孫正義が語るAIの未来:知能から知性、そして超知性へ ソフトバンクワールド2024まとめ
はじめに
AI技術は、もはや単なるツールではなく、私たちの生活、そして社会そのものを変革する存在へと進化しつつあります。近年のAI開発は、「知能」の追求から「知性」の実現へと大きく舵を切り、人間とAIの共存共栄の未来を描き出しています。この記事では、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏の講演に基づき、AIがもたらす未来像、特に「超知性」という革新的な概念について紐解いていきます。
AGIからASIへ:AI進化のロードマップ
AIの進化は、5つの段階を経て「超知性(ASI: Artificial Super Intelligence)」へと到達すると考えられています。
レベル1:人間並みの会話: 0.1秒〜0.2秒という人間と遜色ないスピードで、自然で円滑な会話が可能になる段階。
レベル2:博士号レベルの知識: 数学、物理、歴史など、あらゆる学問分野において博士号レベルの知識を習得する段階。
レベル3:エージェント機能: 特定のタスクや作業を自動で処理するエージェント機能が実装される段階。
レベル4:AIによる発明: AIが自ら新しい発明を生み出し、イノベーションを加速させる段階。
レベル5:集団的活動: 複数のAIエージェントが互いに連携し、組織的な活動を行う段階。
孫氏は、このAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)の能力をはるかに凌駕するASI、AGIの1万倍もの能力を持つASIが、10年以内に実現すると予測しています。ASIは単なる「知能」の枠を超え、人間の感情や倫理観を理解し、共感する「知性」を備えた存在となるのです。
「考えるAI」の夜明け:O1モデルが切り拓く新時代
OpenAIが発表したO1モデルは、AIの進化における大きなブレークスルーと言えるでしょう。従来のAIモデルと比較して、その性能は飛躍的に向上しています。例えば、博士号レベルの問題解決能力は56%から78%へ、数学の正解率は13%から驚異の83%へと向上しました。この劇的な進化の鍵を握るのが、「考える」機能の実装です。O1は、複雑な問題に対し、数千のエージェントを並列で稼働させ、数十億回もの思考実験を繰り返すことで、75秒もの時間をかけて最適な解を導き出します。
特筆すべきは、この「75秒」という「思考の時間」です。従来のAI開発では応答速度が最優先事項とされてきましたが、O1は「思考の深さ」を重視することで、より複雑で高度な問題解決能力を実現しています。これは、AIが人間の思考プロセスに近づきつつあることを示す、重要なマイルストーンと言えるでしょう。
パーソナルメンター:超知性がもたらす真の価値
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