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牡馬クラシック最後の一冠は名手の奇襲が炸裂。見事なストーリー完結と共に、世代最強馬が生まれた淀の戦いを振り返る(第84回菊花賞・第26回富士S・2歳戦回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のレース回顧スペース2023.10.22からの文字起こしです。


第84回菊花賞

蒼山サグ(以下、蒼):僕もかなり感動というか興奮というか多角的にすごい盛り上がったレースだったんですが、まずは全体的な回顧をゆたさんの方からお願いできますでしょうか

くらみゆた(以下、ゆ):はい、よろしくお願いします。3000m戦というところに加えて、かなり語るところの多い凄いレースだったので、本当に回顧RTAみたい(この回顧は当日16時30分に実施)な感じなんですが、補足はこひさんにお願いしたく、まずは勝馬中心に全体のところを振り返っていきたいと思います。

改めて本当に凄いレース、期待通りのクラシック最終の一冠だったと思います。昨日の展望でドゥレッツァの勝ち筋については、内に潜り込んでイン差しがハマればみたいなコメントをしたんですけれども、まさかのその上を行く逃げて内ラチ沿いを取って差す競馬っていうところで、本当にルメールに全てを超えられたというか。本当にハーツクライ有馬記念を超えたと言ってもいいぐらいのベスト騎乗だったのかなと思います。ルメールのG1ベストレースを振り返っても、確実に上位3つに入ってくるレースが今日見られたんじゃないかなと思いました。またクラシックとしても先日お話しした通り、このドゥラメンテ、キタサン、サトノクラウン世代が産駒で再戦のストーリーで、「これ最後にドゥラメンテ産駒が勝ったら綺麗だよね」って話はダービーの頃からしていたと思うんですけれども、本当に綺麗にまとまって、非常にあの世代を見ていた人たちにとっても楽しかったでしょうし、これから競馬を知る人にとってもわかりやすい良いレースだったのかなと思います。また後でも触れますけども、ドゥラメンテにとって、牡馬の後継となる最高傑作となる馬が生まれたかなとと言ってもいいかと考えています。

レースはスタート後にリビアングラスパクスオトマニカがハナを伺うところまでは予想通りだったんですけれども、ここから想定外というか想像を絶する展開になったのがドゥレッツァルメールの奇襲と言ってもいい先行策、外から進出すると坂の下りで加速するような感じで一気にハナに立って、まさかの逃げの展開という形になりました。レース後のインタビューを見てますと、最初からこの奇襲を決め打ちしたというわけではなくて、どっかで内に入りたいなというようなテンションだったけれども、出してみたら馬の行く気があったので、瞬時に切り替えてハナを取っちゃおうという戦術変更したというふうに見て取れました。ハーツクライイクイノックスでも見せてきた、ルメールの真骨頂というか、前に馬がいなくても絶対に折り合わせられるっていう自信ですね。本当に馬を御せる自信と経験というのがなせる戦術変更だったと思います。で、他馬を見てみると、タスティエーラは好位の後ろで、サトノグランツがその後ろ、ソールオリエンスがその外というところは、まあ展望の予想通りだったのかなと。ちょっと厄介だったのが、トップナイフ横山典弘騎手が出遅れて、最後方から構えるという形になってしまったので、ちょっと不穏な感じでのホームストレッチになりました(※レース後に馬体(膝)にトラブルがあった影響とのコメントあり)。

ホームストレッチは完全に馬群を引っ張るドゥレッツァというところで、大きな動きはなく、隊列は決まったように見えたんですけれども、1,2コーナーの入り口でも、トップナイフが外からまくって上がっていくというような形になってます。このタイミングではそこまでペースが落ち着いたわけではないと思うので、戦術的にまくったようには見えなかったんですけれども、これでまたさらに乱ペースに拍車がかかったという形でトップナイフは中段まで上がりました。で、またタスティエーラサトノグランツそれから外のソールオリエンスというような人気馬は中団の外で牽制しあうといった形になります。結果として昨日の話で中盤はそんなに緩まないんじゃないかという話をしたんですけれども、ハナに立ったのがリビアングラス坂井瑠星騎手じゃなくてドゥレッツァルメール騎手というところで、中盤はかなり緩む展開になりました。さらに向こう正面に行くとさらに外から、サヴォーナですね、ペースを上げていきましたので、トップナイフも中位から好位に連れて上がっていくという展開で、かなりドタバタした展開になりました。リビアングラスは道中でハナを取り直しているんですけれども、後続もペースが落ち着いたところ、12秒9、13秒1、13秒0というような展開のところでは後ろが上がっていたというような展開。その結果馬群が凝縮してきて、外からファントムシーフその後ろにタスティエーラそれがソールオリエンスというような並びになっています。こうなるともう後続は武豊のペース判断を目標にして動くというような展開だったのかなと。

