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リフレ派に関する連載ウォッチ#10

武田真彦教授の連載12回の第10回は「異次元緩和」と言われたQQEが日本経済に与えた好影響と悪影響に関する記事です。(*1)

武田氏の記事では、小さな好影響と小さな悪影響があったという評価をなさっているようで、これを「微益微害」と表現なさっています。
一般人としての僕のQQEの評価は、雇用環境を大きく改善させ、名目GDPを約60兆円増やし、デフレとは言えない状況に持っていった効果はある(マクロ経済政策の財政政策で緊縮策を行ったため、その効果は減らされてしまったが)、となります。

武田氏の記事(*1)では、QQEの効き過ぎ、副作用についての言及は有りました。しかし、旧日銀やその関係者や日本の多くのエコノミストたち(反リフレ派)が否定してきた「金融政策によるデフレ脱却効果があるのか?」、言い換えれば、「QQEは効くのか?」という点への言及がなされていません。
武田氏のこれまでの9回の連載では、QQEの効果を完全否定はしきれていません。

「QQEは効くのか?」も含め、反リフレ派の立場を僕が代弁してみたいと思います。
QQEは、反リフレ派の立場からすれば「微善微悪」どころか「百害あって一利無し」です。
忖度しつつ、百ある害のうち、いくつかを紹介してみます。

a)コア CPIをQQE導入前の-0.5%から、+1.5%(2014年4月)にまで上昇させる実績を出すんじゃない!
・金融政策により消費者物価指数をプラスに引き上げることは困難であると主張してきたのに、面目丸潰れじゃないか!

・デフレの原因を、金融政策以外で色々言ってきたのに…人口減少がデフレの原因と頑張って言ったのに、コアCPIが+1.5%になったら「日本の人口増えたんですね!それでインフレになったんですね!」とか嫌味言われるじゃないか!

・インフレ目標導入国など日本を除く先進国では安定した物価上昇率と名目GDP成長率なのに、日本銀行がある国だけが世界で唯一デフレを10年以上も続け、名目GDP成長率が約20年間で、ほぼ0%という経済パフォーマンスを出していたのに、物価上昇率も名目GDP成長率も上がってしまっては、普通の先進国みたいじゃないか!

b) FRBが物価安定と雇用の最大化を目標としているが、日銀法では、物価安定は理念でしかないと書かれている。QQEが雇用環境を大きく改善させてしまったので、物価目標と雇用の最大化をFRBの目標のように日銀法改正で盛り込めという声が出たら、困るじゃないか!

・QQEが雇用環境を改善させた事実を示すと、それ以前の金融政策がデフレ下で失業率を高め、名目賃金下落を招いていたと疑われたら、どうするんだ!

c) 日銀審議委員の候補になれる反リフレ派の椅子の数が減ったじゃないか!


百ある害のほんの一部をお届けしました。
日本国民の雇用環境を改善する一方で、日銀審議委員人事における反リフレ派の雇用環境は厳しくなってしまったかもしれません。


(*1) 異次元緩和は結局、「微益微害」なのか? https://business.nikkei.com/atcl/seminar/20/00039/030800011/?n_cid=nbponb_twbn


日銀のQQEによる低金利環境が銀行収益を圧迫する、という面を捉えてQQEの悪影響を述べられる方もおられます。
銀行収益は日本の名目GDPの何%でしょうか?
日銀が何十年も前にインフレ目標を導入し、標準的なマクロ経済学に基づく金融政策を行なっていれば、OECDの平均的な経済成長率に近い名目GDP3%成長(実質1%+物価2%)していれば、今頃日本の名目GDPは何兆円だったでしょうか?
1998年の名目GDPは536.5兆円で毎年3%成長すると1027兆円です。
536.5*(1+0.03)^22≒1027

2020年の名目GDPが539兆円なので、約500兆円の差です。銀行収益は気に出来るのに、日本全体の名目GDPを気に出来ない人は…何か深い事情があるのだと思います。


武田氏の連載記事では、消費増税してもQQEをすればデフレ脱却出来る、という主張をしていたかのようにリフレ派は扱われています。しかし、岩田規久男氏を始めとするリフレ派の多くがデフレ脱却前の消費増税に反対し、岩田規久男氏の日銀日記では、QQEは消費増税をしない前提でマネタリーベースの増加額などを試算したことが示されています。
消費増税という緊縮財政は、需要下押しをする、という標準的なマクロ経済学では当たり前の話です。標準的なマクロ経済学をベースにしているリフレ派が、消費増税をしても金融政策だけでデフレ脱却を出来ると主張していた、とするのは、ミス・リードと言えると思いますが、いかがでしょうか?

日本の残念なメディアでは、リフレ派がまるで異端の経済学説を唱えているかのように受け止められがちです。しかし、世界で見れば全く逆です。
ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマンやスティグリッツはリフレーション政策に賛意を示しており、FRBの議長をつとめたバーナンキや、ピケティなど世界の著名で大きな業績を残した経済学者もリフレ派の主張と親和的です。

ところが、日本では笑えない話があります。ケインズ学会で「日本版ケインジアン」というのがあると伝え聞きました。
緊縮財政政策かつ緊縮金融政策を支持する「ケインジアン」のことだそうです。
ケインズが聞いたら、笑ってしまうかもしれません。
QQE導入前の旧日銀やその応援団は、世界標準的な経済学をベースとしておらず、世界標準的な経済学をベースにしたリフレ派が異端扱いされている、というのが実態だと思います。

ラジオ体操第一で、100人中99人間違った振り付け(「そんなの関係ねー」)を全力でやっていて、1人だけが正しいラジオ体操をしていたら、どちらが正しいラジオ体操に見えるでしょうか?
反リフレ派や正しいラジオ体操を知らない人は、99人の振り付けを正しいと思い、正しいラジオ体操を知っている人は1人の人だけが正しいラジオ体操をしていることが分かるはずです。

リフレ派と反リフレ派、正しいラジオ体操をしているのは、どちらでしょうか?


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