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リフレ派に関する連載ウォッチ#11
武田真彦教授の連載12回の第11回は、武田氏が考える「量的緩和の限界」に関する内容です(*1)。
武田氏は“ 2%のインフレ目標は維持されているが、達成の見込みが立たない中、インフレ・ターゲティング(以下、IT)政策の精神は既に失われている”(*1)
と評価されています。
武田氏は、”量的緩和の限界”(*1)、”「IT精神」の喪失“(*1)、など厳しい評価をなさっています。白川方明元日銀総裁時代の「インフレ目途」に戻ってしまっている、と、デフレを維持していた旧日銀時代との類似性を指摘されています。
確かに、2013年4月4日に、2年で物価上昇率2%を達成すると掲げましたが、2021年までの間に一度も2%には届いていません。
しかしながら、2度の消費増税延期、2度の消費増税、小出しの財政政策など、財政政策とそのスタンスが、総需要下押しなどを通じてデフレ脱却を邪魔してしまった面を過小評価されているように思われます。
インターネット上の経済学素人の方がリフレ派を批判する際に、次のようなものがあります。
1)金融政策の限界が分かったから拡張的な財政政策を言うようになった
2)金融政策でデフレ脱却出来ると言っていたのだから、消費増税があっても、デフレ脱却できるはずだ
など、です。
これらには
a)リフレ派はマクロ経済政策の金融政策だけに手段を絞っていない
b)多くのリフレ派が消費増税に反対していた事実
c) QQEは、消費増税しない前提で立案されていた
という点を考慮されていない安易なお考えなのではないでしょうか。
リフレ派は日本では異端の経済学派かのように見られているかもしれませんが、世界の標準的な経済学をベースにしています。
たとえば、書籍「日本経済は復活するか」(*2)の「第IV部 消費税増税ショックと今後の経済対策 消費税増税ショックと今後の経済対策」では、リフレ派の片岡剛士氏・田中秀臣氏が、標準的な経済学のツールを使って、消費増税が経済を下押しし、デフレ脱却を邪魔する危険性について触れています。
2013年8月28日の岩田規久男日銀副総裁(当時)の講演資料にも、“ 「量的・質的金融緩和」の波及経路”という図があり、
「需給ギャップ縮小」→「物価上昇」という波及経路が図示されており、需給ギャップを拡大させる消費増税は、物価目標達成を阻害する要因であることは、経済学素人の僕にも理解できます。
図表出典:
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
岩田規久男元日銀副総裁は“ 二〇一三年六月一〇日の日記に書いたように、二〇一二年九月一五日の古舘伊知郎氏によるインタビュー「総裁選候補者に聞く安倍晋三氏」で、安倍自民党総裁候補(当時)は、古館氏の「デフレ脱却できなければ、消費税は上げないということですね」という何度も念を押す問いに対して、「そういうことです」ときっぱりイエスと答えていたのに、何故こういうことになるのか。”(*3)
とデフレ脱却前の消費増税を想定していなかったことに言及されています。
また、QQEのマネタリーベース増加額は、消費増税をしない前提で試算されたと聞いています。
武田氏がこの連載で限界を主張されているのは「デフレ脱却途上で消費増税を実施された結果」であって、リフレ派の主張通りのマクロ経済政策が行われた訳ではない点に注意が必要だと思います。
インフレを起こす方法としてリフレ派が主張していたことが否定された、と考えるのは早計と言わざるを得ません。
(*1) 異次元緩和の変質と終焉――その後にくるもの https://business.nikkei.com/atcl/seminar/20/00039/030900012/?n_cid=nbponb_twbn
(*2) 日本経済は復活するか
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(*3)日銀日記――五年間のデフレとの闘い
https://amzn.to/2QdguJ6