この辺残り1000mくらいでやっと展望で話したような展開、隊列になってきたんですけれども、ここまでサトノダイヤモンドの菊花賞っぽくなるかなと思ったら、まさかのキタサンブラックみたいな展開になってしまっていて、ある意味昨日見直した甲斐はあったと思うんですけど(苦笑)、展望と異なる点が2点ありました。まずドゥレッツァはこのドタバタした展開で、内で自分のペースを守った追走ができているということ。多分向こう正面に入ってからもう淡々と、多分12秒台後半13秒くらいでであんまり上がり下がりのないラップを刻んで、ここスタミナをきっちり温存できていると。しかもこの後の展開を考えてもゴチャつくであろう内の影響を受けない前目のポジションというところで、本当にベストポジションを結果として……ではないですね、意思を持って取ったという形ですね。あとはもう一点、サトノグランツがこの後3コーナー手前から動けなかったというのは想定外のところでした。サトノグランツはちょっと動き出すのに時間がかかるところもあって、おそらく坂の下りで加速をつけたかったと思うんですけれども、このゴチャゴチャした展開、ペースが緩んだところもあって、武豊のファントムシーフが坂の登りの段階でちょっとずつ上がっていっているような展開となりました。そのためだいぶ厳しい追走を強いられて、スタミナを使ってしまったのかなと。最近の菊花賞はもう「ゆっくり登ってゆっくり下る」じゃなくて、「ゆっくり登ってさっさと下る」みたいなのが当たり前だったんですけど、今日に至っては多分ゆっくり登ってもいられなかったんじゃないかなというような競馬だったと思います。

直線入るところではもうドゥレッツァの方はインコースから抜け出すを図る一方で、モレイラタスティエーラも武豊を目標にしてうまく進路を確保するという展開だったので、ここでもうほぼほぼ勝負は決まった形かなと。直線バトロールビデオを見てもかなりの乱ペースということもあって、バラバラとした馬群になっていましたので、内できっちり脚を溜めたドゥレッツァが抜け出して、逃げ切り勝ちなのか差し切り勝ちなのか、上がり一位での勝利となりました。これ皐月賞馬ソールオリエンス、それからダービー馬タスティエーラを従えての結果、もう本当に文句なしの強い競馬での勝利だったと思います。

勝ったドゥレッツァですね、本当に騎手も凄かったですし、馬も凄かったと思います。中距離ベストと思われる馬だったんですけども、ルメール騎手の腕で3000mをポジションもラップの刻み方としてもロスがない競馬、自在に動いて折り合っての勝利で(鞍上の手腕に)馬も応えましたね、折り合って追走していく中できっちり脚を溜めて、34秒6で上がり1位。もう本当に完勝、完勝です。サイレンススズカとは違いますけれども、これも一つの「逃げて差す競馬」というところで最初に触れましたけど、イクイノックスシーマクラシックみたいな走りを披露したと言っていいのかなと思います。文句なくドゥラメンテの牡馬最高傑作の道を踏み出したと思いますし、ここまで本当にいろんな競馬、いろんなコースで底を見せない走りをしていましたので、この後脚さえ持てば古馬になってからさらに強くなるイメージも湧きますし、菊花賞馬が一番強い馬というクラシック、世代ナンバーワンと言っていいんじゃないかというレースだったと思います。これがレース前の尾関調教師のブログで触れられた最後の直線、哺乳類の凄みだったんですかね(笑)

