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獣医病理医も生きている動物が好き

病理、イコール解剖というイメージがあるせいか、病理をやっていると動物の解剖が好きと思われることがあります。

私の場合は確かに嫌いではないけど、解剖が好きというより必要があるからやっています。

動物の病理解剖は、死因を調べたり病気を見つけたり、その子のためにやっているのはもちろんですが、残された動物たちのためでもあるし、飼い主や獣医師のためでもあります。

私も生きている動物が好きだから病理解剖をやっているし、公衆衛生の視点でみたら人や社会のためでもあるのです。

病理解剖というといきなりメスを手にして解剖すると思われがちですが、そうではなく可能な限り事前にその動物がどのように飼育されていて、どんな治療を受けて、どのような経緯で亡くなったのかを把握するようにしています。

解剖というと冷酷な印象を持たれるかもしれませんが、亡くなった理由を知って悲しくなることももちろんあります。それでも客観的な判断が必要だから、解剖のときはそういった感情を極力抑えるようにしています。

必要がなければ解剖しなくてもいいけど、動物の死からはまだまだ学ぶことがたくさんあります。生きている動物を見ているだけじゃ分からないことが、動物の死にはあるのです。前の職場では病理解剖が終わったあと、ひっそりとお線香をあげて、亡くなった動物に感謝の気持ちを伝えていました。

『獣医病理学者が語る動物のからだと病気』は、
獣医師=動物病院のお医者さんだけではない、色々な獣医師がいるということ、その中でも知られざる動物の病理医について、一般の方にも知ってもらいたくて執筆いたしました。動物の体や病気のことを通して、あらためて動物との向き合い方や命の大切さを考えるきっかけになれば幸甚です。

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