消費減税すると社会保障が削られる?
自民党の茂木幹事長の発言(日曜討論, NHK, 2022.06.26)が話題です。
茂木幹事長は消費税の減税について
「社会保障の大切な財源でして、これをですね、野党の皆さんが仰るように仰るようにですね、下げるとなりますと、年金財源3割カットしなければなりません。
そして、物価高対策として消費税って言うんですけれど、すぐにはできません。(中略)当面の物価対策としては全く効果が無いと思います。」
ポイント
1.消費税減税と社会保障削減がセット
2.増税時は様々施策を打つが減税時は…
3.社会保障財源に消費税を充てる愚策
与党の公明党の いさ進一議員も消費減税が社会保障の削減につながることなどを指摘し、
「物価高騰などに対する必要な支援策として、どうしても「消費税減税」とは思えません。
その理由をいくつか書いてみました。」
とツイートされています。そのツイートの画像を文字おこししたのが以下です。
消費税法の第一条2項には
「消費税の収入については、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。」
と書かれています。
しかし、消費税減税によって、税収が減った場合に、社会保障費を必ず削減するような条文は見当たりません。
消費減税をした場合に社会保障費を削減する法律が無いのであれば、社会保障費を削減するための法改正する必要があり、時間と政治資源を同様に使うはずです。
また、消費税収の減少分を他の財源で賄えば、社会保障費を削る必要がないと思います。
歳出=歳入=税収+税外収入+借金
です。
税外収入に該当するのは、通貨発行益、政府資産の売却、外為特会の為替換算差額益などが考えられます。
借金は日本政府債務の国債増発が該当します。
また、歳出に含まれる国債償還を止めることで、歳出を抑える、という方法も考えられます。
国民が新型コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響でエネルギー・食料などの価格高騰に苦しんでいる「緊急事態」であれば、消費減税と社会保障の維持(もしくは拡充)は、政治的には選択肢になりえると思います。
東日本大震災で国民が苦しんでいるときに、復興増税を決めてします政治家が沢山いる国では、国民生活や日本経済よりも「財政再建」を優先するのかもしれません。
財務省の資料(*2)によると、
「社会保障・税一体改革により、消費税率引上げによる増収分を含む消費税収(国・地方、消費税率1%分の地方消費税収を除く)は、全て社会保障財源に充てることとされています。しかしながら、社会保障4経費の合計額には足りていません。」
足りない分は、消費税収以外で賄っているので、その歳入を拡充することなどが考えられるはずです。
消費増税をするときは、駆け込み需要とその反動減に対して「万全の対策」を行いました。(消費・GDPの落ち込みを回避することはできず、デフレ脱却を邪魔してしまいました)
国民が困っているときに、減税に汗をかく政治家はいないのでしょうか?
そもそも、再分配の側面がある社会保障の財源に、低所得者に負担がより重くなる逆進性がある消費税を財源にしている先進国は無いそうです。
「税と社会保障の一体改革」が途中から「社会保障と税の一体改革」になりましたが、社会保障を人質に増税を決める政治家・官僚。
社会保障を人質に消費減税を阻む政治家・官僚。
選挙が近づくと「大盤振る舞い」の政策が飛び交うのかと思いきや、残念な政策、発言が散見されます。
(*1) いさ進一議員のツイート
https://twitter.com/isashinichi/status/1540146667382378496?s=20&t=RHsiS5jEo-xBo1hTLjGRjw
(*2) 消費税の使途に関する資料 : 財務省 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d05.htm
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