蒼:これぜひ皆さん、まだ残ってると思うので、インターネットで尾関調教師のブログが見られるんですが、大変面白い表現をなさっていたので是非見てください。

NO HORSE, NO LIFE! 今週の競馬 10月第4週 その2より
https://ozeki-stable.seesaa.net/article/501194449.html

ゆ:哺乳類の凄みは何だったのか分からないですけど(笑)、少なくともこの牡馬クラシック世代における哺乳類最強の座は間違いなく(笑)

蒼:馬より速い哺乳類がどれぐらいいるのかっていうところですが、本当に言いたかったのはなんでしょう「猫科」みたいなとかよく言いますけど。

ゆ:猛獣とか肉食獣とか何なんだろうなって想像しながら(笑)、まあその真意は分からないんですけれども、本当に素晴らしい走りだったと思います。2着のタスティエーラについては、武豊騎手が前にいたというところもあって、モレイラ騎手、京都3000mという意味で言うとちょっと(慣れという意味では)不安あったと思うんですけれども、前にちょうど良いペースメーカーというか目標がいましたので、騎乗はその技術を全てを出し切って良いレースだったと思います。あとは3着のソールオリエンス、展望で触れた展開とはちょっと違いましたが、やっぱり距離適性は問われる流れでの3着でしたので、こちらの想像よりは能力を見せた走りだったのかなと。

蒼:そうですね、地力を示した感じでしたねとは思いました。

ゆ:ただちょっと走りぶりにクセがあるというか、やっぱりどうしても外を回らせるところもありますし、ダービーの時もそうなんですけれども、勝つためのパターン、バリエーションがあまり持てていない馬だったというところがあったのかなと思います。後から見ると皐月賞が本当にハマったよく勝てたなと。

蒼:そうですね、馬場とかの特殊性は今となってみるとありましたしね。

ゆ:だと思います。あとはリビアングラスサヴォーナあたりは展望でも触れましたけども、やっぱりこういう展開になってくるとキズナ系が上がってくるんですけれども、まあレース結果を見ると上からドゥラメンテサトノクラウンは例外としてもキタサンブラックキズナキズナというところで、キズナのちょっとワンパンチ不足っていうのは、ここで並んでみると出てくるのかなと。

蒼:現2歳は結構スピードのある馬が多いとおいう話はあるのでちょっと注目したいところではありますが。

ゆ:そうですね、繁殖の質が今年の2歳は一番だと思いますので、ここで本当に傑作が出るかというところが勝負になるのかなというふうには思いました。本当に今年のクラシック、ここの回顧でも振り返っていますけど、非常にストーリー性がある、いろいろな思いを抱えているというか、抱えさせられていると言ってもいいのかもしれないですけど、本当にその伏線が見事に完結するクラシックだったと思うので、語り継がれる年になっていくんじゃないかなと思います。やっぱり牡馬三冠を一頭ずつ分け合うっていうのはやっぱり面白いというのは思いましたので、ドゥレッツァに関しては多分ジャパンカップは使わないと思うんですけど、おそらく有馬記念、イクイノックス次第というところはあると思うんですけども、使ってくるとしたら楽しみだなと思いますし、もうそんな外差しとかにこだわる馬じゃなくなってきたのが明らかなので、楽しみです。ちょっと時間がない中でまとめになりましたが、以上になります。

蒼:はい、リアルタイムアタック解説ありがとうございました。それでは続きましてこひさんの方からもぜひ菊花賞の解説、感想をお願いしたいと思うんですが、よろしくお願いします。

こひ(以下、こ):はい、私もちょっとパトロールを色々見直したりしてしみじみ思ったのが、ゲームみたいに乗ってる騎手が2人いるなというのが率直な感想です。ドゥレッツァについては、ゆたさんがコメントされた通りなんですが、外枠を引いて内に潜り込ませたい馬をスタートを決めて逃げて、ちょっと控えて前に馬を入れるっていうのをギャロップレーサーとかG1ジョッキーでよくやっていたなと。普通、やっぱり馬ってそんなに簡単にコントロールできないので、あれってゲームだから成り立つことであって、普通はそれで勢いを出してハナに行った後にきっちり折り合わせて収めていくのは非常に難しいはずなんですけど、それを事も無さげにやってしまうルメール騎手とドゥレッツァという馬の、コントロール力の高さというところがもの凄いなと思いましたね。ルメール騎手は色々すごい騎乗をしてきている騎手ではありますが、個人的にはレイデオロのダービーを超える衝撃的なレースだったなと思います。やはり力のある馬がその内のいいポジションを取って抜け出すという形をしたので、いわゆる菊花賞の穴馬にありがちな内からせこい乗り方をするというタイプの馬は馬券内までは入れない、そういう形になってしまうレースだったと思います。

