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ダートグレード牝馬路線定点観測(2023年12月号)

 現行のダートグレード路線もフィナーレを迎える2023年末の12月。ダートグレード牝馬路線としてのレースはありませんでしたが、チャンピオンズC神奈川記念名古屋グランプリと牡馬相手に戦う馬たちにより、見どころは多い一ヶ月となりました。まずは11月末に船橋競馬場で行われましたクイーン賞の振り返りから。※

 展望でも触れましたが、絶好の大外枠を引いたテリオスベルがどんな競馬をするのか、1角からまくれるのかが大きな焦点でしたが、なんとテリオスベルは押しても叩いてもなかなか行けず、1コーナーでは5番手。とはいえ、向こう正面では逃げていたパライバトルマリンに並びかけ、道中全く息が入らない展開になりました。こうなるとたまったもんじゃないのは並ばれたパライバトルマリン、この展開でも決して止まらないテリオスベルに対して抵抗するも直線半ばで力尽きます。こうして前二頭が激しくやりあうのを最内枠からロスなく運んで見ていたライオットガールが、直線では鮮やかに突き抜けました。この隊列とペースになった時点で、ライオットガールは展開的にも一番美味しいポジション。これであればレパードSを牡馬相手に制した実力的にも負けられないレースでした。

 勝ったライオットガールはこれで重賞二勝目となり、ダートグレード牝馬路線では安心して出走できるレベルの賞金額に到達。来年の主役を務める一頭になるのではないでしょうか。自身の乗り継ぎミスによる遅刻でJBCレディスクラシックで関係者にも迷惑をかけた鞍上岩田望来ジョッキーにとっても、ここでしっかりタイトルを積み重ねられたことは価値が大きいでしょう。
 2着のテリオスベルはもう見事な円熟の伝統芸ですね。進んでいかない、でも外で前に馬がいないところを走ることができれば能力は出し切れる、そして直線は決して止まらない、持ち味を発揮しきってパライバトルマリンを潰し切ったのはさすがです。3着のパライバトルマリンについては、ある程度前ですんなり運びたいタイプなだけに、テリオスベルは天敵ではないでしょうか。レース後も陣営から悩ましいコメントも出ていましたし、同じマッチアップが続くのがダートグレード牝馬路線。賞金を積めなかったことも痛かったですし、課題が残るレースとなりました。補欠から繰り上がったビジンは、ダートで準OPまで上がってきた馬とはいえ、このメンバー相手では分が悪い結果となりました。

 続きましては、牡馬相手にアイコンテーラーアーテルアストレアの二頭が挑んだチャンピオンズカップの回顧記事です。アイコンテーラーはキックバックが堪えて、アーテルアストレアは枠も含めてもう少し恵まれたかった、そんなレースになりました。

 そして今年一年限定で突然誕生した謎の重賞神奈川記念。こちらは福島ダート1700mのハンデ戦みたいな流れになり、ヴィブラフォンキャリックアリードの牝馬ワンツーという快挙となりました。こちらも回顧記事をどうぞ。

 2着だったキャリックアリードですが、レース後に南関東への転入が発表に。この後ご紹介しますボーダーでもわかりますが、ここで賞金を積めないことでしばらくダートグレードの牝馬限定戦の出走枠は回ってこないであろう状況。引退までの一年三ヶ月を見据えての迅速な決断で、神奈川記念で地方競馬の砂への一定の適性を示した点を考えてもとても良い決断ではないでしょうか。地方代表としてダートグレード競争でも、存在感を出してくれるのではないでしょうか。楽しみです。

 そして下旬には名古屋グランプリ。ここにはグランブリッジテリオスベルの牝馬路線を代表する二頭がチャレンジをして、勝つことはできませんでしたが牡馬に通用するところはしっかり示してくれました。※

 スタートからコーナーまでの距離が長い舞台設定を求めてきたものの、なんと1番枠を引いてしまったテリオスベル、いったいどういった競馬になるのかという点、そして逃げたい馬が揃った上にテリオスベルがいる環境が多分向くであろうグランブリッジが、ディクテオン相手に勝ち切れるかという点が見どころでした。

 レースは序盤からまさかの展開。出遅れて押して押しても先行できないエリオスベルは何とグランブリッジを前に見る形になり、マテリアルガールミトノオーメイショウフンジンが競りかけて行って前はハイペースを刻み続けることに。しかし飛ばしていく前と離れたグランブリッジテリオスベルの間にはかなり差があったのが良かったのか、インを開けて外を回していくグランブリッジの動きもあり、テリオスベルはまさかのインからのまくりを2コーナー過ぎから敢行。逃げてなくても前に馬がいなければいいのかーと唸らされる騎乗で3角先頭に、とはいえペースはいくらなんでも乱れていたので、外から来たディクテオングランブリッジに交わされての3着でした。グランブリッジディクテオンと真っ向勝負に持ち込みましたが、先に動いたディクテオンが外の伸びるコースを通って進出したものの、インから先行馬をパスしに行かざるを得なかった分の差か、差は詰め切れずの2着でした。

 負けたとはいえ、グランブリッジは牡馬相手でも、1.5線級相手であれば十分通用しそうなところを見せてくれました。来年の牝馬路線はローテーション的にも使えるところが限られても来ますので、合間でどんなレースを選んで牡馬相手に戦うのかも楽しみになります。
 テリオスベルについては、こんなこともできるんだと改めて感心させられるレース。少しでも馬が走りやすい環境に導こうとする鞍上の手腕も含めて、本当に毎回見ていて楽しくなる馬です。

 こんな感じで最近はさらに出足がつかなくなりつつあっても、それでも力で牡馬相手でも戦えてしまうテリオスベルですが、厩舎のブログにて2024年からの繁殖入りが発表されています。クイーン賞か、ダイオライト記念か、それとも両方か、どういう使い方になるかはわかりませんが、あの個性的なまくりを見られるのもあと少しです。近年のダートグレード競争を大いに盛り上げてくれた超個性派コンビのテリオスベルと江田照男を、最後まで眼に焼き付けましょう。

  それでは、12月の状況を踏まえました最新のボーダーになります。2024年2月のクイーン賞に向けたボーダーです。

2024年クイーン賞出走順(2023/12/31現在)

 神奈川記念を制したヴィブラフォンが大きく賞金を積み上げ、パライバトルマリンを上回るポジションまで来たのが大きな変動になります。クイーン賞は既に出走意思を示している馬が4頭。フルゲートも4頭になりますので、このままサーマルソアリングVSオーサムリザルトの注目の4歳上がり馬2頭がエントリーできるのか、他馬のエントリーにより2頭での抽選になるのか、どちらも補欠になってしまうのかは予断を許さない状況。個人的な興味としてはクイーン賞での直接対決を見たいのですが、出走が叶わなかった際に牡馬相手のオープン特別であれば、当然人気するレベルでしょうし、そちらでも戦えるだろうなと思っています。

 そして今月の大きなトピックは、リストの一番下にあるデリカダ。いよいよ、1月にはレースでその走りが見られそうです!1年9か月ぶりとなる復帰戦は現状、門司Sを予定。無事にゲートインできることを願っています。
 その復帰に向けて、期間限定と思われますが、厩舎スタッフと思われる方がXでの投稿をスタートさせています。3歳で示した力が発揮できれば、勢力図を一変させるだけのポテンシャルを秘めている馬だと思います。Xを見ながら、復帰を楽しみに待ちましょう!

 最後になりますが、ダートグレード競争牝馬路線定点観測、無事に一年続けられました。来年は路線も大きく変わってきますので、ローテーション等さらに深堀していければと思います。引き続くよろしくお願い致します。

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