ダートグレード牝馬路線定点観測(2024年4月号)
牝馬ツートップが参戦した、リニューアル川崎記念回顧
こひ(以下、こ):川崎記念、未だに慣れない4月の1週目になりましたが、回顧に入らせていただきます。今回、カレンダーが大幅に動きましたので、どういうメンバー構成になるのかなというところではありましたが、やはり一線級はサウジとドバイに行くというところと、短めに行ける馬はフェブラリーで全力というようなところもありまして、その後ろの配置になりましたので、メンバー的には昔からの川崎記念から、そこをステップにドバイに行こうという馬が抜けたような、そんな感じのメンバーだったかなと思います。本当に完全なトップ層というものが参戦するわけではなくて、ここをタイトルに、さらには一線級に登っていきたい馬が集まる構図に、とりあえず1回目はなりました。アイコンテーラー、グランブリッジという牝馬の方のトップ層2頭が揃って参戦したというところで、これは牝馬も含めましたダートグレードのカレンダーをいろいろ入れ替えたことの結果かなと思います。
これまでですと、川崎記念とエンプレス杯が近くにあったので、牝馬のトップ層が川崎を使うという発想にはそもそもならなかったというところはあるかなと思いますが、今回、裏にあった兵庫女王盃がTCK女王盃が移ったレースになりまして、小回りコーナー6回の1,890mという特殊条件になったので、むしろ強い馬はこちらの方を選ぶようになってくるんだろうなというところは思わされました。
そんなこともありまして、一番人気は上がり馬のセラフィックコールというような構図になっていたかなと思います。レースでは、地元の川崎のライトウォーリアが先頭の方で主張していきまして、番手にアイコンテーラーが収まり、その後ろについているのがグロリアムンディ、セラフィックコール、グランブリッジといった形で、有力馬が先頭から7頭という形で固まった形になりまして、終始全然動きがないレースになったなと思います。このあたりがテリオスベルがいなくなると、こんなに穏やかにレースが進むんだなというところを改めて思わされました。
入れ違いに、向こう正面から逃げたライトウォーリアが、しっかりとペースを上げていきました。それに対して3コーナーからアイコンテーラーがすっと先頭のライトウォーリアに並びかけますが、ライトウォーリアは直線で吉原騎手の技術のすべてを注ぎ込んだような追い方で粘り腰を見せ、完全に勝ちパターンに突入していたアイコンテーラーを逆に振り切る形で逃げ切りました。最後は、外から飛んできたグランブリッジがアイコンテーラーを差して2番手に浮上するというレースになりました。
勝ったライトウォーリアですね。この日の川崎の馬場は、このまま渋って先行有利というところがありましたが、ラップを見直してみると、緩急自在にペースを操って揺さぶっていて、なかなかたまらないレースにしていたと思います。このレースでは、道中に12秒台のラップが13秒台の間に3回挟まるというところがあり、全然ワンペースではない逃げになっていたのかなと思います。これは非常に後続の脚を使わせる形となっていて、吉原騎手の素晴らしい騎乗だというしかないですね。
2着のグランブリッジは、川田騎手らしい道中は丁寧にインを回って最後は外へという教科書通りの美しい騎乗でした。こういった小回りのコースのダートグレードで勝ちまくっている騎手だなというところが光っていました。欲を言えば、この競馬で過去2年のJBCレディスクラシックに続いて、3度目のJPN1を獲ってほしかったですが、あと1、2回チャンスがあると思うので、そこで何とか達成してほしいですね。
3着になったアイコンテーラーですが、レース後のコメントでは直線で気の悪さが出たという話もありました。今回はもともとルメール騎手を迎えて勝負するつもりだったようですが、怪我のため急遽乗り代わりとなったというところも、ちょっと不運だったかなと思います。ただ、この2頭は牡馬相手でも十分に戦えるということは見せたと思います。
第1回兵庫女王盃回顧、生観戦してきました
川崎記念の翌日、4/4にはTCK女王盃が園田開催に移転しましてのリニューアル第一回、兵庫女王盃が行われました。このレースは関西エリアの牝馬限定のダートグレード競争としては、京都開催でしたJBCレディスクラシック以来でしょうか。待望の関西エリアでのダートグレード牝馬路線のレースになります。そんなわけで、現地で生観戦をしてきました。