改めて見直しているとタスティエーラモレイラ騎手もすごく良いんですよね。向こう正面から先ほどゆたさんからのコメントがありましたファントムシーフ、武豊騎手の後ろに行ったんですが、そのあと3コーナー4コーナーのところで普通の騎手は京都のコーナー外にあるけど振られてスピードつけていくんですが、一頭だけすごく美しいコーナーリングをしてむしろファントムシーフより内に行っているんですよね。実際直線では何気にサヴォーナの池添騎手が結構直線豪快に外の方に行っていて若干外の馬が寄られてふりを受けるような場面があったんですけれど、その内側をタイトに回って突き抜けるというような進め方をしてまして、モレイラ騎手もちょっと信じられない、ゲームのようなコーナーリングをして抜けてきていたというような印象です。実はモレイラ騎手も100点ぐらいの競馬の方をしていたんじゃないかと見ています。ソールオリエンス横山武史騎手もそういう意味ですと何か悪い騎乗をしたわけではないんですよね。この馬の器用さですとかそういうところを踏まえて、多分できる騎乗はやった結果に見えていまして、この1,2,3着というところで言いますと、騎手がプラスアルファでとんでもないものを出したかというところで着順は分かれてしまいましたが、本当に3冠最終戦にふさわしい、名手同士の腕比べになったかなというふうに思います。

そうなってくるとなぜサトノグランツ、川田騎手はあんなに動けなかったのかというところになるんですが、ここは道中モレイラ騎手と横山武史騎手がうまく封じ込めていたような形になっていまして、サトノグランツとしてはタスティエーラの後ろですね、そのあたりにいたんですが、外をずっとソールオリエンス横山武史騎手がブロックをしていて、この馬自身は多分早めに動かしていって徐々にアクセルを動かしていってスピードを上げていくタイプの馬でもあるんですけれど、なかなか自分から動けるような状態に持っていけるシーンがなかったなというふうに見ています。このあたり川田騎手はかなりレース前に分析するタイプだと思うのですが、ここまで馬群が圧縮されるペースにはならないと思ってたんだろうなというところは後から見ていて思ったところではあります。特にパトロール見ていますと向こう正面では内から外までの10頭分ぐらい横にバーっと広がってるんですよね。なかなか3000mのレースで馬が横に並んでいるようなペースになりまして、やはりそういう状況で自分から動いていくには早めから外に向けるしかなかったんですけれども、その選択肢が塞がれていた時点で全てが後手後手に今回は回らざるを得ない、そういったレースだったのかなと見ています。

最後やはりこういうレースで先ほどゆたさんからもコメントありましたが、キズナ産駒がきっちり途中から自分の競馬をして早めにアクセル踏んで上げていって、リビアングラスサヴォーナというところが4着5着というところに入りましたが、一方的にもそうですが、騎手が坂井瑠星、池添謙一というような、やはりG1で勝負駆けができるタイミングで騎手がちゃんとそういう馬をきっちりと操って結果を残したというところで、私は昨日の展望ではこの辺りがやはり一番の穴馬候補じゃないかと言ってたんですが、ちゃんとやるべきことをやってとはいえ、上位3頭の騎手が誰も隙を見せてなかったなというのが思ったところですね。

