はじめまして…自己紹介も兼ね、私の一風変わったキャリアのお話を。
私は、進藤洋菓子店のオーナーでシェフ パティシエの進藤久志と申します。
初めましての方も、インスタ時代からの読者の方も、今後とも宜しくお願い致します。
私の投稿は基本〈当店のケーキに関する詳しい説明〉が主になりますが、時には〈修業中の出来事〉や〈衛生や包装についてのアレコレ〉等についても、ゆる~く書き綴っていこうと思います。
目指すは大谷選手の様な、ハイレベルでの二刀流。勿論〈ピッチャーとバッター〉ではなく〈製菓と執筆〉です(笑)。
製菓の技術も知識も極めたいですし、それと同時に、製菓理論や材料学を駆使して文章も書きたい。2つを極めて『進藤さんってオンリーワンだね』と言われるのが今の目標です。
今回は自己紹介も兼ねて、修業時代に体験した様々な職とその内容に焦点を当てて書いてみました。
私の投稿を読んで、パティシエやパティシエールの仕事についてより深く知って頂ければ、今後食べるケーキの味や見方が少し変わるのかも。
これまでは、〈進藤洋菓子店〉のインスタグラムに〈普通ではない長文〉を日々投稿していましたが、そちらは1000投稿を区切りに一旦離れ、本日、晴れて〈note 〉デビュー!となりました。
実は、インスタには文字数の制限があり、それに毎回苦労してまして。別に〈インスタグラム〉への不満ではなく、あれはあれで、そーゆー物なので(笑)。
で、その時の作業としては、とりあえず〈文字数〉の事は考えずに書きたい事をまず書き連ね、後から〈制限文字数〉に収める為に文字や文章を削っていく…。そんな事を毎回、毎日繰り返してました。
いやー、それはそれは中々大変で。書き起こした文中の〈言いたい事・伝えたい事〉に自分なりに順位をつけ、その後、残す物と削除する物を仕分ける作業。制限に引っ掛かり、泣く泣くセンテンスごとザックリと切り落とす事もあって。
「これは入れたかったんだけどなぁ。どうやっても無理だから仕方ない…」
みたいな。
こちら〈note 〉は、ほぼ文字数制限無しと言っても過言ではないので、今後はそういったストレスからの〈完全解放〉。本当に嬉しい限りです。
これからは、インスタの方はあっさりと伝えたい情報のみを載せ、もっとしっかり読みたい方々にはこの〈note 〉をご用意させて頂く。このスタイルに。
これを今読んでいる方がどの方法でここに辿り着いたのが知り得ませんが、当店のインスタプロフィール欄に貼り付けたリンクから来るのが簡単で宜しいかと。
実は、結構前から〈note 〉の事は知っていて。色んな方から「あんなに色々書きたいなら〈note 〉に書けばいいのに」と、何度かアドバイスされた事も。
ですが私としては、まずは利用者数の多い〈インスタ〉で情報発信し、〈進藤洋菓子店〉に興味を持って貰うのが先かな?と考え、映える写真を撮り、それに合わせた文章を書いていました。その文字数の多さに拒絶反応を示す方もいたようですが、驚きを誘う為にあえてその様にしていた所もあります。
結局、足掛け4年で投稿数は1000を越え、その甲斐もあって〈フォロワー数〉は2000人を越えました。〈インスタグラム〉での役割は十分果たしたと考え、そろそろ次のステージへ。
私のこれまでの人生では、製菓の修業時代もこんな感じでステップアップを重ね、違う場所・違う景色に自ら飛び込んで行ったな~と懐かしく思います。
そして、この〈note 〉は記事毎に〈有料↔️無料〉にする事も可能との事。
素晴らしい機能(笑)。
勿論、当店の商品等の説明についてはこれまで通り〈無料〉でお届けする予定ですが、〈ちょっと無料では教えたくないなぁ〉という専門知識の話や、〈執筆に多くの時間を割いた投稿〉については、私の〈知識・経験〉や〈費やした時間〉に意味を持たせる為にも〈有料〉の検討もさせて頂きます。ご了承下さい。
いずれにせよ今までもこれからも、こういった物書きは、私自身の〈執筆欲〉を満たす物であって、決してお金儲けを目指した物ではありません。そこは少し強調させて下さい。
では、続いて自己紹介を。
私は自分が、ちょっと変わったパティシエだと自覚しています。
何故か?
