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ダウン症を持つ子どもの親になって初めて知った3つのコト

吉岡さんの書き込みにタイトルを合わせてみました。「ダウン症児」と書かなかったのは2つの理由があります。1つ目は、すでに子どもが20歳になっていることで、2つ目は、ダウン症児・ダウン症者という言い方にちょっとした違和感があるからです。2つ目については後で少しだけ説明しますね。

私は言語聴覚士ですが、2番目の子どもである息子がダウン症を持って生まれてくるまでは、仕事上でダウン症を持つ人たちと接することはありませんでした。知識としては、せいぜい、生まれてくる子どもの0.1%ぐらいがダウン症を持って生まれてくること、人種を超えて顔つきが似ていること、知的障害を持つこと、心臓疾患を持つことが多いこと、ぐらいでした。

息子が生まれてすぐに病院から電話があって、「小児科の主治医が話をしたいと言っているので、病院に来てほしい」と言われた時も、脳性麻痺や奇形については考えていましたがダウン症については頭の中にありませんでした。
主治医から夫婦そろって、「最終的には遺伝子検査をしないと確定しないが、おそらくダウン症だと思う」と伝えられた時にはいろんな思いがぐるぐると頭の中を巡りましたが、あまり実感は持てていませんでした。
ただ、言語聴覚士としては、「ちゃんと調べてリハビリしなくちゃ」と思った記憶があります。

※この時の思いから、いろんな方の尽力のおかげで「ダウン症の子どもがいきいきと育つことばとコミュニケーション 家族と専門家のための実践ガイドブック」(リビー・クミン著)の翻訳に関われたことは言語聴覚士としてとても得難い経験でした。

息子は大きな心臓疾患はなかったものの、小さな奇形や身体的な不具合があって、小さな手術を含めて20回ぐらいの入院をしましたが、その後はすくすくと育って昨年20歳になりました。

※ちなみに1歳2ヶ月で保育所入園、1年保育の幼稚園を経て、小学校から中学校まで普通学級で過ごし、地元の定時制高校を卒業した後で親元を離れ、2年生の専門学校を卒業して、現在、保育所でのアルバイトをしながら1人暮らしをしています。ここまでも、現時点でもおもしろいエピソードがいっぱいなのですが、またいつか書かせてもらおうと思います。
参考)
0歳から6歳までの成長の記録
https://www.youtube.com/watch?v=l_innuODXVw&t=1747s
現在の生活について本人が話している動画
https://www.youtube.com/watch?v=Es5Izn_LpJc&t=69s


前置きが長くなりました。では、本編に入ります。

ダウン症を持つ子どもの親になって初めて知ったコト"その1"
「ダウン症を持つ人たちの顔つきは似てるけど、親にも似てるし、自分だけの個性もある」

考えてみれば当たり前なのですが、息子が産まれるまではダウン症を持つ人たちの顔つきはほとんど見分けがつかないほど似ているんだと思っていました。親から見ても「うちの息子そっくり」と感じるような顔つきのダウン症を持つ人もいますが、並べてみれば共通点よりも親に似ている部分を探すのは難しいことではありません。もちろん、その人独自の個性もあります。
これは性格や能力についても言えます。「ダウン症の人はみんな〇〇だ」ということばは全くの嘘だと言ってもいいと思います。嘘でないのであれば、そう言っている人はダウン症を持つ人のことを大して知らないんだと思います。

この意味で、ぼくはダウン症者、ダウン症児ということばを使いたくないと考えています。理由は、「ダウン症を持つ」ということは、その子ども、その人の特徴の1つでしかないからです。例えば、ある人の特徴が、(背が高い)+(運動ができる)+(勉強はそれほどでもない)+(うたが上手)+(手先が不器用)、みたいな特徴を持つ人がいたときに、それぞれの要素の1つとして(ダウン症を持つ)ということがあるっていう感じです。

ダウン症を持つ子どもの親になって初めて知ったコト"その2"
「発達年齢はその人の持っている能力のわずかな部分の反映でしかない」

息子は高校1年生の時の発達検査で、発達年齢は5歳6ヶ月と判定されました。しかし、彼はその段階で定時制高校に進学し、ホテル清掃のアルバイトをしながら、夜間に自転車で高校に通っていました。
5歳6ヶ月の子どもがこのような生活を送ることは難しいと思います。もし、発達年齢がその人の能力の全てを示すものであれば、彼にはこんな生活はできなかったはずです。

代表的な発達検査でもあるWISC(ウェクスラー式知能検査)では、文字の能力については評価をしませんし、また実際の場面に接した時の状況判断力についても推定するだけでしかありません。しかし、発達検査では知能指数(IQ)や発達年齢、精神年齢など(検査によって内容や呼び方が異なります)の数字で示されます。特に発達年齢や精神年齢ということばは保護者にとっても園や学校の先生にとっても、その年齢に合わせて対応しなくちゃいけないように感じてしまうことばです。

ダウン症を持つ子どもの親になって初めて知ったコト"その3"
「好きなことの能力はゆっくりでも伸びていって、結果的にすごいことになることもある」

ダウン症などによる知的障害があると、ことばの発達だけではなく、手先が不器用だったり、運動能力も低かったりすることも多いです。でも、やり続けることで「これはすごい」と親として感じられるぐらい能力が伸びることもあります。

息子は幼児の頃からダンスなどで人前に立つことが大好きでした。また、小学校3年生頃から文字を読むことが好きになりました。
ダンスは小学校2年生と3年生でエイサーを、小学校4年生から高校3年生までは地元の子ども劇団を、高校2年生~3年生はスクールでダンスを習いました。結果的にダンスを本格的にやっている人たちからも一定の評価をもらうようになり、今も続けています。
読むことについては、初めは知っているひらがなから想像して適当に読んでいましたが、少しでもわかる文字があると読むようになり、小学校5年生の時には、間違いが多いもののカラオケで歌詞を読んだり、テレビの字幕を読むようになりました。今はスマホで比較的長いメッセージを送ってきますが、打ち間違いがあるものの、内容についてはほぼ理解できる程度には読み書きができるようになりました。今は、保育士になりたいとノートをいっぱい買って教科書を書き写していますので、字を書くのがとても上手になりました。彼にとっては、保育士資格を取るのはかなり難しいと思いますが、資格を取れなくてもゲットできることはあるなぁ、と思っています。

以上、ダウン症を持つ息子についての親バカ話でした

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