最後勝ちましたドゥレッツァですが、菊花賞をこのペースを内で最後まで我慢して抜け出す競馬をしながら上がりが最速で三馬身半差というのはかなり決定的には見えるかなと思います。最後の一冠を獲ったんですが、現状でやっぱりもう世代最強と見ていいんじゃないのかなと思います。今後有馬記念だろうか、どういったところになるかわからないですが、イクイノックスがどうやら今年で引退そうな雰囲気がいろんなところで出ているところと、ルメール騎手は引き続き乗っていけるチャンピオンホースを手にしたというところかなと。またドゥレッツァにとっても、ルメール騎手を当分どこに行くにも確保できるタイトルを得られた、そういうレースだと思いますので、ドゥレッツァ自身にとっても、ものすごく大事なレースだったかなと思います。最後にこのクラシック戦線というところで思いますのが、先ほどありましたドゥラメンテキタサンブラックリアルスティールそしてサトノクラウン世代がそのまま、産駒としてこの世代のキーになっていたというところがあります。このドゥレッツァタスティエーラ、そして今回菊花賞は回避して香港に行きそうなレーベンスティール、そしてダービーでちょっと残念なことになりますがスキルヴィングその全ての産駒がキャロットクラブの募集馬で結果が出ているというのは凄いなと思いますし、そのキタサンブラックの世代でキャロットクラブのアヴニールマルシェに出してかなり歯がゆい思いをした自分にとっても何とも言えない感慨深さがあるクラシックで非常に面白いなと。ただこの4頭のうちのどれかぐらいは出資したかった、というのはあります(苦笑)

蒼:そうですね。こひさんはアヴニールマルシェに元々出資なさっていたと、そして実はサークルメンバーで同じくアヴニールマルシェに出資していて、今回ドゥレッツァに出資していたメンバーがおりましてね。もうこれはかなりのエンドロール、今いいエンディングを京都で迎えているのではないかと想像しております(笑)。

こ:本当に非常に良いレースを見せてもらった、プラスこの世代のクラシック路線というところですね。やっぱり三冠を全て違う勝ち馬でありながら、皐月賞馬、ダービー馬が三冠を皆勤しているというのがよいなと。そういったところも含めて非常に面白い世代でしたし、今後古馬との対戦も楽しみにしています。はい、以上です。ありがとうございます。

蒼:それではお二方から感想いただきましたが、お互いのコメント追加はございますでしょうか。

ゆ:ルメール騎手の話が最後こひさんから出ていたんですけれども、巡り合わせですね。スキルヴィングが無事だったらドゥレッツァルメールが乗っていたか分からなかったのかなと思うと、本当に無事であること、そういうのの大事さもありますし、事故があっても競馬が続いていくとかそういうところ。競馬は難しいなという思いと、それでいてアヴニールマルシェの悔しさをドゥレッツァで晴らす人もいたりというところで、悲喜交々だなというところは改めて思ったところではありますね。あとやっぱり最後こひさんからもありましたし、私も触れましたけど、やっぱり三冠のレースを皐月賞馬がダービー馬が全部走って、3つを分け合う、しかも菊花賞を上がり馬が勝つというのは、本当にクラシックのクラシカルなストーリーとして完璧なのかなと思います。なかなかこの時代菊花賞に対してこれだけの想いを持てるローテーションは取りづらいところであるんですけど、こういうレース見せられると非常に三冠というギミックは面白いなと思いますし、その背景にはやっぱり来週の天皇賞秋が少頭数になっている、イクイノックス、ドウデュースに勝てるのか3歳でいうところも踏まえての菊花賞の充実だったと思います。番組編成、ローテーション、菊花賞の距離短縮論含めてG1の舞台設定って議論が出るんですけれども、結局どのカテゴリーにも強い馬がいれば別に全部面白いんですよねっていうのがちょっと思ったところです。なので、目先の菊花賞が手薄になって、3000mは回避されがちなみたいなは話があっても、単純に短くすればいいってもんじゃないんだなと。やっぱり競馬はエンタメなんで、こういうストーリーが10年に1回でもいいから生まれる舞台設定というのは残していかなきゃいけないんじゃないかなと。10年のうち8年三冠路線が微妙でも、一頭三冠馬が出て、1回3冠を分け合う年があると、それだけで競馬としてのエンタメの強度、ストーリー強度が上がってくると思うので。私も昔は菊花賞3000mとか天皇賞春3200mってどうかなて思う時期もあったんですけれども、こう長年見てやっぱり10年に1回でもこういう3冠馬だったりとか、この3冠を分け合うストーリー、しかもお父さんがクラシックを走ってたみたいなの見せられると、やっぱり目先のレーティングとか、ローテーションだったりというところで番組をいじっちゃうっていうのはエンタメとしてよろしくないのかなと思ったところでありました。はい、以上になります。