それは、私が修業時代に転職を繰り返し、そのキャリアが一風変わっている事に起因します。普通、パティシエもそれ以外の技術職の方も、上を目指せば目指す程、1つの職場で製法を一通り学べばそこを辞め、次の職場へのステップアップを望みます。
でも、誰しも慣れた所を離れるのはつらく怖いものです。いつもの環境にいれば自然と作業に慣れて失敗が減り、分からない事も次第に無くなり、更に後輩ができれば仕事がはかどり出し、それが心の余裕に繋がります。責任感や愛着は増しますが、人によってはそれと同時に慢心やダラけも出てきて…。その上役職でも与えられれば、途端に威張る人もいて…。
私はその様な状況をあえて作らない様に、しっかりとその場その場で一通りの仕事を習得すれば、約3年~4年を目安に転職を繰り返していました。
転職してしまえば、いくら技術があろうともその職場ではハウスルールを含め、分からない事だらけ。それらを教えてもらう立場上、威張る一辺倒は流石に無理ですよね。そんな精神鍛練の意味もあっての転職。勿論、どのお店でも信頼を得ないと次の仕事を回してはもらえないので、
〈人の2倍3倍働く〉
は当たり前でした。
その転職に当っても、普通の人は、変化の大きな転職は避けるものです。それはパティシエも同じで。その町のケーキショップから隣町のケーキショップへ。あるホテルから別のホテルへ。このような転職は変化の少ない転職なので、よくある話。
私はそのような変化の少ない転職は自らNGに。
平坦で見晴らしの良い道より、道なき道を選択してきました。その道のりとそこでの経験は、私の〈向上心と選択〉が作り出したオンリーワンな物。それらにより、今では1点物の高級フランス菓子からコンビニの大量生産菓子まで、あらゆるお菓子を作る事ができます。
そして、そのレシピ作成から現場の指導に至るまで、それに関わる全てを行う事ができるようになりました。なんならフランス語も。
ちなみに、私がこれまでに経験した職は街のケーキショップ・繁華街のカフェ・ホテルの製菓長・パリのパティスリー&ショコラトゥリー・製菓専門学校の教員(2校)・企業の洋菓子商品開発部と多岐に渡り、そして、その場その場で多くの事を学びました。
「色々経験したとおっしゃるが、業種(製菓製造)が同じなら、職種(ケーキショップ、カフェ、ホテル等)が変わってもお菓子作りに違いは無いんじゃないの?」
と思う方もおられるかと。
いえいえ、実は結構な違いがあるんです。その場所場所で狙うターゲットも違えば、規模も違う。そこが違えば従業員数が変わり、働き方や作り方も変わるんです。そこを今日は、少し時間を割いて説明させて頂く事にしました。
まずは大学を卒業後、大阪あべの辻製菓専門学校に通いながら地元のケーキ屋でアルバイトを始めたのが、私の洋菓子人生の始まりとなります。
①街のケーキ屋さんの仕事は、比較的イメージしやすいかと。朝から昼にかけてその日に売るケーキの飾り付け~品出しをし、午後は明日以降に売るケーキや焼き菓子を仕込む作業を。その仕事内容には、事業所によってはアイスクリームやチョコレート等の製造もあり、時にはケーキの販売も含まれます。個人事業主が多いので事業規模は小さく、近年随分と労働環境は改善されつつあるようですが、まだまだ給料は安くブラックな所も多いのではないでしょうか。
次に、②初めて就職した大阪の繁華街、心斎橋の喫茶店兼ケーキショップ。カフェの業態が入る事で、仕事内容にコーヒーや紅茶等のドリンク作りやウェイター・ウェイトレスといったサービス業の要素がプラスされ、また、その場で召し上がって頂く皿盛りデザートや、繁華街故の需要として1年に数件ですがウエディングケーキの作成・配達も。3年の在籍で随分と色々な役割をこなしました。
次の舞台は③東京品川のホテルへ。ホテルは従業員数が優に100人を越えるので、事業規模が大。その為、分業がしっかりと成されていました。
勿論、企業が経営。
なので、労働環境がクリーン! 9時~18時まで休憩1時間の8時間労働、週休2日を初めてそこで体験しました(笑)。
