祝・電子書籍化!「アンエイジング」ってこんな本② 訳者・田平 武先生インタビュー! 深堀り『アンエイジング』
≪はじめに≫
「人生100年時代」の現代.誰もが健康で長生きしたいと思っているのではないでしょうか.「認知症にならずに元気でいたい」「健康な心身を保って生きたい」等々….『アンエイジング―4つの予備能を生かして老いを防ぐ方法 鍵をにぎる腸内細菌』では,米国・ルイビル大学の神経内科医の著者ロバート・P・フリードランド先生が,健康で長生きするための方法を述べています.
本書はこのほど,電子書籍版も発行しました.そこで今回は,訳者の田平 武先生(順天堂大学大学院医学研究科認知症診断・予防・治療学講座 客員教授 )に「アンエイジング」や老いについて,インタビューをさせていただきました!
老いは不可避ではない
編集部:本書で「『アンエイジング』という言葉を初めて知った」という方がほとんどかと思います.初見では「アンチエイジング?」と思う場合が多いかもしれません(恥ずかしながら,担当者がそうでした).そこで,既存の用語アン“チ”エイジングとは「ここが違う!」というポイントをお聞かせください.
田平先生:アンエイジングというのは,ケンブリッジ大学出版局の造語なんですね.新しい言葉だと思います.
「アンチ」と言うと,アンチボディやアンチバイオティクス,抗生物質ですね.抗するという意味です.つまり,アンチエイジングと言うと,老化に積極的に抵抗して克服しようということです.それに対してアンエイジングというのは,「エイジングではない」という意味です.積極的に抵抗して何かを行う,という趣旨ではないのです.
いつまでたっても元気な人がいっぱいいますね.それはどうしてかというと,生活スタイルを選んでそうなっているのでしょう.つまり,私たちがそうした良好な生活スタイルを選ぶことによって,よい健康レベルを維持しながら,認知症にならずに生きていける,老化ではない道を選べる.こういうことがアンエイジングなのです.
要するに,本書の帯にも書いてありますが,『老いは避けられないものではない』.これがアンエイジングです.
編集部:本書の翻訳にあたり,一番苦労されたことがありましたら教えてください.
田平先生:あまり苦労していないです.わからない箇所はフリードランドにメールで聞きましたし,ある程度知っている領域ですからあまり怖くなく,楽しく訳せました.
アンエイジングは若いうちから
編集部:担当者(27歳)が拝読していて,人生の先輩から「健康で長生きするためのアドバイス」をもらったように感じました.若いうちから「アンエイジング」のために気をつけておくべきことはありますか?
田平先生:本書に出てきますが,アンエイジングというのは子どものときから始めなくてはいけないということが言えるでしょう.たとえば,(本書で紹介されている認知的,身体的,心理的,社会的,の4つの予備能のうち)認知的予備能は,教育です.子どものときにしっかり教育するとよい,ということです.体力も同じで,健康な人はやはり若い頃にしっかり体力づくりをしているのです.(年を重ねる)途中からでも増やせますが,やはり若いときに体力をつけたほうがいい.
そういう意味で,27歳というのは,まさに今が大事ですね.こうしたところに気をつけていれば,かなり長寿になりますよ.
「生きる意味」を持つ人は長寿
編集部:名言や箴言,映画,著者の趣味のテニスなどの話題を随所に盛り込んでいるのが本書の特色です.先生が翻訳される中で気になった名言やエピソードなどがありましたらお聞かせください.
田平先生:勉強になったなと思うのは,やはり「生きる意味」を持つ人は長寿であるということですね.「生きる意味」を持つことは本当に大事だなと実感したのです.私の場合は,やはり医者ですから,治らない病気を1つでも治す――そうしたことを成し遂げて一生を終わりたい.そうしたところに生きる意味を持っているので,やはり今でも元気で論文を読んだり,研究したりしています.
本書に出てくる『ガリバー旅行記』の話も面白かったですね.話の中で「ストラルドブルグ」という不死の人間が出てきますが,死なないけれども普通に老化する.ですから,老化によってみじめな状態になることに対して,神様が死という終止符を打ってくれる.非常に大事なプレゼントだった,という話です.
食事と運動,そして趣味
編集部:先生ご自身が,アンエイジングのために実践されているお食事の摂りかたや意識している生活習慣などがありましたら教えてください.
田平先生:本書に書いてあるとおりのことをしています.オリーブオイルも摂りますし,赤ワインや日本酒も飲みます.実は,お酒は飲んではいけないということは書いていないんですね.
それから,やはり腸内細菌です.ものすごい数の腸内細菌が私たちの健康を左右しています.古代人が持っていた腸内細菌をそのまま引き継いで,今ここに生きているのです.ですが,100年くらい前から私たちの食べ物がうんと変わった.油っこい食べ物など食生活の変化によって,腸内細菌は今や瀕死の状況です.そして,生活習慣病を起こすような細菌がどんどん増えている.これによってコレステロールは高くなり,高血圧や糖尿病になり,あらゆる病気を引き起こす.
古代人が持っていたような良質な腸内細菌を増やすためには,今のような食事ではなくて,全粒粉のものを食べたり,発酵食品を口にしたり,大きな魚でなくて小さな魚を食べればよいのです.そうしたものを食べていれば,きっとよい状態になれる,ということが本書に書かれています.
私は畑仕事もしていますし,運動もよくしています.趣味を持って暮らしているのです.合唱もしていますし,ジャズダンスもしていますよ.ダンスは70歳になって始めました.
編集部:本書では運動や食生活,人工知能,SNS,医師や薬との付き合い方まで幅広く語られていますが,先生のご友人や知人の方々に個人的におすすめしたい項目がありましたらお聞かせください.
田平先生:何といっても,運動と食事の箇所ですね.ほかの何よりも,ここだけはしっかりお伝えできればと思います.本当に皆さんにわかっていただけると,もう薬はいらない.今,認知症のいろんな薬が出ていますが,この本のとおりに忠実に生きていけば,そうした薬も必要ないかもしれません.
≪おわりに≫
誰もが「避けられない」と捉えている「老い」.しかし本書には「加齢に伴う機能低下はしばしば避けられるので,老いは避けられないものではない」と書かれています.田平先生は70代でパワフルに働かれており,「先生は若いですね」とよく言われるそうで,お話を聞いていて「老いは不可避ではない」ことを実感した担当者でした.
この記事をご覧いただいた方には,ぜひ本書をご一読いただき,年をとっても老いない方法を見出していただきたいです.
最後に,編集部担当者の心に響いた「老いないための名言」をご紹介して,本稿を閉じます.
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