デジタルビデオと行くシルクロード『11』 ロバ車と遊ぶ

ロバ車と遊ぶ

ホータンのバスターミナル の建物はすごく立派だ。サンフランシスコのグレイハウンドのターミナルや、名古屋の名鉄バスセンターも顔負けになるくらい。新宿の高速バスターミナルなんてただの「バス停」に思えてくる。さて、明日のカシュガル行きの下調べをしておかねば。
でも、どこにダイヤがあるのだろう? 掲示されているのは、料金表ばかりだ。これにしても、中国語とウイグル語だけで、英語はない。これじゃ、漢字の読めない人は、絶望的だ。


なんとも立派なバスターミナル。中央政府からの予算で作られた物は周辺から突出しています。


「問処」 というような言葉が書いた窓口があるので、たぶんインフォメーションだろう、と思い「カシュガル行きのバスはいつ出るであるか」の意味を書いて出す。
「今夜の7時半だ」という。
「それじゃ、明日の朝は?」と聞くと、
「8時頃カシュガルに着く」と答えてくる。
「ちゃうんだって。今晩乗るんじゃない。明日の朝出るバスの発車時刻だよん」と書く。
「ああ、それなら9時半だ」と答え。
たかだかこれだけなのに、なんと疲れることだ。
筆談と言っても「几天」が「何時」、「去」が「行き」なのだから、素人おじさんには決して楽ではない。
も少しは中国語の予習をしてくるべきだったとは思うが、いざとならなければなかなか力が入らないのが悲しいかな人間の性(さが)とういものだ。

これで、 最大のタスクは完了 。 ホテルへむけてロバ車に乗ってみようか、と見回すと、こういう時に限ってうるさいロバ車がなかなかこない。
やっときた子供の車に乗って、地図を見せてホテルにむけ走らせる。
思った方向と逆だが、まあいいか。しかし、ムチを使ってのロバの操縦は大変そうで、この子はまだ初心者だ。操縦に失敗して、下車して引っ張っていくこともある。


ホータンの街角の露天でシシカバブーを売るおばさん。


古い町の中の賑やかなバザールのがたがた道を通り、人だかりで行き止まりがあって引き返し、さんざん走り回って、何か変だ。どうやらこの子は目的地が分かっていないようだ。
こまったな、と止ったときに別の少年の車が来て、「乗り換えろ」という。
わたしは、小銭をはらって少年の車にのる。一生懸命走らせるが、彼もかならずしも分かっているようには見えない。もう1台がぴったり後をつけてきていて、さかんに「乗り換えろ!」という。これ以上、乗り換えて無駄かねを払うのはたまらない。

わたしは、「おまえ、ちゃんと地図を見ろ!」と指示をする。
困った少年は地図を片手に大人に道を聞くが、ラチがあかない。
頭に来た私は、もういい、と降りて歩くことにする。
少年達は、「乗れ、乗れ」としつこくついてくる。誰が乗ってやるものか、とアカンベーをしながら、炎天下を地図と磁石をたよりにひたすら市心にむかって歩く。彼らとのやり取りは、もうゲーム感覚だ。
どうやら、彼らは私のような客は目的地に運ぶことではなく、とにかく車を走らせることで金をえているらしい。だから、1人の客を仲間内で「回す」のだ。
それに、ウイークデーの昼間からロバを操っていると言うことは、学校に行っていない、ということだ。だから、地図の漢字が読めないのだ。これで納得。

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