こ:三冠の価値っていうのは非常に先週今週と感じさせられましたたね。今回久しぶりに京都競馬場に帰ってきた菊花賞という形だったんですが、京都競馬場がリニューアルされてから三冠馬銅像のロードができたりとか、全く趣旨はわからないんですけど、三冠馬の名前を書いた立て札とか結構全面的に三冠の最後の競馬場であるというのをすごく押し出している形なんですよね。5月ぐらいにリニューアルオープンして始めていた時には、さすがにちょっとこの三冠推し、ごり押し過ぎて、コテコテすぎないかなと思ってたんですが、秋華賞で苦しみながらも川田とリバティアイランドががすごい勝ち方をしたり、今回の牡馬三冠を分け合うプロセスですとかそういったところを見ているとやっぱり三冠大事だし、そういったところを強めに押していくことで、いろんな人にやっぱり三冠という体系、歴史的にもこれがあるからこそ生まれる物語、生まれてくる競馬があるということを伝えるという意味ではすごくいいものだなと。ちょうど昨日その三冠馬ロードを歩いてますと、もうじきリバティアイランドの銅像が来ますよ、というのが英語で書いてあって「うわ、仕事早いな」と思ったんですけどそれぐらいでもいいなという気持ちになりました。やっぱりこういった日本競馬が第一で三冠という考え方、海外遠征ですとかいろんなところで揺れるところがあるんですけれど、改めていいなということを感じさせられたなというふうに思います。

蒼:お二方ありがとうございました。来週も天皇賞で超豪華メンバー、怪獣大戦で贅沢ですね。

ゆ:いや、ホントに。牡馬牝馬クラシック、古馬戦線もどこを取っても充実しているというのは、競馬を趣味にしてるとつい始めた頃、昔の方が面白いと言いがちになるんですけど、「絶対今の方が面白い」と言い切ってもいいのかなという今年のG1戦線ですよね。

こ:本当ですよね、G1の谷間の週もブリーダーズカップがあって、日本馬がいっぱい出ると。全く谷間ではなくなっている、谷間なんかどこにもないなというのを思いますね。

蒼:天皇賞終わって一週開くのは結構前からですけども、そこにBCがあるのも運命的というかそうですね、すごく形として面白いですね。来週も展望と回顧を予定していますので、是非よろしくお願いします。

第26回富士S

蒼:本日行われた富士Sの回顧の方に移りたいと思います。こちらはゆたさんの方からまずお願いします。

ゆ:はい、お願いします。マイルチャンピオンシップの前哨戦ですが、最近は有力陣はレース間隔をとって、それこそ毎日王冠とかを選んできますので、ちょっとG1に届かない馬とかG2レベルの馬というのが集まりがちなレースという形ですね。今年の面々もそういう形かなと思っております。

レースの方は、ユニコーンライオンが前を伺ってきたんですけれども、横山典弘騎手のダノンタッチダウンがかなり強くハナを主張して、いわゆる前ポツンってやつですね、というところで正直想定外の展開だったと思います。久々のステラヴェローチェとかユニコーンライオンがそこそこ追いかける形になりましたので、前半の3ハロンが34秒0、その後も11秒2,11秒5というところで、結構息の入らない流れ。

蒼:1000m通過56秒7、結構締まっていますね。

ゆ:古馬の東京マイルのG2は安田記念とは違って、だいたい緩い流れになりがちというイメージがあるんですけれども、今日のレース12頭立てにもかかわらず、結構流れたレースになったなと思います。その結果、後方に有利な展開で直線入りましたので、馬群を割ってきたナミュールレッドモンレーヴを振り切って1着。3着もソーヴァリアントと差し決着という結果になりました。かなり展開が左右したレースだったかなと思います。

