現代の松下村塾?「小田原版リアル寺子屋」が開催されました
小田原市にある大久寺(だいきゅうじ)で5月14日、「小田原版リアル寺子屋」が開かれました。
お寺の近くに住む井手英策さん(慶應大学教授)が「どんな会社に入れるか」を考えている大学生に、もっと自由に生きられる道があることを地元に住む「生きる名人」とともに伝えようと企画したもの。
「楽しんで生きてる人たちに先生になってもらって、いろんな生き方があることを伝えてもらおう」という呼びかけで開催されたプロジェクトの第一弾でした。
80人ほどが集った「寺子屋」
聞けば、会場となった大久寺の住職が井手教授のもとで学んでいたとのこと。誰もが学べる場を作ろうとしていた井手さんに、お寺を開かれた空間にしたいと思っていた住職が共鳴し、今回のプロジェクトが動き出したようです。
会場に着くと、参加してるのは老若男女さまざま。数えてみると、大学生は約15人、それ以上に大人が4〜50人、さらに20人ほどの子どもたちがお寺に終結しました。
初回のゲストは小田原在住の農夫である加藤憲一さん。
加藤さんは学生時代から、点数の大小や成績の優劣で価値が決められる偏差値教育に矛盾を感じていたそうです。
彼自身が今回の企画にも関わる「はじめ塾」で生きる力を育み、農家になり、山でも海でも働き、小田原市長を3期(12年)務めた半生を話されました。
講義の後は手づくりの豚汁とおコメ
話を聞く子どもたちもいたかと思えば、お寺の周辺で駆けっこをしてる子たちもいて、誰かしらの親が面倒を見られる環境でした。
親たちも安心して加藤さんの話を聞ける環境で、みんなワチャワチャしながらもゆったり過ごしていました。
会が終わると、「はじめ塾」で学ぶ頼もしい方々が薪を割り、火を起こし、羽釜でご飯を炊き、豚汁を用意してくれました。
松下村塾と「はじめ塾」
加藤さんが講演で話されていた中に、吉田松陰の話が出てきました。
吉田松陰は幕末に山口県の萩に無償で学べる「松下村塾」を開いた方。そこは学びながら、生徒が米を持参して、学びと暮らしを共有する場でした。
たまたま私は卒論でそれを取り上げ、「現代には松下村塾は成り立たない」と結論づけた覚えがあります。
今日聞いた話では、加藤さんが通い、今回のご飯をみんなで作ってくれた「はじめ塾」のメンバーは、「|一心寮《いっしんりょう》」という学ぶ子が寝泊まりできる寮もあり、国語や算数を学習するだけでなく、食べ物をつくることまでみんなでやる場所と聞きました。
あれ?現代版の松下村塾が小田原にあるのかな?と知的好奇心の湧き立つような空間でした。
来月にもまた開催されるようです。楽しみですね。
ところで、今回のプロジェクトは参加費が無料でした。
食材費や場所代はどうしてるのか?井手さんに聞くと、彼が1年間無償で開いていた講座の受講生が寄せてくれた資金を充てているようです。教える労働で寄せられたお金を、地元の学び舎にあてるという、地域住民にとってはありがたいことです。
また次の機会も楽しみにしましょう。