メンバーもなかなか揃いました。川崎記念組の2頭を除いて、現状のダートグレード牝馬路線の上位組が揃った形に。レパードS等重賞2勝のライオットガール、レディスプレリュード等重賞2勝のアーテルアストレアに、条件戦を連勝してそのまま神奈川記念を制したヴィブラフォン、そして牡馬相手のOP特別でも2着と力を示したサーマルソアリングという上がり馬が対する構図となりました。地方馬も南関東転入2戦目になるキャリックアリード、地元兵庫の大将格のスマイルミーシャと、園田開催の意義を感じるメンバーとなりました。
パドック写真をいくつか。馬体だけ見ていると、アーテルアストレアとサーマルソアリングが目を引きましたね。
レースではライオットガールが驚きのハナを主張。逃げるかもと思われていた内のヴィブラフォンに対してプレッシャーをかけてハナを取り切り、番手にキャリックアリード、その外にサーマルソアリングという隊列に。内のヴィブラフォンはスムーズに進めずやや気性面の難しさを出していました。アーテルアストレアはじっくり中団から進めます。ダートグレード牝馬路線をまくり戦法一択で沸かせてきたテリオスベルが引退したことにより、隊列はそのままで展開していきました。ここが結果的には大きなポイントだったかと思います。二周目の向こう正面からはアーテルアストレアが満を持して進出。終始内から三頭目の外々を回らされていたサーマルソアリングに並びかけ、こちらは外からもプレッシャーをかけられて厳しい展開に、直線は早々と脱落する形となりました。直線はアーテルアストレアに並びかけられてから、ライオットガールが本格的に追い出されて再度突き抜ける形に。積極策が実を結んでの鮮やかな初代女王の戴冠となりました。
勝ったライオットガール、レース前は馬場を歩いて確かめている岩田望来騎手の姿もありましたが、この日の園田は比較的前が残る馬場であってそれを理解してしっかりと主張して行った戦略の勝利だったと思います。意外と小回りへの対応力もあり、こういった舞台で自ら動けると強いですね。今年もこの路線の中心の一頭として活躍してくれるでしょう。2着のアーテルアストレアはベストが左回りであり、右回りのコーナー6つという舞台設定は、どちらかというと向いていないレースだったと思います。その中でも一番外を回しながらサーマルソアリングはねじ伏せての2着は地力強化を印象付ける内容でした。次走になるであろうエンプレス杯では、左回りになることもありさらにパフォーマンスを上げるのではないでしょうか。人気をしていました上がり馬サーマルソアリングは、ここで壁にぶち当たった内容だったかと思います。この後は一息入れて北海道というプランもあるようで、まだまだ4歳春です。改めて成長した姿を見たいですね。キャリックアリード、ヴィブラフォンの二頭は前三頭とは少し差を感じました。
最後になりますがこのレースの4コーナー、園田で重賞4勝のスマイルミーシャへの場内の声援は大きかったです。いいなあと思わされました。地元の強い牝馬が胸を張ってダートグレードに挑戦する、その舞台が関西にできたことへの意義を感じる瞬間でした。今回は高知、笠松、金沢と園田に近い競馬場からの参戦もあり、初回としては成功だったのではないでしょうか。兵庫女王盃としてのこれからの歴史の積み重ねも、楽しみにしていきたいと思います。
春の大一番、エンプレス杯ボーダーと今後の展望
以上の2レースがある意味5/8のエンプレス杯に向けたステップレースのようになっていた印象ですが、肝心のエンプレス杯のボーダーについては以下の通りです。出走馬の登録状況については、4/21に出ることになるかと思います。
まさに新しいダートグレード競争再編成の結果を反映したかのような構図となりまして、川崎記念の2,3着、兵庫女王盃の1,2着、そして無敗でダートグレードまで駒を進めてきたオーサムリザルトで美しく5枠が埋まりまして、ほぼJBCレディスクラシックと言ってもいいのではという、古馬では究極のメンバーが揃ったのではないでしょうか。春のレース再編が、牝馬戦線に限って言えば良い効果が出ていると言えるメンバーだと思います。回避馬が出た際にはヴィブラフォン以下が繰り上がりますが、ぜひ、全馬無事に本番を迎えて欲しいですね。
しかし、改めてこのラインナップを見ていますと、このメンバーがすべて、秋のJBCレディスクラシックに揃うわけではない点も気になります。3歳牝馬路線も再整備され、関東オークス、新装マリーンCという2重賞があり、マリーンCの勝ち馬はJBCレディスクラシックに出られる、優先出走権が獲得できます。これにより3歳馬の出走が一定担保される仕組みも、これだけハイレベルになってしまったボーダーを見ると必要だなと思わされますね。来月の定点観測からは、3歳世代にも注目して整理していきたいと思っています。