勝ったナミュールですけれども、モレイラ騎手が上手に乗っていたと思います。割と前回来日したときは、先行して押し切るような競馬が目立っていて、マジックマンというよりは結構豪腕で勝ったレースが多かったイメージだったんですけれども、今日は差し馬で見事な競馬だったと思います。バトロールビデオとか見ていても、スタート直後に一回外に出せそうなタイミングがあったんですけれども、内ラチ沿いが空いたらすぐに内を確保して、府中はコーナー緩いですがきちんとタイトに回って直線に向かいました。直線も前が壁になりそうな展開だったんですけれども、戸崎騎手のジャスティンスカイがちょっと外に流れた瞬間ですね。本当に1頭分ビシッとねじ込んで抜け出して、最後まで止まらずという勝利だったので、非常に上手かったなと思います。余談ですが、1頭分空いたところで、戸崎騎手が左ムチ持ち替えずにそのまま走って締められずに進路を空けていたので、そういうところ、馬を思い通りに走らせられない、いつも直線の進路をなくして、馬群を割れない課題が今日も出たのかなと思ったところであります。ナミュールに関しては、かなり展開が向いたというところはあるんですけれども、結構ペースも速かったのでマイルチャンピオンシップに、それなりに繋がってもおかしくはないレースだったかなとは思います。ただ、本番はどうしても他の馬の力が上がってくるので、瞬発力が足りないというところと、今回は綺麗に抜け出せたんですけれども、割と不利を受けやすいようなタイプなので、その辺がちょっとどう出るかなというところで、枠順などには注意したいなと思いました。

2着のレッドモンレーヴは休み明けというところを、よく追い込んできましたが、このメンバー、この流れなら来て当然という流れでもありましたので、この馬も次層の相手次第かなというふうに思います。あと3着ソーヴァリアントは距離短縮で好走できましたので、今後選択肢が増えたというところは良かったかなと思いますが、G1取りってなるとちょっとまたパンチ不足があるので、逆に選択肢が増えた中でどういうレースを選んでくるのかなというのは楽しみに見ていきたいなと思いました。

蒼:ソーヴァリアントチャンピオンズカップとかもいっても面白そうなんですけれども、ここで好走しちゃったんで、そうはならないでしょうかね。

ゆ:そうですね、オルフェーヴルなんで、適性というよりもごちゃごちゃしたというか、精神力を問われるレースを選んでいった方がもしかしたら良いのかもしれないですね。

蒼:それでは続いてこひさんの方からもお願いします。

こ:先ほどゆたさんからもありましたように、ペースがかなり締まった形になっていた中で、距離短縮の明暗が分かれたなという風に見ていました。今回やはり中距離から持ってきた馬が一発目でマイルの流れを体験するにはかなりペースが速かったかなと思いまして、キラーアビリティが序盤後ろに取り残されて直線上がり34秒3を使いながら殿負けをしていたのは、結構象徴的な形かなと思っています。その流れの中でソーヴァリアントが割と一発である程度適応できていたというのは、かなり見どころがあるレースだったのかなという見方をしていまして。逆にこの後マイルに慣れている上積みみたいなところがあるんだとすると、次楽しみはあるんじゃないのかなと。気持ちのある騎手でもありますので、そういったところは期待したいなという風に思いました。

あとは1年半ぶりという超久々で距離短縮でありながらステラヴェローチェが前に行って意外に大負けしてないんですよね。本当に不思議な馬だなと思いましたが、母はオーマイベイビーですので、父バゴというところはあるんですが、意外にマイルぐらいでそれなりにそこそこ使えてしまうのではないかなというところで、能力を示したというところは見つつも、次どこ使うんかなというような、そんな印象も受けたレースでした。

2歳戦プチレビュー

2023年10月21日 東京第9R アイビーS(勝ち馬:ダノンエアズロック)

こ:私の方からアイビーステークス回顧の方に行きたいなと思います。アイビーステークス東京戦、初のリステッドということで、しっかり本賞金が詰めるレースなんですが、今回はしっかりここを狙ってきた馬が揃っての少頭数というような形の構図になりました。結果として、6月に東京の新馬を勝って久々になりましたダノンエアズロックが連勝を決めたというような形のレースになりました。レースはこの時期の2戦目らしいペースで、中盤にしっかりたるんでいて、逃げたホウオウプロサンゲでの坂井瑠星騎手がきっちりペースを落としてコントロールしていたというような形。また2番手にダノンエアズロック、それをマークするような形でレガレイラですね。こちらちょっとスタートで遅れたこともありましたが、その後ろの3番手ということでほぼほぼ3頭のマッチレースみたいな形になったかなと思います。

