1月18日
「ママ! エドが心肺停止だって!」
こたつでお菓子を食べながらぼんやりとテレビを観ていたら階段からバタバタという音とともにまいちゃんの声が聞こえ一瞬なにがなんだかわからなくなり、早く病院に。という娘の落ち着いた声とは裏腹にわたしは情けないことに嗚咽を抱えなにも持たないで裸足のまま車に乗った。
涙が止まらず過呼吸になったわたしは急いでソラナックスを噛み砕き気休めになんとか正気を取り戻し、勇敢なまいちゃんの横顔を見る。彼女はいつも冷静でいつもクールでわたしに病院で大声で泣かないでよと叱った。わたしのほうが娘のようだ。
病院に着くと誰もいなくてそれでも娘は勝手に扉をあけエドのことを探した。先生が心臓マッサージをしていてその横で娘の鳴き声を初めて聞いた。
「エドさん、エドさん、」
泣いていた。娘の涙をあまり見たことがなくけれどやっぱりわたしのほうが泣きすぎてエドーと何度も叫んだ。
心臓が止まった。先生の顔を見る。そして首を横に振る。
「頑張ったんだけどね。誠にすみません」
それでもまだ心臓マッサージをしていてくれたから手を止めてもういいです。ありがとうございます。先生の手は真っ赤だった。
エドの急変は夕方から始まったらしい。吐血からの意識不明。肺がんと告知されていたけれど心不全も患っていたということだった。
12年と10ヶ月。
エドは天国へ旅立った。
「こんなに辛いならもう嫌だ」
わたしとまいちゃんは口を揃えてそう口にしたけれど命の大切さをしみじみ痛感したとおもう。
エドほんとうにありがとう。
まいちゃんのそばにいつもいてくれてありがとう。
1月17日 午後11時。エド永眠。
たくさんたくさん思い出をありがとう。