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偶然? 必然?
会いたい。意味は特にないけれどとにかく会いたかった。なんでもいいからどんな形でもいいから会いたくて仕方がなかった。
母親のところに行った帰り道。母親は痴呆症が進んでしまいわたしのことをヘルパーさんだとおもっている口でけれどもう過去のこと(母はわたしを捨てた)などどうでも良く母親は生きているけれど昔の母親はとっくに死んでいるから素直に会いに行けるようになった。そんな穏やかですっぴんの日だった。
夕方いつもだけれどぼんやりしながら運転をしていた。眠い。とにかくいつも睡眠薬のせいで眠たいので目を擦りなんとなく運転をしていた。
え? え? 待って嘘でしょ?
会いたかったひとの車がわたしの前にいるではないか。ナンバーも憶えていたけれど彼の車は汚いので瞬時にわかったのだ。
わたしは薄暗くなり始めた道でパッシングをし彼にわたしの存在を知らせたかった。けれど気がつかない。何度も何度もパッシングをした。でもダメだった。
諦めかけていたとき、信号がちょうど赤になった。わたしは車から降りて前にいる彼の車まで行き窓ガラスをコンコンと叩いた。
「ええ! なんだよ! おい」
「いいから。ちょっとそこで停まって!」
急いで車戻り彼の車のあとを追った。
オートバックスがちょうどいいタイミング(え? なぜそこにあるの? みたいな)でありそこに彼は停まった。
しかし、わたしは冷静だった。彼も案外冷静だった。
「びっくりしたね」
お互いの声が重なる。
「まじでびっくりした」
またお互いの声が重なる。そんなことよりねーとケラケラと笑った。
ひさしぶりだったけど、やっぱりこのひとかっこいいいいなと夕焼けのバックで余計にそう見えた。キャとつい声をあげそうになる。かっこよすぎだ。なんでだろう? わたしの目がおかしくなったのかもなんておもったりもしたけれどやっぱりかっこよかった。
なんであなた歳取らないの? もうまだ大好きなんです。もう1度抱きしめてください。
「いまから時間ある?」
「ない」
即答だった。え? 即答じゃんといいつつ笑う。俺金持ってないよ。いいよわたし持ってるよとまた笑顔でそれこそ即答だった。
さて、これ以上は書けない。
だって奥さんが読むから。