勝ったダノンエアズロックですが、レースの上がりが33秒1ということで、この馬自身が32秒7で飛んできているというような形で、新馬の後も取り上げたような記憶があるんですが、初戦は結構乱れたペース、速めのペースで流れていて、この馬自身も上がりが35秒2で先行して勝ち切るというような競馬をしていました。全然タイプの違う東京戦のレースを2つ勝ち切ったということはすごく価値があるんじゃないかなと思いましたし、今回馬体重が夏と比べて20kg増えるということで非常に馬自身のパワーアップを感じられたかなと思います。課題があるとするとパトロールを見ていると、3着に負けましたレガレイラの前をダノンエアズロックは何度も何度もフラフラしていまして、直線はあまりまっすぐ走れていないことによるロスというのは結構あるなと思いました。デビュー戦はモーリスぽさで、今回は母親っぽさがなんか感じられるような形で非常に引き出しが多い印象なので、さらにパワーアップしていって、先ほど言いましたまっすぐ走れるようになるともっと上積みがあるんじゃないかなと思いました。

逆に3着だったレガレイラの方はそういった形で追うスペースが取りにくかったなというところはありつつも、勝ち馬を追い詰めるというような競馬はちょっと難しかったような印象です。新馬でいいパフォーマンスをして次のちょっといい手応えから伸びきれずというところは、母の名前がロカと書いてあるとなるほどなというような印象もありまして、若干人気が過剰気味になるだろうなという馬ではあるだけに、ちょっと馬券的な取り扱いは気をつけたい馬だなというふうに思いました。あとは2着のホウオウプロサンゲですね。これはもうほんと坂井瑠星騎手がうまくペースをコントロールしてキズナらしい前受けの形でしっかり結果を残したというような形かなと思います。

蒼:はい、ありがとうございました。ではゆたさんからも何かございましたらよろしくお願いします。

ゆ:グラ基地としてはかなり大物感があるレースぶりだったなというふうに思ってまして、先日シュトラウスがまあ予想はしていたもののちょっとやらかしたというような感じだったんですけど、今回ダノンエアズロックの方は期待を超えるような走りを見せてくれたのかなと思ってます。DDSPがちょっと気になるというところぐらいが多分一番ネックだと思うんですけれども、こちらは成長である程度変わってくるところでもありますし、堀厩舎ですのでその辺しっかりメンテナンスというか対応してくるでしょうし、あとやっぱり賞金詰めてますのでその後はローテで無理する必要もなくなってきているというところで非常に楽しみだなと。走るフォームも本当に別馬のように良くなったような気がしましたので、ちょっと詳しいところまでも私も専門外ですが、いい馬だなと改めて思いました。

2023年10月21日 京都第4R(勝ち馬:ケーブパール)

こ:牝馬限定1400mを勝ちましたケーブパールですね。かなり派手な追い込みを決めていて、私はたまたまこのレース現地で見ていたんですけれど、京都の1400mの新馬戦で2着3着4着は先行したのが残っているレースなんですけれど、そこで1頭だけ34秒0の上がりを使って後方から差し切ったというところのレースぶりが1つ目立ちました。またこれが父がブリックスアンドモルタルで母父がディープインパクト、母母父がキングカメハメハというところで、今の日本の血統のトレンドにブリックスアンドモルタルというような形で、ディープインパクトっぽい瞬発力特化が出たというところであります。先日のサウジアラビアロイヤルカップですとか含めて、このパターンが本当にいろんなサンプルが揃ってくるようになりますとある種非常に溢れておりますキレるディープインパクト牝馬にはブリックスアンドモルタルみたいな可能性が増えてくると思いました。レースぶりもかなり大外からイカれた脚でブッ飛んできているので、是非チェックいただきたいとです。以上です。

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