絵本『ハクセキレイのよる』|わらべうた『ちっちここへ』
母が外出先で児童書店をみつけたらしく、おみやげに本を一冊買ってきてくれた。
とうごうなりさ『ハクセキレイのよる』福音館書店
ちいさなかがくのともシリーズの、2022年2月号にあたる本だ。
セキレイといえば、わらべうた『ちっちここへ』で歌われている、「ちっち」のことであり、私にとっても馴染み深い。
絵本の感想
とうごうなりさ作の絵本は初めて読んだ。
版画と、セキレイのような白黒の生き物とはとても相性が良く、いろんな仕草やポーズが入念に描かれていて、とても好きになった。
街の描写もとてもよかった。最近 (2010年代以降)のセキレイが、なぜか街中で寝泊まりをするようになった……という事象を描いたいわゆる科学絵本なので、街の夜の描写にもリアリティというのか、臨場感があった。
絵は版画だが、夕焼けのグラデーションだけはアクリル絵の具で描いたそうで、「そうそう、これだよ!都会の夕焼けはこうだよ!」と手を叩いて喜びたくなるような表現が各ページにあった。
付録冊子では、セキレイのことが詳しく紹介されていた。(この本で紹介されているのは〝ハクセキレイ〟だ。)
最近は街中に寝ぐらをつくるが、ムクドリのようにうるさく寝ぐらのまわりを旋回したりはせず、セキレイたちは待ち合わせをしてから「じゃ、行きましょうか」と比較的静かに寝ぐらへ移動するらしい。待ち合わせ場所も毎回決まっているというのが面白い。
なぜ街中に生息地を移しつつあるのか? ウグイスも、最近は町中の生け垣きなどでよく見かける。人目があるほうが猛禽から逃げるのにちょうどいいとか、夜も外灯があるほうが安心するとか、いろんな説はあるが、本当のところはまだ解明されていないそうだ。
かがくのとも・こどものとも の付録が好き!
「かがくのとも」や「こどものとも」には必ずおりこみ付録がついてくる。私も甥っ子も、この付録冊子が好きだ。私は文章を熟読し、甥は次号予告やラインナップを見ては「ふんふんなるほど…」と訳知り顔になるといった様子で、それぞれの楽しみ方をする。
といっても、我が家で「〇〇のとも」シリーズを購読しているわけではなく、いつも図書館でいろいろな過去の号を借りてくるだけだ。したがって、ふろくに紹介されている次号予告の日付もばらばら…。だが甥にとっては関係ないらしく、常に最新情報に触れているようなテンションでお知らせを楽しめている。(単純にチラシというものが大好きなんだろうと思う。)
私は、図書館ではいつも10冊の上限ギリギリまで本を借りるので、軽くて薄い「こどものとも」シリーズには大変お世話になってきた。(あの棚の前でやたらと真剣に本を選んでいる大人がいたら、私と思ってもらって間違いない。)
甥ももう小学生になって、そろそろこの棚は卒業か…と思っていたが、突然、「〝ゆきいちばんのり〟がまた読みたい!!」とその季節のタイトルを上げてくれたりするので、そうすると叔母はまたせっせと棚の前に戻る。
「かがくのとも」シリーズにはまだまだお世話になるのだろうな、と実感している。
セキレイの生態と、わらべうた『ちっちここへ』
セキレイのことに話を戻すと……。
この鳥は、なぜか黙って飛び立つことができず、「チチン!」と必ず鳴いてしまうところが面白い。
前述した図書館の中庭にもハクセキレイがよくいて、お尻をふりふり(ぺちぺち)しながら歩き、人間のランチのおこぼれを探していて大変可愛らしい。
街中のセキレイは人慣れしているほうだが、それでもハトやカラスほど厚かましくはなく、ある程度見晴らしがよくないと人の生活圏には入ってこられない印象だ。コンビニやスーパーの駐車場で目撃情報が多いというのも頷ける。
わらべうた『ちっちここへ』は、わらべ歌全集では和歌山と高知の巻にそれぞれ類歌が載っている。
高知巻では「冬ざれの河原でみかける鳥」とセキレイの説明が書かれていた。
これは、もともとセキレイの分布は関東以北で、雪がつもる季節のみ南下するとのことなので、和歌山・高知で冬の鳥という認識になるのはその為だろうと思う。
私が福島でハクセキレイを見たのは、五月だった。田植え中、ずっと人間の後をついてまわっていた。正しくは、トラクターや田植え機の後をついていけば、掘り起こされた泥のなかから出てきたごちそうに出会えると理解していて、機械のお尻を追いかけていた。
誰よりも田植えの時期を待っていたように見えて、愛らしかったので、よく覚えている。
和歌山・高知 それぞれの歌と遊び方
(※横浜のわらべうた会で主に歌っているのは、高知の歌です)
歌詞はほぼ同じで、歌い出しも似ているが、後半のリズムと音程にはすこし違いがある。
遊び方の違いは以下の通り。
和歌山 “子どもを後ろから抱くように抱え、子どもの右手ひとさし指と左手ひとさし指の先を、ふれあわせながら歌う”
高知 “大人が歌いながら子どもの手の甲をつまむようにしてあやす”
また、わらべうた『ひとつひよどり』の中では、「五つ、いしたたき」というフレーズでセキレイが登場する。これは、セキレイがたえず尾羽でぺちぺちと地面を叩くことからきた呼び名だと思われる。
わらべうたを見ていくと、動物の呼び名が各地によってずいぶん違うことを知るが、生態を知っていると名前の由来が分かった際にさらに理解が深まる。とても嬉しい。
セキレイの種類いろいろと見分け方
セキレイは種類が多い。よく、「背中が黒いか白いか」と言われるが、実はそれだけではセキレイの種類は見分けられない。
まずはハクセキレイ。私たちが街中でもっとも見かける種だ。
目にすっと一本黒い筋がとおっている。
個体差があり、灰色や黒の部分が多い個体もいるため、背中の色での判別は難しい。だいたいこの目の一本筋模様で見分ける。
セグロセキレイ。生活場所はより水辺に寄っていて、あまり街には適応しない。ハクセキレイに押されて勢力を狭めている。
背中が黒い個体はハクセキレイにもよくいるため、顔が黒いかどうかで見分けたほうが分かりやすい。
ホオジロハクセキレイ。海岸に棲む。ややこしいが、目の一本筋模様がなく、顔が真っ白に近いので、そこでハクセキレイとの見分けがつく。胸元の黒い部分がチャームポイント、黒いよだれかけのように見えて可愛い。日本海沿岸部に多く住み、佐渡にもいるらしい。
キセキレイ。気が強い。主に渓流沿いにすみ、セグロやハクセキレイとは棲み分けている。冬季には市街地の水辺までおりてくることもある。その際、雄の縄張り意識が強く、縄張りを争ってハクセキレイを追いかけまわす。
(写真はいずれもウィキペディアコモンズのものを使用。)
その他にもまだまだ種類があるので、ご興味のある方は調べてみてください……!
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