこみ上げて昔を思い出すわな。それに、ここまで来たらやるしかないだろ。」
「っていうか、早く、お父さんが料理を作ってくれないと、食事がつまらないから、がんばってよね!」
娘がサプリメントのようなものをポリポリと食べながら言った。