当時私はベーカー部と呼ばれるパン屋とケーキ屋が所属する部署に配属され、始めはパン課に。なので一年間はパンを作り、その間、ケーキ製造の方に転属希望を出す事で、1年後にそちらへの移籍が叶いました。しっかりと〈人事〉が存在するのも、企業体であるが故。
そして、ホテルで製造するケーキは売値が高い事もあって、街のケーキショップのケーキよりムースの層が多かったり綺麗に飾られていたり、クラシックなフランス菓子があったり。しっかりと手が掛けられている物が多く、オリジナリティが重視され、街場の物とはやはり違いました。
また、毎週末には婚礼用の大型ウェディングケーキの発注が、多い時には1日5台入る事も。その作成と設置。あと、その婚礼に合わせてコースデザートも担当する為、デザート100皿~200皿を時間にあわせて組み立てて提供する使命が。週の中頃はこれらのパーツ作りにも追われていました。
役職がついてからは、新作ケーキのレシピ考案も任されましたが、まだ引き出しの少ない私には結構なストレスで…。
また、通常の仕事以外として、在籍期間中にホテルグループを挙げての〈デザートコンクール〉にも参加し、入賞したり。
そして、そのホテルを辞する頃には〈ベーカー部厨房長〉という役職を頂いていたので、毎週そのホテルの重役が参加する〈運営会議〉にも出席と。これまでの①②との違いは明白ではないでしょうか(笑)。
次は④フランスのパティスリー(ケーキショップ)、ショコラトゥリー(チョコレートショップ)。なんたって外国。言葉が違います(笑)。文化も。色々違い過ぎて吸収するものだらけ。
ですが、製菓製造に関しては私はそれまでの経験があるので、さほど驚く様な事はありませんでした。
ちなみに、私はパリのトップパティシエ・ショコラティエと働いたので、当時の技術の〈頂上〉を体験してきた自負があります。逆の立場で、日本料理を学びに日本に来たとして、東京の一流店で働くのと、地方の無名店で働くのとでは、技術や意識に大きな差が存在するのは明白かと。
またこの話は別の機会に。
それ以外にも、あちらに行って働いた人にしか分からない不思議な感覚〈時間の濃さ〉を体験しました。〈言うだけ番長〉ではなく〈体感〉って何よりも大切です。製菓もしっかり学びましたが、向こうでは〈差別や孤独〉、時には〈貧困〉も経験し、これからの人生で必要な〈心の強さ〉〈意志の大切さ〉を学びました。
フランス修業については書くことが多すぎるので、今回は少し割愛を(笑)。
次は⑤製菓専門学校教員。製菓を教える専門職です。ここで初めてスーツでの出勤や、土日祝が休日という一般的なサラリーマン生活を経験しました。
これが〈世間一般の生活〉かと…。
クリスマス等のイベントに追われない日々。目から鱗でした。
仕事は〈作る事メイン〉から〈教える事メイン〉に。多少の頭の切り替えが必要でしたが、元々現場でも〈教え魔〉だった私にとっては意外と簡単で。
私を知る人には分かって貰える様ですが、オーナーパティシエとなった今でも、天職は〈教員〉だと言い切れます(笑)。
その教員職には、いままでの職とは明らかに違うスキルが必要でした。
まずは〈スピーチ力〉。学生や一般の方々を相手に、大勢の人の前で話す能力です。次に、保護者への手紙やレシピ冊子等の〈文章作成〉のスキル(これは得意分野!)や、パソコンに入力・保存する為の〈パソコンとタイピング〉のスキル。
後は、全ての教員に共通するであろう、叱ったり諭したりの〈コミュニケーション〉能力や、常に分刻みで物事が進行するので〈時間をマネジメントする〉スキル等。
これまた、これまでの①②③④との違いは明白。
私は結果、2校で教鞭をとりましたが、私がすこぶるラッキーだったのは、1校目で桑原清次先生と中村俊雄先生、魵澤信次先生に出会えた事。彼らからそれぞれ〈フランス伝統菓子の大切さ〉〈熟練職人の凄み〉〈人としての器の大きさ〉を教えて頂きました。
そして2校目では、数々のスターパティシエの助手を経験できた事。あとは、飴細工のコンクールに挑戦させてもらえた事です。これらについても、また別の機会にお話を。
ようやく最後に⑥企業の商品開発、及び工場のライン作成を。
