デジタルビデオと行くシルクロード『35』 トルファン脱出!

トルファン脱出!

さあ 、飛行機が来るウルムチに向かおう。バスも最後だ。1時半発のバスをねらってターミナルへいく。
バスは1時間に1本出、かつ車両の種類によって運賃が変わる。快適な車種は高い。でも、時刻表からは、何時の便がデラックス車なのか分からない。


蘇公塔。


バスは 、行き先別の場所に尻を向けて止っていて、一見、グレイハウンドのターミナルに似ている。
でも、ウルムチいきの場所には、「トルファンホテルにようこそ」と書いたボロバスが2台止まっているだけだ。幹線だからもっといいバスであるはずだとの期待も重なって、「これはホテルの送迎バスだ」と本物が来るのを待っている。

ところが、入り口にいる男は「ウルムチ」と叫んでいるように聞こえる。
「ウルムチか?」と聞くと「そうだ」という。この勘違いで20分はロスったので、ほぼ満席。一番後ろにすわる。とにかく、後ろはよく揺れるのだが。


右に見えるのはぶどうを乾燥させるための小屋。風通しがいいようになっている。



それにしても 、このバス、今までに乗ったうちでは一番古く、中ドアで、左側3列、右側2列の最初から補助席分をみこんだ座席配置だ。言ってみれば、日本の廃車置き場に30年間放置されていたのを引っ張り出して動かしている感じ。この古さで酷使に耐えて走っているのは、日々のメンテナンスと、もともと単純な構造のおかげであろう。砂漠を走る車は絶対にCPUなんかで制御してはいけない。石(IC)がとんだらスペアが無い!

さて 、道はいいだろう、という密かな期待もむなしく、最悪。そして、ちょっとした天山越えにかかると、スピードはあがらない。恐いのが右の山からの落石。
「落ちる前の石」と「落ちた後の石」はあるが「落ちつつある石」はない。だが、初めと終わりの状態の間の状態が存在することは、きわめて論理的である。
ただ、その中間状態がいま実現しないことを祈るしかない。

ところどころで道路の改修作業をやっているが、このほこりと暑さでは気のとおくなるような作業だ。


市場の入り口の門。


落石防止ネットなんてどこにもないし、そもそも焼け石に水かもしれない。わが建設省なら、絶対にとおさないだろう。キップと同時に保険に入らされるのがうなづける。
そうして、一気にジュンガルの平らに出る。舗装道路の穴は一向に減らないが、運転手は構わずに走るので、座席の上で飛び跳ねる。とてもトランプができるような状況ではない。



トルファン発ウルムチ行のバス。なんと女性の車掌が乗っている。暑いので乗降ドアを開けて走る。座席は左が二人掛け、右は三人掛け。飛行機じゃないぞ!今は高速道路ができて、床下に荷物を収納する文明国タイプのバスが走っているはず。


天山の北になると 、雨が降るらしく、一気に牧草地の緑が広がる。そして、さっきまでがうそのように気温が下がって、窓を閉めることになる。
最後にダメ押しの峠をこえて、近代的なウルムチに入る。町の電気屋にソニーの大型TVが置いてある。ああ、文明の地に戻った。

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