増大していく国防費に関して

 リトアニアで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化を踏まえ、加盟国の国防費を国内総生産(GDP)の「最低2%」とすることを「永続的な約束」として申し合わせたという。これに伴って日本も、2027年度に防衛費をGDPの2%に引き上げる。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化していることを踏まえれば、仕方のないことのようにも思えるが、こういった緊張関係の中では、国防費を増大させていくしかないのだろうか。国防費を増やさず、現状維持を続けることは、自滅行為なのだろうか。

 ロシアがウクライナに侵攻を開始した際には、核保有の話も出てきた。日本も核兵器を持って抑止力としないといけない、といった話だったと思う。しかしロシアのウクライナ侵攻を含め、国際情勢が緊張するたびに国防費を上げるというのでは、一向に軍縮は進んでいかないようにも思えてくる。「わざわざ緊張状態にある時に軍縮の話をする必要はない」「他の国が攻められている状況で軍備を縮小するなんて自殺行為だ」という人もいる。確かにそうだと思う。緊張状態にある中、現状維持ならともかく、軍縮を進めるというのは、自殺行為にも思える。ただ、「良い契機」を待つことが最善策なのかについては疑問だ。それはいつ来るのか。

 これまでの状況を考えると、世界が大きな戦争や紛争を起こすことなく、順調にやってきたということは少ないように思う。軍縮を進めるためには、世界中がある程度平和な状態が続く必要があるのだとすれば、いつまでもその「契機」はやってこないような気もする。ウクライナ侵攻の惨状は、メディアで大きく取り上げられた。センセーショナルな映像によって戦争の悲惨さが伝えられた。現代の状況だとは思えないような映像を見る機会になった。しかし今の日本では、そういった報道は少なくなっている。侵攻が始まったばかりの頃に比べると、ウクライナの状況を伝えるものは少なくなっている。だんだんと日本人の中での印象も薄れている。しかし、防衛費は増額する。

 防衛費の増額は、単なる戦争や戦争報道による心理的な影響によってのみ要求されるものでもないような気がする。国防費を増大する根拠として「侵攻が起こっている現状」を挙げ、「自分の国を守るためには仕方がないのだ」と主張する。国防費の増大に反対する人に対しては、「自殺行為だ」「国のことを大切にしないのか」「自分の国が攻められて、家族が死んでしまってもいいのか」と感情的に批判する。しかし実際は、国防費の増大に感情的な側面はあまり関係がないのではないか。「この国には○○が足りないから、国防費を増大しなくてはいけない」といった、実際的な軍備状況を踏まえたものだとも思えない。他国を「威嚇する」ために増大しているように思えるのだ。増大そのものが抑止になると思い、増大それ自体が目的化しているように思う。国防費を増大するために増大する。ただそれだけ。武器の輸出にしても、輸出する必要のないものまで輸出する。それも輸出するために輸出する。輸出したいから輸出する。そうなってはいないか。

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