これまでも、勿論レシピ作成はしていましたが、そこでは1日で3000個~1万個のケーキを製造する為のレシピ作りと、実際に作る際に必要な工場のライン作成を担当。
先程の製造数は、全国のコンビニやカフェチェーンでの販売を想定した、ちょっと腰が引けるくらいの数量。
しかも、これまでの〈職人の技術に頼ったレシピ作り〉ではなく、製菓工場で働く〈専門知識を持たない素人集団が作っても失敗しないレシピ作り〉に加え、完成品は必ず冷凍する事が前提に。
これらには最初、正直面くらいました。冷凍前提だと〈離水と乾燥〉問題という大きな壁が。レシピ作りに至っても、難しいレシピはNG。 なので〈メレンゲ〉は極力避けて、乳化剤入りのオールインワンの生地がメインスポンジに。バターは価格・扱い辛さの両面から使えず、マーガリンのみ。それまで殆ど使ってこなかった〈香料・着色料〉や〈保存料・静菌剤〉に頼ったお菓子作り。また、全ての工程で均一化を図る為、クリームや泡の容積チェック必須や各工程での菌検査。出荷出口での金属探知機にシュリンク機器。大量生産用のトンネルオーブンやラックオーブン、トンネルフリーザーに充填機etc…。
今まであまり縁の無かった、それらの食材や機器や製造法に関する知識のインプットに追われる日々。
この時もフランス修業時代と同様に、多くの事が違いすぎて吸収するものだらけ。フランス修業で鍛えられた私にも、中々のストレスでした。
当時お世話になった奈良工場長・開発部の永川部長には、色々と相談に乗って貰い、道を示して頂き、感謝しかありません。この経験をするまでは、専門が製菓製造であるにも関わらず〈コンビニのケーキ〉と〈専門店のケーキ〉を同列に見ていましたが、全くの別物だと気付きました。
大量生産菓子には〈出来る事〉と〈出来ない事〉がハッキリしていて。
ちなみにあえて1つ述べるとすると、コンビニやカフェチェーン等に卸すケーキは、それに関わる人が多すぎて(開発者→製造者→運搬者→貯蔵者→運搬者→販売者)、それらの一つ一つにお金がかかる為、逆説的に1つのケーキにかけられるお金が圧倒的に少ない。そうなると、〈本物〉に出来るだけ似せた〈物まね〉商品を作らざるを得ない事情が。
あまり書くと怒られそうなので、また別の機会に。
この経験がトラウマとなり、今私のお店では〈コンビニやカフェチェーンでは絶対に扱えないケーキ〉しか販売していません。反面教師と言うべきでしょうか。
そしてようやく、39歳にして現在の〈進藤洋菓子店〉をオープンし、9年目の現在に至る、となります。
上記以外にも、広島県福山市のアイスクリーム工場で働いていた事や、自由が丘のカフェで働いていた事もいつか書ければ…。
流石にこれだけ書けば、職種が変わるとお菓子作りや取り組み方は随分と変わり、そして私が〈一風変わった経歴を持つパティシエ〉だという事もよくお分かり頂けたのではないでしょうか。
これらの経験によって、私のケーキ・焼き菓子のクリエイトも一風変わっており、自身に課したハードル〈進藤洋菓子店にしか無い物〉により、完全オリジナルな菓子を販売しております。
興味を持った方は是非ともご来店頂き、ご賞味下さい。
実はこの私にも、唯一叶わなかった転職先がありました。それは〈一流レストランのパティシエ〉です。幾度となくそういったお店に履歴書を送ったのですが、上手くタイミングがあわず…。稀有な食材や製法を使い、一瞬で崩れる儚い〈デザート〉。〈テイクアウト〉の制約が無い分、柔らかく自由度の高いクリエイトが可能な〈デザート〉。元々コースに含まれる為ある意味押し売りで、なので攻めたレシピ作成ができる〈デザート〉。そのレシピを考案し、大量生産する機会が結局私には与えられませんでした。本当に残念ですが、それは次の人生の課題として…。
では、こちら〈note〉でも決め台詞は〈論より証拠〉。次回も宜しくお願い致します。次回はたぶん、新作の〈いちごのタルト〉になると思います。
併せて、ご来店をお待ちしております。
※当店は不定休ですので、ご来店の際はインスタにて店休カレンダーをご確認の上、ご来店下さい。宜しくお願い致します。